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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第17章 飛躍の龍意

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654.魔神・多腕円輪

 夕食後。


「今日も美味しかったよ、サトミ」


 コセさんは、たまに私の料理を褒めてくれる。


「ありがとう、コセさん」

「洗い物、手伝うよ」

「あら、珍しいわね~♪」


 無言で、二人でのお皿洗い……うん、心地良いわね♡


「……私の家ね、小さな和菓子屋なの」

「サトミ?」


 急な話題に、戸惑っているのが解る。


「お店は父がやってて、母も私が産まれる前からお店で働いてたみたい」


 私も、小さい頃から手伝っていた。最後の仕上げだけは、十四になるまで任せて貰えなかったけれど。


「私が小さいときに、母が癌になってね。イラついた時の急に冷たくなる感じが、とっても恐かったの」


 今なら、母が病気に恐怖していたからだって、理解はできるんだけれど。


「時々思うの。私が嫌いだった母の情けない部分を、自分はいつの間にか引き継いでしまったんじゃないかって」


 アヤちゃんの首を絞めたりとか、リンピョンちゃんに冷たい言葉を向けたりとか……この隙を見せないしゃべり方とか。


「母親になったら、自分がされたみたいに自分の子供の首を絞めたりするんじゃないかって」

「なんで、その話をする気になったんだ?」


 カチャカチャという食器を置く音が、心地良くも冷たくも感じる。


「今日戻ってきたときのコセさん見たら、ちょっと思い出しちゃって」


 あの、暗く冷たい……無価値な物を見るような感じ。


「ごめん。顔には出さないようにしてたつもりだったんだけれど」

「これでも私達、夫婦だもの。夫の気持ちくらい察せられなきゃ」

「……メグミの言うとおり、サトミは良い女だな」

「あら、今頃気付いたのかしら? いつもあんなにご奉仕しているのに♡」


 リンピョンちゃんと一緒に、それはもう丹念に♡


「根拠の無いこと、言って良い?」

「ええ、良いわよ」


 わざわざ、根拠が無いなんて言うなんてね。



「サトミは、良い母親になれるよ。きっと」



「――…………」

「サトミ?」


 お皿を洗う手が、止まっていた。


「……良い奥さんじゃなくて?」

「妻としても、母としても、女としてもだよ」


 ちょっと……泣きそうなんだけれど。


「コセさん……今日から、避妊しなくても良いかしら?」

「それはまだダメ」

「もう、コセさんのいけずー♪」


 ダンジョン・ザ・チョイスを終わらせるまでは、当然よね。


「私との子供、何人欲しい?」

「少なくとも二人は欲しいな」

「私は……四人は欲しいかしら♡」


 良い母親になれるのかなって、何年もずっと不安に思ってたのに……たった一言で救われちゃったな。根拠無いって前置きされてもいたのに。


 私、この人を好きになれるような女で良かった♡♪


 一緒にお皿を洗っているこの時間が、とっても幸せ。



             ★



 四十五ステージの攻略開始の次の日の早朝。魔法使いは全員、安全エリアにあった装置で“○重魔法”のスキルを一段階強化。


 その後、私達はボス部屋前へと集まっていた。


「第四十五ステージのボスは、魔神・多腕円輪。弱点属性は毒。有効武器は剣。危険攻撃は、ランダムで様々な武術を使用して投げてくる巨大チャクラム」


 武術はランダムなのね。


「ステージギミックは、チャクラムが飛んでくる事。追尾してくるうえ、時間経過で数が増えるからね」


 メルシュちゃんの解説が終わる。


「じゃあ、私達から行くわね~♪」


 今日は珍しく、朝から身体を動かしたくて仕方ないの。


 扉が締まり、奥で橙茶色の光のラインが灯っていく。


「お願いがあるんだけれど、今回は私一人に任せてくれる?」

「四十五ステージのボスだぞ? 五の倍数は強い魔神が多いのは分かってるだろう」


 一番付き合いの長いメグミちゃんが、心配してくれている。


「壁を越えたいの。今なら、いける気がするから」

「……気を付けろよ」


 やっぱりメグミちゃんも、私と似たような壁を感じていたのね。


「サトミぃ、ファイトでぇす!」

「お気を付けて」

「ほ、本当に一人で挑むんですか?」

「サトミ様……」


 あんまり、皆に心配かけないようにしましょうか。


『……ォォ』


 六つの腕を持つ人型巨人が動き出す。


「まずは挨拶――“颶風魔法”、ストームダウンバースト!!」


 嵐の重圧を、頭上から叩き付ける!


