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66.アビスホエール

 渦の中の、宝箱出現地帯にてアイテムを回収していた。


「”アビスメイル”……これ、本当にもらって良いのか、ジュリー?」


 メグミさんに、青い鱗が連なった鎧を渡す。


「私のパーティーで鎧を着ける人間は居ないので、どうぞ」


 タマもトゥスカもスピード重視の戦士だし、わざわざコセに渡すほどランクの高い防具じゃない。


 メグミさんの鎧はそこまで性能が高くないし、アビスメイルには水と闇と火の耐性があるからこのステージでは役に立つ。


 彼女のメイン武器は大盾だし、優先して防御能力を強化しないと死んでしまうだろう。


「ありがとう、感謝する」


 茶髪ポニーテールで長身の格好いい系美女が頭を下げたのち、装備を変更した。


「ジュリー様、”アビススピアー”が手に入りました」

「コッチは”深淵の魔道服”だって」


 出現する宝箱の数は人数分のみ。

 私が手に入れたのは“アビスメイル”、タマが“アビススピアー”、ユリカが“深淵の魔道服”。


「”アビススピアー”はタマが持っておいて。今は役に立たないから、装備しないように」

「はい!」

「“深淵の魔道服”はユリカが装備して」

「良いの?」


 “深淵の魔道服”は、耐性以外にも闇属性、水属性の攻撃を強化してくれる効果がある。


「あ、私も”深淵の魔道服”だ。装備しちゃお♪」

「私は“アビスアックス”です」

「私は“深淵の指輪”ですって~」

「私は……“アビスロッド”だな。ジュリー、受け取ってくれ」


 お礼のつもりか、メグミさんが私にくれようとする。


「ありがとうございます。でも、私は杖を使わないので、サトミさんかアヤさんに渡してください」

「む、すまんな」


 メグミさんが申し訳なさそうな顔をしたときだった。



『ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーー!!』



 渦の中から、クジラの鳴き声が響いたのは。


「な、なに!?」

「アビスホエール……滅多に遭遇しないレアモンスターです!」


 運が良いのか、悪いのか。


 でもちょうど良い。思っていたよりもアビスジャイアントフィッシュとの遭遇数が少なくて、まだあまり”深淵魔法のスキルカード”が手に入っていなかったところ!


 魔法系はたくさんあっても困らない。


「ね、ねぇ、ソイツって強いの!?」


 アヤさんが怯えた様子で尋ねてきた。


「タフさだけなら、ガルガンチュアに匹敵します」

「……嘘」

「弱点は雷属性です! 来ますよ!」 


 渦の中から、藍色の巨体を出現させるアビスホエール。


 ……リアルで見ると、本当に大きい。


「タマ、“咎槍”を使っても良い!」

「分かりました!」

「ユリカは“深淵魔法”で防御重視!」

「了解よ!」


 二人共、気後れしたりはしていない。


「“飛行魔法”、フライ!」


 飛行魔法の対象に出来るのは自分のみ。


 私は単身でアビスホエールに接近する!


「サンダラススプランター!!」


 まずは正面から挨拶。注意をこちらに向ける。


『ボオオオオオオォォォォォーーー!!』


 私に対する攻撃の予備動作に入った。


「”万雷魔法”、サンダラスレイン!!」


 サトミさんの下からの援護!


 攻撃がキャンセルされると同時に、今度は注意がサトミさんに向く。


 アビスホエールの口から黒い玉、“深淵魔法”のアビスカノンが放たれた!


「アビスウォール!!」


 ユリカが暗い藍色の渦壁で防いでいる間に、私は“金剛の剣の指輪”から、右手に連動するように宙に浮くダイヤモンドの大剣を出現させ――急接近!


「“金剛剣術”――ダイヤモンドブレイド!!」


 アビスホエールの喉に突き刺し、剣からキラキラとした光を撒き散らしながら、そのまま腹から尾へと向かって切り裂く!


