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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第17章 飛躍の龍意

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652.炎の宮殿


○右:炎の宮殿

 左:空中庭園



「選択肢か。切り上げるには早いけれど、どう思う、メルシュ?」

「例の視線の事を考えると、ここで待ち伏せされる可能性があるからね。安全エリア手前までなら引き返せるし。左右どっちを進んでも、夕方までには次の安全エリアにたどり着けると思うよ」


 危険だから、少し無理する事になっても進んだ方が良いと。


「俺は進む方向で考えているけれど、皆は問題無いか?」


 パーティーリーダーに確認を取るも、反対意見は特にない。


「こっからはパーティー事の攻略だよ。情報はNPC組に伝え済みだから」


 メルシュの奴、いつの間に。


「コセさん、私達はどちらに進みます♡?」


 セリーヌに尋ねられる。


 俺にだけ猫撫で声だから、ギャップに困る……可愛いけれど。


 愛嬌のあるこっちの方が、素のセリーヌに近いのは知ってるんだけれど。


「今回は左かな」

「空中庭園ですか」

「どんな感じなのか気になってさ」


 炎の宮殿は熱そうだし、俺のパーティーでそれなりの水属性攻撃手段があるのは、メルシュだけだし。


「では、先頭は私が努めましょう!」

「どうしたんだ、ナターシャ?」


 随分張り切ってるな。


「最近、全然活躍の場が無かったので!」


 ナターシャは頑張り屋だからなぁ……。



●●●



「見えて来ましたね、アレが炎の宮殿で間違いありませんか?」


 イチカがエルザに尋ねる。


「ああ、アレのはずだ」


 四角いピラミッドにも似た形状の石造り? の宮殿のあちこちから炎が立ち昇っていた。


「見てるだけで熱くなってきそう……どうしたの、レンちゃん? さっきから静かにして」


 フミノに指摘されちまう。


「別に、少し考え事してただけだ。ていうか、最近ボーッとしがちなのはお前の方だろうが」


 コイツが物思いに耽っている姿を、“忍者屋敷”でも何度か目撃したし。


 タイミングからして、私が参加出来なかった例の突発クエストの時に、なんかあったな。


「……意外と見てるのね、周りのこと。偉い偉い」


 急に頭を撫でられた!?


「子供扱いすんな! 私の方が年上だぞ!」

「うんうん♪ レンちゃんは今日も可愛い!」


 なんか、いつもより押しが強い気が……。


「出たぞ。“ファイヤーエレメント”と“フレイムスライム”だ」


 燃える炎の上半身と、赤い発火スライム。


「稀に“ファイヤーアストラル”が出現する事もある」

「ああ、特定の属性しか効かないアイツか」


 花畑で遭遇したとき、対処法が分からなくて逃げざるおえなかった奴。


 今なら、サブ職業付け替えれば簡単に対処できると判ってるが。


「そんじゃ――」


 “邪悪に全てをぶっ壊せ”に六文字刻んでから青白いオーラを纏わせ、ぶった切りながら外へと発散させるイメージで――内側から吹っ飛ばす!!


「やっぱり、小細工は性に合わねー!」


 とっとと片付けてやるぜ!!



●●●



 炎の宮殿の門を潜り、内部へと足を踏み入れる。


「あ、暑い……」


 リエリアが、人一倍嫌そうに汗をかいていた。


「“火耐性のマント”を着ていてもキツそう?」

「すみません、エレジーさん。人魚は暑いのが苦手なうえ、私は寒冷地育ちなので余計に」


 人魚の国は、大海の熱帯地域に存在すると聞いたことがあったのだけれど。


 ホーン・マーメイドのリエリア。ホーンの父親と人魚の母との間に生まれた、真の意味でのハーフ。


 異種族同士の性行為は、デルタによって禁止されているにもかかわらず。


 彼女が色々訳ありの身だという事は、想像に容易い。


「外も酷かったが、内部の熱気は段違いだな。これは急いだ方が良さそうだ」

「そ、そうね。暑さは料理で慣れてるつもりだったけれど……熱中症になっちゃいそう」

「お労しや、サトミ様。私のスキルで冷やしますので! “氷獄魔法”――コキュートス!!」


 効果範囲の火が消え、寒さすら感じるほどに冷えた。


「……なんか、風が強くなってません?」


 リエリアの言うとおり、さっきまで無かった風の流れを感じる。


「風の音、聞こえてきまぁした」

「宮殿の一角だけが急激に冷えたから、気温が一定になろうと気流が発生し出したのかもな」

「どういうこと、メグミちゃん?」

「竜巻や台風、海流が発生するのと同じ仕組みだ。寒暖差は激しい流れを生み出すんだよ。それより、今のうちにさっさと進もう。リンピョンはMPを温存。サトミとリエリアと私で、敵を倒しつつ進む。エレジーとクリスはサポートに回ってくれ」


 前々から思ってはいましたが――このパーティー、実質メグミさんがパーティーリーダーだ!



