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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第17章 飛躍の龍意

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651.恋愛ごっこ中毒者

 “サムシンググレートソード”に三文字刻み、前に駆けながら――強襲してきた大型の虎を、肩から腹まで切り裂く。


「お見事です、ご主人様」

「び、ビックリしたわね……」


 トゥスカはともかく、あのマリナが怯えるとは。


 まあ、遠くの草むらが揺れたと思ったら、あっという間に距離を詰めてきたからな。


「“ダイナミックタイガー”。このステージに出る虎モンスターでは一番の大型。瞬発力も随一だよ」


 メルシュの解説……てことは、別タイプの虎モンスターも居るのか。


「コセ、マリアが象さん来るって!」

「ありがとう、モモカ」


「氷属性の魔法が使える者は前へ!」


 ジュリーが指示を出して間もなく、ジャングルの奥から木を折る音を響かせながら――牙の生えた像が横に列を成して現れた!


「撃てぇー!!」


 大声でジュリーが合図を出すと、氷属性を含む魔法が象の隊列を襲い……氷付けになったり潰されたり、刺さったりして絶命した。


「気を抜くとおっかないモンスターばかりだな」

「まあ、野生の動物は獲物に気付かれないように近付くのが基本だからな。象は草食なのに、自分から襲ってくる事もあるが」


 エトラの言葉。


「やっぱり、ダンジョン・ザ・チョイスとそれ以外の場所のモンスターは、行動パターンが違う?」


「そうですね。外のモンスターの方が生に執着した行動を取ります。怪我をしたら逃げるとか。なので、この迷宮に比べて仕留められる事は少ないです」


 ノーザンが教えてくれる。


「ステージが五十を超えてくると、モンスターの行動パターンの複雑さがより顕著になる。連携能力やフェイント、罠の活用とかね」


 ジュリーの解説。


「三十ステージ辺りから逃げたりするようになってたしな」


 歩きながら話を続ける。


「危ないのが、戦い慣れた弱いモンスターだからと油断すること。ステージが上がるほどに地味にモンスターの能力が上がるし、スキルや武具効果の使用頻度、敵装備の質も上昇する」


「聞けば聞くほど、武器を使う人型モンスター辺りが一番厄介そうだな」

「八十ステージ辺りからは、プレーヤーと戦っているんじゃないかと思うほど奇天烈な行動もしだすよ」

「はぁ……」


 奇天烈な行動がプレーヤーっぽいって事なのか?


「後は、単純に強いモンスターの出現数が増えるな」

「ボスが言ってたな。古生代モンスターが複数体同時に現れるようになったのは厄介とか、中ボスクラスが雑魚みたいにワラワラ出て来てキツいとか。中ボスってよく分からんけど」


 一番攻略ステージが高いエトラからの情報。


「ダンジョン・ザ・チョイスの試練は、まだまだこれからって事か」


 まあ、まだ四十五ステージだもんな。


「そう言えば、ダンジョン・ザ・チョイスの最終ステージって――」


「ご主人様、敵です。おそらく人型」


 気配をいち早く感じ取ったらしいトゥスカが教えてくれる。


 歩みを止め、武器を構えた直後に現れたのは……異形の頭を持つ人間の集団?


 目が大きくて、牙は不自然な程に太い。


「“羅刹”。素早い動きで肉を噛み千切ろうとしてくる」


 実質、二足歩行の肉食動物か。


「孤立しないように連携を意識しな!」


 アマゾネスのシレイアのアドバイスが響いた直後、“羅刹”が突っ込んで――この瞬発力、アルファ・ドラコニアンと同じ!?


