おまけ 雄偉なる宵闇から戦慄は消えて
「わ、判ったわよ! で、どうするの?」
「――“超同調”」
彼と私の意識が繋がっていって――自然と目を閉じ、“名も無き英霊の劍”に手を翳していた。
凄くあたたかい物が私の中に流れ込んできて、今度は私が、混じり合った私の熱を彼に返す。
「狂い殺せ――――“雄偉なる宵闇から戦慄は消えて”」
青い石剣が、黒い美麗な剣へと変わっていく。
「へ、本当に成功したのか?」
「そう……みたい」
頭がボーッとする中、半ば反射的にルイーサの問いに答えると……私の手に、コセくんがSSランクの死の黒剣を預けてきた!?
「こ、コセくんが使うんじゃないの?」
「これで、三人を守ってくれ」
それだけ言い、黄金の燐光散らしながら飛んでいってしまうコセくん。
残された私の手に、ジンワリと強い温かみが伝わってくる。
「この剣……あっつい♡」
まるで、彼の火照った時の体温がそのまま宿っているみたいに。
「カナ、悪魔が集まって来てる!」
ナオの言葉に我を取り戻す!
「て、これどうしたら良いの!?」
初めて手にした武器の使い方なんて分からない! しかも、私の本来の得物は大鎌なのに!
「落ち着け、カナ! 剣に意識を向ければ自然と解るから!」
私達に悪魔が近付かないように牽制しながら、教えてくれるルイーサ!
「意識を――」
――解る。この剣に秘められた……宿った私とコセくんの力の結晶――その真価が!!
「“随伴なる死鎌”」
“アルティメット・ハフト”のように黒い暗黒の大鎌を無数に生み出し――回転させながら悪魔達へと殺到させる!
「……凄い」
数十から百は居そうな悪魔達が、あっという間にバラバラに。
神代文字無しでこの制圧力……全能感すら込み上げてくるほどに、理不尽で驚異的な力。
この剣がコセくんと一緒に生み出した物でなかったら、自分が力に溺れていてもおかしくなかったかも。
そう思えるくらいには、あまりに強大で圧倒的な戦果を生み出し続ける。
「ナオ、カプアの様子は!」
「動けるようになるまでは、まだ時間が掛かるわ!」
「なら、私が時間を稼ぎましょう! ルイーサは休んでいなさい!」
MPもTPも消費せずに、次々と現れる悪魔達を殲滅していく。
「――おわッ!?」
無数の死神の鎌で悪魔を始末していたら、いきなり路地からエトラが現れたため、もう少しで当ててしまうところだった!!
「危ないでしょう、エトラ!」
「いや、それ私のセリフでしょうが! て、それよりも!」
エトラを追うように現れたのは、獅子の頭を持つ有翼の人獣。
「何あれ?」
「“パズズ”。かなり強い奴だ!」
六十より上のステージにいたエトラが強いって言うなら、かなり危険そうね。
『――“疫病の熱風”!!』
羽ばたかせた翼から、高温の突風を繰り出してきた!?
「“灰燼魔法”――アッシュドーム!!」
熱風から私達を守ってくれるエトラ。
「あの風は毒だ! 昔、アレで酷い目にあったから間違いない!」
やっぱり、前に戦ったことあるのね、エトラは。
「私に任せなさい!」
すぐさま敵の死角に鎌を顕現、弧を描きながらの回転投擲!
『――瘴気連拳!!』
六つの鎌全て、黒い靄を纏う拳で対処されてしまう!
「厄介なのは隙の無さだ。アイツは能力が満遍なく高い」
パズズがエトラに向かって跳び蹴りを放ってきたため、お互いに距離をとる。
「“烈火竜技”――レッカドラゴンファング!!」
『瘴気拳!!』
炎の牙群纏うエトラの左腕と瘴気の右拳がぶつかり合い――エトラが吹き飛ばされてしまう!
『次は……貴様だ』
「いいえ、終わりよ――“暗黒大地剣術”、ダークネスグランドブレイク!!
『“疫病熱ぷ――』
パズズよりも早く闇と地の剣圧が敵を呑み込み――二メートル超えの巨体を完全に滅した。
「まだまだ余裕――行け!!」
路地から次々と飛び出してくる“アバター”などの地の悪魔めがけ、死神の鎌を殺到!!
「クソ、いったいどこに逃げりゃ――」
「あ……」
路地から飛び出して来た男二人を、鎌でバラバラにしてしまった……。
「よ、よかった……仲間じゃなくて」
《龍意のケンシ》の誰かだったらどうしようかと思った!