●●●



「“氾濫魔法”、リバーバイパー」


 ドワーフメイドのエリーシャの魔法により、炎の宮殿内部に巣くう火のモンスターを纏めて葬る。


「炎は見飽きましたね、マスター」


 テイマーのサキのうんざり顔。


「まあね」


 私とサキは二の島の攻略を選んだから、炎とその熱気にはもうウンザリだ。


「ガウガウ!」

「まだ動いているの居るよ!」


 バニラとモモカが教えてくれる。


「“フレイムリビングアーマー”か」


 石で出来た、古代の遺跡を思わせるような身体から、炎を噴出させている鎧。


「すぐに仕留めます――“裂金螺線”」


 エリーシャの左腕に装備された鉤爪、“深海竜の金巻手”のドリル状の指先から回転する光を生み出し――紙を引き裂くように石の鎧を壊して見せる。


「“氾濫螺線術”――リバースパイラル!!」


 他の“フレイムリビングアーマー”もあっという間に蹴散らされ、私達は先へと進む。



○“紅蓮の太刀”を手に入れました。



「宝箱からは、大した物は手に入らないな。少し期待していたんだけれど」


 そろそろ炎の宮殿も終盤。


「サキ、また暑くなってきた……」

「ガゥ……」


 二人とも、暑いのがキツいらしい。


 ただ、こればかりは仕方ない。炎の宮殿を選んだ理由は幾つかあるけれど、一番の理由がモモカ達を空中庭園に連れて行きたくなかったからだし。


「ちょっと待っててね。“吹雪魔法”――ブリザード」


 炎の宮殿の基本的な攻略法は、氷属性の凍結系能力で気温を下げつつ、水属性でモンスターと戦うというもの。


 氷属性を使う前に水属性で攻撃してしまうと、高温の水蒸気によって視界を奪われるだけでなく、肌が火傷してしまうのだ。


「ジュリー様、どうやら終点のようです」


 先頭のエリーシャが見付けたのは、この宮殿最上階、最奥の扉。


「さっさと終わらせて、涼しい我が家に帰ろうか」


 ドアを開け、全員が部屋に入ると身体が動かなくなり――勝手にドアが閉まる。



『――進入者め。随分、私の宮殿を荒らしてくれたな』



 部屋の中央部から炎が吹き上がり――炎の獣毛を纏う、二足歩行の化け物へと姿を変えた。


『私の名はイフリート!! 貴様らを焼き尽くす者!!』


 よし、動ける。


「サキ、クレーレ!」

「“吹雪魔法”――ブリザード!!」

「“氷砕魔法”――アイスクラッシュバレット」

「エリーシャ!」

「“氾濫魔法”――リバースプラッシュ!!」


 凍結によるステージギミックの無力化に動きの制限、水を浴びた事によるイフリートの能力の半減。


「モモカ!」

「“竜技”――ドラゴンサンダー!!」

「“六重詠唱”、“天雷魔法”――サンダラスヘブン!!」


 水を浴びたイフリートは、雷耐性が著しく低くなっている。


『――ギャァァァァァァッッ!!』


「決めろ、バニラ!!」

「――ガウ♪」


 跳躍からの二刀の振り下ろしにより、イフリートにトドメを刺したバニラ。


「まったく、“乾坤一擲”による威力増加もあって、通常攻撃が上位武術なみだ」


 ああいう極端なプレイスタイル、本当はデメリットの方が大きいんだけれど。


「“魔物契約”」


 イフリートの首に鞭が巻き付き、消滅エフェクトが黄金に変わる。


『……この私を下僕とするか』


「モモカちゃん、この子の名前はどうする?」

「サキ、なんでモモカに聞くんだ?」


 まず、マスターである私に聞くべきだろう。


「……可愛くない」

『可愛くないって……』

「モモカちゃん、この子は姿を変えられるのよ。ほら、可愛くなりなさい」

『こんなのにテイムされるとは』


 とか言いつつ、黒茶色のウサギへと姿を変えるイフリート。


挿絵(By みてみん)


「可愛い!」


 兎イフリートに抱きつくモモカ。


『この姿の時は、戦闘力は皆無と思ってくれ』


 モモカの可愛くないって言葉、もしかして気にしてる?


「それで、どんな名前にすんの?」


 クレーレに尋ねられるモモカ。


「……ウサリーレ!」


 ウサギとイフリートにクレーレを混ぜたのかな?


『ウサ……へ? それ、私の名前?』


「可愛いじゃん! モモカは天才だね!」

「モモカちゃん、さすが!」

「アウ♪」

「私とセンス、そんなに違くなくない?」

「慎んでください、ジュリー様」


 私に迎合していくはずのエリーシャですら冷ややか!?


 その後、部屋の奥にあった安全エリアから、“神秘の館”へと帰宅した。


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