 ――鋭い爪を剣の腹で受け止め、鎧の脚に三文字刻んで蹴るも……後退して避けられる。


 アルファ・ドラコニアンと同等のスピードかとも思ったけれど、さすがにそこまでじゃないな。攻撃も、奴らに比べたら軽過ぎるし。


「“万悪穿ち”!!」


 ザッカルの剣槍の群れが降り注ぐも、大半が回避に成功している。


「動きの機敏さが凄い」


 ステージが上がればこんなモンスターが、更に高度な連携で襲ってくるのか。


「“四重詠唱”、“天雷魔法”――ヘブンサンダラスレイン!!」


 ジュリーの広範囲攻撃……どうやら、“羅刹”はあまり打たれ強いわけじゃないらしい。手脚が炭化して動けなくなったのがほとんど。


「一気に仕留めるぞ!」


 それから何度か“羅刹”を含めたモンスター、“ツインタイガー”や“ジャンピングタイガー”などにも襲われるも、最初に戸惑った素早い機敏な動きにも慣れ、すぐに強敵とは感じなくなった。



             ★



 安全エリア手前に大量に転がる、怪鳥の亡骸を“鳥葬のボーンスレイヤー”で切り裂いていく。


「お、霧が!」


 黄金の霧が舞うのは、レアアイテムが手に入った証!



○謎の鳥の亡骸より、以下のアイテムを回収しました。


★自在玉

★腐った肉×2

★鳥骨×5

★立派な鳥骨×1

★綺麗な羽毛×4

★粗雑な骨×3



「あら、“自在玉”なんて珍しいですの」


 チョイスプレートを、ネレイスのサカナに覗かれている。


「どういう物なんだ?」

「Aランクのアイテムで、その名の通り玉ですの。様々な機能があり、使いこなすのが難しい分、利便性の高い装備ですのよ」


 うん、よく分からん。


「誰向きのアイテムなんだろ?」

「特に系統があるアイテムではないですが、私のマスターが一番上手く活用出来るかと」


そう言えば、リューナはなかなか自分に合った新武器が手に入ってなさそうだったな。


「じゃあ、渡して来るか」

「コセさんが直接渡すと、マスターに対して角が立ちません? ここは、いったんメルシュに渡してからマスターに届けさせた方が……」



「――そんな事で不和を生むような人間なら、俺のレギオンには要らないかな」



 大事なプレゼント選びでもないんだ。一々そんな事に気など遣っていられるか。


「……本当に良いんですの?」

「たとえ嫉妬じみた感情が芽生えたとして、それでダメになるならその程度の関係でしかなかったってことさ」


 自然体でいられるのが許されない男女の関係なんて、遅かれ早かれダメになるに決まってる。


「普通、熱烈な恋をしてつき合って、結婚するもんなんじゃねぇのか?」


 声を掛けて来たのは、ヘルシングのレン。


「そんなアホみたいな恋愛観だから、結婚しても上手くいかない人間が多いんだよ」

「はあ?」

「レンは、四六時中ドキドキする相手とずっといたら疲れないか?」

「……まあ、普通にキツいな」

「俺にとって大事なのは、俺が一緒に居たいと思える相手かどうかだ。恋愛を遊び感覚でやっているバカ共と同じ基準を押しつけられてたまるか」

「そこまで言うのかよ、お前」

「不倫とか浮気する奴は、相手の事なんて全然大切に思ってないと思うぞ? そのドキドキとか刺激に依存してるだけの恋愛中毒者。いや、恋愛ごっこ中毒者だ」


 じゃなきゃ、他人の人生を背負う行為を無責任にするなんて出来るはずがない。


「数十人の女に手を出している奴が何言ってんだ?」


 呆れたような目を向けてくるレン。


「俺は一度だって、遊びで手を出した事なんてないよ。全員の責任を取るつもりで関係を持ってる」

「……口じゃなんとでも言えるっての」

「だな」

「だなって……」

「俺が本当に最後まで責任取れるかどうかなんて、結局その時にならないと判らないからな。レンの言葉を否定する気なんて無いよ」

「お前、変な奴だな。絶対に責任取るって宣言した方が格好いいのによ」


 まあ、確かにそうなんだけれど。


「自分が思っていた事と全然違う行動を取ってしまった経験、レンには無い?」

「そりゃ……あるけど」

「俺は……自分で自分のこと、よく分かってないから。絶対なんて言葉、無責任な人間にでもならなきゃ……使う気になんてなれない」


「絶対は無責任か……」


 背中を見せ、去って行くレン。


「……悪いこと言ったかな」


 などと思いながらリューナを探そうとした瞬間、鹿獣人のエレジーと目が合って……背けられた。


 前に弱い所を見せてしまったのもあって、彼女との距離感が日ごとに解らなくなっていく。


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