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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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624.地の黄昏と天の大地


『――ガオオオオオオオオ!!』



 転移して早々、夜の渓谷の底の上空に……月を覆う程大きな西洋竜の姿が。


「メルシュ……ここは、“悪魔竜の渓谷”で間違いないか?」

「うん。それと、あの竜を追っていかないと黄金の宝箱を見付ける事は出来ないみたい。場所はランダムだから、私でもハッキリとは解らないよ」


 竜は高いところを飛行し、頭上を通り過ぎていく。


「黄金の宝箱を開けて宝を回収すればクリア扱い……もしかしてあのドラゴン、湖の主みたいに規格外に強かったりする?」


 似たような存在の圧を、あの竜からも感じる。


「まあね」

「それよりも、追い掛けた方が良いんじゃねぇの?」


 セリーヌに指摘されてしまう。


「私が先行します」


 足の速いトゥスカが駆け出す。


「戦闘音とかで気付かれると襲ってくるから、気をつけて!」


 メルシュの言葉に手振りで応えるトゥスカ。


「てことは、ドラゴン以外のモンスターも出るんだな」

「派手な音を出す攻撃は避けてね」

「では、メルシュ様は今回、戦力外ですね」


 ナターシャの指摘。


「ま、まあね」


 武具を使えず魔法主体の戦闘をするメルシュは、特に戦術が制限されてしまうからな。


「後ろは頼んだ、ナターシャ。一緒に来てくれ、セリーヌ」

「ああ」


 身軽なセリーヌと二人で、トゥスカを追い掛ける。


 何度か渓谷に転がる岩を飛び越えて進んでいると、トゥスカが狼型と思われるモンスターを蹴り飛ばしながら進んでいる姿を発見。


「迎撃は最低限で、進むのを優先しているみたいだな」


「トゥスカを追い掛けさせないように、俺達で数を減らそう」

「良いけれど、俺はトゥスカの姿を見失わない事を優先するからな」

「解った――武器交換、“偉大なる英雄の光剣”」


 “サムシンググレートソード”から短剣に持ち替え、三文字刻んでから“神代の光剣”を発動。


 少しでも装備の重量を減らし、すれ違いざまに狼を両断。


 セリーヌも両手の“倍打突きのザグナル”を駆使し、頭を狙って一撃で仕留めていた。


「――セリーヌ、上だ!」


 見たことのないコウモリモンスターが、上空から集団で迫っている。


「魔法の類が使えないこの状況で、“エビルバット”の集団だと!?」



「――――フ」



 “神代の光剣”を意識して伸縮させ、コウモリモンスターの大半を切り刻む。


「先に行け! 援護する!」

「仕方ねぇ!」


 セリーヌには邪魔な狼だけを相手して貰い、俺は“エビルバット”とかいう目無しの凶暴そうなコウモリの群れを狙って始末していく!


 俺に迫る狼は盾で打ち払いながら、時折レーザー刃で仕留めつつ進み続ける。


「――チ!」


 いきなり上空から蹴りを見舞ってきたのは、グレーターデーモン。


 派手な能力を使えないこの状況だと、一人で相手するのは少し厄介か。


 幸い、セリーヌを狙うコウモリ共は、ほぼ始末を終えている。


「付き合ってやる暇は無い――すぐに終わらせる!」


 短剣に六文字刻み、これ見よがしに光剣を

振るって“グレーターデーモン”の動きを誘導。


 敢えて文字を使わない状態で左手の平を顔面に翳し、“剛力竜衝”で頭を吹き飛ばした。


「思ったより音、大きかったな……」


 あれくらいなら大丈夫か?


 暫く走っていると、渓谷の別れ道が無数に合流している場所が現れ、そのうちの一つの前にセリーヌの姿を見付ける。


「セリーヌ!」

「トゥスカの奴はこの先に進んだ」


 別れ道だから、ここで待ってくれていたのか。


「メルシュとナターシャが来るまで、俺はここで待機している。お前はとっとと行け」

「ありがとう。二人を頼んだ」

「お前……俺が嘘を付いているとは思わないのか?」

「え、なんで?」


 今までの言動を知る俺からすれば、セリーヌは口が悪いだけで誠実な人間に見えるのに。


「……なあ。あの剣を創るやつ……私とでも出来ると思うか?」


 私?