『ボオオオオオオォォォォォォォォッ!!!』


「“咎槍”――パワージャベリン!!」

「“光輝魔法”、シャイニングレイ!!」

「”万雷魔法”――トワイライトスプランター!!」


 タマ、アヤさん、サトミさんの攻撃が、アビスホエールに届く。


 弱点を突いている上に、本来この時点で手に入らない強力なスキルで畳み掛けている。


「もうすぐ勝てる……でも、トドメは渡せない!」


 アビスホエールから手に入る莫大な経験値と、“深淵魔法のスキルカード”だけは!


『ボオオオオオオオォォォォォォォォッッッ!!!』


「まずい!」


 HP三分の一以下で発動する、“潮吹き”が来る!!


「させない! “二重魔法”、”万雷魔法”――サンダラススプランター!!」


 上から放った二重の万雷が、背から”潮吹き”を発動しかけたアビスホエールを焼き焦がし――光へと変えた。


挿絵(By みてみん)



●●●



『『ギギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!』』


 巨大化した反骨戦士、反骨巨人が二体現れた。


 巨人と言っても、高さ三、四メートルだけれど。


「よっしゃ! 一体はアタシが受け持ってやる!」

「もう一体は俺がやる!」


 シレイアと俺で、反骨巨人を相手取る。


 残りのメンバーは海から次々飛び出してくる青い魚人、ギルマン共の相手をしてくれていた。


 あのギルマンからも、有用なスキルが手に入るらしい。


「どっちが先に倒すか、競争しないかい?」


 シレイアからの提案。


「そんな事をしてなんの意味がある?」


 危険を増やすだけだろう。


「私が勝ったら、アンタの唇を貰うよ!」


 きったね! いきなり飛び出しやがった!


「おい、ふざけるな!!」


 結婚しているジュリー達ならまだしも、お前みたいなビッチとキスなんかしたくねーよ!!


 ”武器隠しのマント”から、“滅剣ハルマゲドン”を出す!


「“瞬足”――“終末の一撃”!!」

『ギギャギャギャギャギャーーーーッ!!!』


 消費の激しい切り札を用い、一撃で終わらせた!



●●●



 アイツ、きったね!


「“滅剣ハルマゲドン”とかずる過ぎるだろう! むしろ、なんでSランク武器なんて持ってる!」


 メルシュが目を着けた男、アタシのマスターに負けず劣らずの規格外のようだね!


「早くも決着がついちまったから、ちょいと萎えるよ!」


 ”アマゾネスの大刀”を振り回し、骸骨を切り刻んでいく!


「硬いねー」


 スキル無しじゃこんなもんか。


 骸骨の剣と盾を“近接探知”で完璧に”見切り”、懐に潜り込む!


「ハイパワースラッシュ!!」


 良いのが決まった!


『ギギャギャギャギャギャギャ!!』

「チッ!」


 黒い靄が奴の身体を包み込んだため、距離を取る。


「確か、“腐食”のスキルだっけ?」


 ”グールのスキルカード”から入手出来るやつで、“腐食耐性”が無いと自分までダメージを受けちまう危ないスキル。


「本来持っていないはずのスキル。カスタムモンスターか」


 ()()()()、こっちを通らなかったからね~。


「手を貸そうか?」


 コセめ、生意気な。


「アンタ、アマゾネスが一番得意とする武器がなにか知っているかい?」

「いや」


 チョイスプレートを急いで操作し、その武器を装備する!


「そいつはね――弓だよ!!」


 “アマゾネスの大弓”を構え、“アマゾネスの矢筒”から取り出した矢をつがえる!


「――ハイパワーアロー!!」


 骸骨が防ごうと構えた盾を”大弓術”の一撃で無理矢理弾き飛ばし、胸の中心の紅いコアを貫く。


『ギ……ギャ……ギャ…………』


 骸骨の動きが止まり、骨が光に変わり始めた。


「久し振りに、気持ちの良い一発だったよ♡」


 弓弦の震えが、心地良いねー♪


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