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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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627.アルティメット・ハフト

「やっぱりアレは、SSランクなのか」


 ユイとヨシノの治療が終わったのち、リビングで情報交換をする俺達。


 落ち着かないせいか、食堂で座って聞く気にはなれずにいた。


「5番目のSSランク、“アルティメット・ハフト”。鈍色の柄だけの武器で、その気になれば、柄のある武具をなんでも生み出せてしまう。無限にね」


 メルシュの説明に、より状況の深刻味が増す。


「SSランク持ちに加え、観測者側からの情報リーク……厄介すぎる」


 ジュリーの苦虫をかみつぶしたような顔。


「確認できただけでも、向こうの人数は七十人以上。だが、多けりゃ百人を超える可能性もありそうだったよ」


 シレイアのあっけらかんとした告白。


「百人規模のレギオンが連続で現れ、どちらもSSランク持ち……偶然か?」


 ルイーサの指摘。


「《エクリプス》はともかく、《カトリック》の方は情報をリークして貰っていたみたいだし、偶然じゃないかもね」


「メルシュ、《カトリック》のレギオンリーダーは?」

「SSランクを所持していた白人の男だよ。名前はルーカス」


 やっぱり、アイツがレギオンリーダーか。


「彼なら、少しは話が通じそうでしたが……」


 イチカの言葉。


「……“アルティメット・ハフト”は、5番目だって言ったよな」


 メルシュに確認する。


「うん」

「“エンバーミング・クライシス”、“ブラッディーコレクション”、“マキシマム・ガンマレイレーザ”。いずれも、俺達と敵対するような危険人物が所持していた」

「何が言いたいんだ、コセ?」

「つまりご主人様は、観測者達がわざと、危険な人格の持ち主にSSランクが渡るようにしている……そうお考えで?」


 ルイーサの質問に、トゥスカが答える形となる。


「ああ。そもそもSSランクは、俺達やアテル一派を排除するために実装された疑いがあるしな」


 わざと人格破綻者に与えているとしたら、あの一見まともそうに見えた白人男も……。


 むしろ、アイツの攻撃には容赦のない悪意すら感じた。


 ヨシノへの攻撃に俺が対処できなかったのは、あの一撃だけタイミングが違ったから。


 そして、ユイがあのタイミングで食らった攻撃……この言いようのない嫌悪は、二人が奴によって傷つけられたからだけなのか?


「コセ、お前……一人で《カトリック》と戦おうとか思ってないだろうな?」


 ルイーサに気付かれてしまう。


「……夜になったら、奴等に奇襲を掛けようと思っていた――皆殺しにするつもりで」


「「「……」」」


 俺の言葉に絶句するルイーサ達。


「全員って、《カトリック》じゃない奴等は、どうやって見分けるつもりだよ?」


 セリーヌに尋ねられる。


「見分ける方法が無いから、皆殺しにするんだ」


「お前、本気で言ってんのか?」


 レンの剣呑な声。


「魔法の家の領域には、基本的に入る事は出来ない。なら、逃げられる前に奇襲して確実に息の根を止める以外の方法は無いだろう」


 誰かがやらなけれえばまた集団に囲まれて、SSランクの理不尽な力が振るわれてしまう。


 ヨシノとユイが怪我をするだけで済んだのは、運が良かったとも言えるんだ。


「レギオン戦を挑むっていうのはどうかな? 言いたくないけれど、制約を掛けずにモモカを賭けの対象にすれば、奴等は乗ってくると思う」


 メルシュの悪魔じみた、それでも、俺よりはだいぶマシな提案。


「……」

「マスター……」

「……解ってる。それが、今のところ最善の策だっていうのは」


 クソ! なんで、よりによってモモカが狙われる状況を作るんだ、観測者の奴等は!!


「……モモカがあの人達のところに行けば、みんな怪我しなくて済むの?」


 落ち込んだ様子のモモカから……そんな言葉が漏れた。


「……モモカがアイツらに連れて行かれたら、俺達は……怪我よりもずっと痛い……一生治らない傷を負うことになる」


 膝を付いて、モモカの頭を撫でてやる。


「モモカは、ここに居て良いんだよ」

「コセ!!」


 鎧の上からなのに、ギューッと抱き締めてくれるモモカ。


「……メルシュ、さっきのレギオン戦の話、出来るだけ早く詳細をまとめて《カトリック》に――」



『――じゃんジャジャーン!! 突発クエスト・殲滅夜襲を始めちゃうよー!!』



 俺達の決意を踏みにじるように、神経を逆撫でする不快な女の声が響きわたった。



●●●



『殲滅夜襲のルール説明を始めちゃうね~』


 妙に軽い女の声に、怒りが込み上げてくる。


『今日の夜六時ジャストに、四十三ステージに居るレギオン、《カトリック》と《龍意のケンシ》メンバーで、“退廃と快楽の都”を舞台に戦争をして貰うよ』


 まるで、こちらの思惑を見計らったようなタイミングと内容。


 情報のリークをしていた観測者は、彼女か。


『レギオンメンバーは全員参加。使用人NPCの参加は自由だけれど、隠れNPCは――ダメ~ー!』


 子供のイタズラのような態度で!


『制限時間は二時間。レギオンリーダーを先に倒した方の勝ち。それと、死んでもレギオン戦の時のようには生き返らないから、よろしく~! 時間切れの場合は引き分けねー』


「レギオンリーダーの生死でのみ、勝敗が決する仕組み……か」


 だとすると、ギルマスが集中的に狙われるのは必定。


『勝ったレギオンの報酬はこちら!』



○以下から一つを選べます。


★生き残った相手レギオンメンバー全員の奴隷化。“隷属の印”付き。

★殺した相手の遺言機能を無視したアイテム収奪。

★相手レギオンメンバー全員の生殺与奪権。

★参加者全員に“武具系統指定S級ランダム袋”。



『クエストが始まる前に選択しておいてね~』


 いけ好かない声の通信が途切れる。


 選択権があるのは、レギオンリーダーであるギルマスのみ。


「どうするの、マスター?」

「…………」


 ギルマスが苦しそうにしていると……どうして私はこんなにも……胸が締め付けられるのだろう。


挿絵(By みてみん)


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