「“魔法玉”――“颶風魔法”、ストームダウンブラスト」


 重圧で動きを止めている間に、神代と嵐の力を込めたシャボン玉を発射――お腹で炸裂して貰う。


「“万変の霧”」


 ステージギミックのチャクラムが飛んできたから、紫の霧で打ち払い、身を守る。


 盾杖、“紺碧の空は静寂を願いて”に刻めている文字は九のまま。


「“積乱雲”――“颶風怪の大入道”」


 風、水、雷属性攻撃を強化する雲を生み出すと同時に、総MPの四分の一を使用して大入道を呼び出し――槍を振るってきた魔神にぶつける。


「まだちょっと苦手なんだけれど――“座標指定”」


 《エクリプス》から手に入れたスキルを使用。


「“六重詠唱”――“颶風魔法”、ストームダウンブラスト!!」


 大入道への被弾を避ける角度から、削り穿つ颶風の嵐弾を直撃させる。


 “座標指定”。魔法陣の出現場所を、かなり自由に決められるスキル。


「ようやく罅が……ちょっと硬いわね」


 弱点属性じゃないとはいえ、特化属性による攻撃で畳み掛けているのに。


 ひょっとして、魔法耐性が高い相手なのかしら。


「だったら――“紺碧の波音”」


 左腕の碧の盾を杖で叩き、魔神に波音を浴びせて動きを止める。


「――“暴虐の風”!!」


 体当たりする勢いで懐に飛び込んでからの、全周囲攻撃をお見舞い!!


「やったわ!」


 神代の力を込めたのもあって、大きな罅が入った!


 やっぱり、魔法耐性が高かったから――――身体の色んな所から、痛みが急に込み上げてきた。


 複数カ所から強い熱が上がって、そこから体温が抜けていく感じ……血が出てるんだ、これ。


 そうだ。“暴虐の風”で“万変の霧”ごと吹き飛ばしてしまったから、襲ってくるチャクラムに対して無防備になってしまったのね。


 痛み、首からも深く。


 身体から、青白い光が――これが、死ぬって事なんだ。


 ――――なぁんだ。あの女、こんな物に怯えてたの。



「“生命魔法”――リバースッ!!」



 リンピョンちゃんの泣きそうな声。


「――死なないで、サトミぃぃ!!」


 そう言えば私、母が亡くなった時……全然泣かなかったな。


 むしろ、開放されたって気分――だったわね!!


「――“暴虐の風”!!」


 十二文字分の神代の力を込めた真空烈風を叩き込み、再度迫るチャクラム群ごと――魔神・多腕円輪を吹き飛ばす。


『ガァァッ!!』

「静かにしなさい、魔神ちゃん。私、無駄にうるさいのは嫌いなの」


 “紺碧の空は静寂を願いて”改め――“紺碧の空は真秀(まほら)な静寂を求めて”を掲げる。


挿絵(By みてみん)


 この杖は、私がありたい母という偶像そのもの。


『“万雷武術”、サンダラスローリング!! “紅蓮武術”、クリムゾンローリング!!』


「“神代の障壁”」


 ようやく飛ばしてきた巨大チャクラムを、余裕で防ぎきる。


「“分離”」


 水玉の入った盾を四つに分離、“思念操作”で操って無数のチャクラムを破壊させ続ける。


 これが、十二文字刻んだ者が見る世界。世界の真理を垣間見ているような、ちょっとした全能感。


「“神代の颶風衝破”」


 迫る槍を全周囲への風で砕き、チャクラムを全て破壊した直後――“分離”させていた盾で六本の腕を砕く。


『ォ……ガァ』



「頭が高いわね――――“神代の真秀颶風”」



 盾を“連結”させ、杖の先端より――荒れ狂う風を封じた球体を発射――無様に膝を付く魔神の上半身を……圧壊消破させた。


「……これ、キッツいわねkv3h」


 でも、私の在り方は大きく好転した。


「ありがとう、みんな……ありがとう、コセさん」



○おめでとうございます。魔神・多腕円輪の討伐に成功しました。


○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。


★多腕のチャクラム ★単一属性武術のサブ職業

★多腕の長槍 ★アームズファイターのスキルカード×2


○これより、第四十六ステージの油田島に転移します。



おまけ

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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