「さすがに無理じゃないかな?」


 身体も心も重ねたマリナとすら“超同調”が必要なのに、心を開いていないセリーヌと剣の精錬が可能とは思えない。


「……そうかよ。ほら、さっさと行け!」

「ああ、うん」


 なんだったんだ、今の質問?



            ★



「トゥスカ!」


 何も無い岩場の行き止まりで、身を隠すように蹲っているトゥスカを発見。


 指を立てて静かにするよう促してくるトゥスカの視線は、谷の上部のある一角へと向けられる。


「あそこに何かあるのか?」


 トゥスカに倣い、隣で身を屈めながら尋ねる。


「あの岩壁部分に吸い込まれるように、ドラゴンが姿を消したんです」

「じゃあ、あそこに見えない穴でもあるのかな?」


 ゲームを再現したこの世界でなら、全然不思議な事ではない。


「他の三人は?」

「トゥスカを見失わないように、俺だけ先に来たん――」


 遠くから……派手な爆発音が。


「まさか、メルシュの仕業か?」

「ご主人様、アレを!」


 壁の中から、巨大な竜の頭がヌルッと生えてきた!?


「やっぱり、見えない穴か何かがありそうだな、あそこ」


 それにしてもあの頭の大きさ……全長は思っていたよりも大きいかもしれない。


「……まずいな」


 ドラゴンが壁から飛び立ち、その場で羽ばたきながら爆発音がした方向に視線を向けている。


「――オールセット3」


 両手に一振りずつ、“名も無き英霊の劍”を装備。


「ご主人様?」

「俺達だけでやるぞ、トゥスカ」


 アレがメルシュ達の方に行くのはマズイ。


「了解です」


 剣を受け取ったトゥスカと共に、青黒い石剣に――名を刻む。



「撒き実れ――“雄偉なる大地母竜の永劫回帰”」

「照らし抱け――“雄偉なる黄昏は英雄と共に”」



 俺の左腕に大地竜の剣が、トゥスカの右腕に黄昏の大剣が生成される。


「行くぞ!」

「はい!」


挿絵(By みてみん)


 俺が右から巨岩を、トゥスカが左から黄昏色のレーザーを放って両翼に直撃――巨大な赤黒いドラゴンが、渓谷の底に落下してきた。


 すぐに“大地支配”の力で土や岩の鎖を形成、拘束しようとするも――力尽くで抜け出される!


『グルルルルルルルル!!』


 明確な殺意……翼はもう使い物にならないだろうし、嫌でも俺達を相手にしなければならなくなっただろう。


『……ユル……ザン』


「喋った?」



『“覆竜技”――ヴリトラドラゴンブレスッ!!』



「――“拒絶領域”!!」


 青黒い息吹を弾き耐える!


「「“神代の剣”」」


 十二文字刻み、俺達の文字を共振させていく。


『“凰竜(おうりゅう)魔法”――メイストームドラゴキャノン!!』


「“黒竜霊”」


 魔法を吸収する力を行使し、風と雷の竜弾を大地竜の剣に取り込む!


「“大地魔法”、グランドバースト――“偉大なる黄金の翼”! “飛翔”!!」

「“ホロケウカムイ”、“ニタイカムイ”、“ミケカムイ”、“タシロカムイ”!!」


 互いに最大限の強化を施した状態で、悪魔竜へと正面から接近!


『“焱竜技”、サラマンドルドラゴンファング!! “靈竜技”、インフィニティードラゴンファング!!』


「――“魔力砲”!!」

「――“神代の天竜”!!」


 桃色の砲撃が焱の牙纏う左腕を吹き飛ばし、青白い竜が霊鉄の牙纏う右腕を食い破る!!



「“大地竜剣術”――グランドドラゴンブレイク!!」

「“黄昏大地剣術”――トワイライトグランドブレイク!!」



 伸びた“神代の剣”より放たれた、天と地から迫る大地と黄昏色の暴威が混ざり合い――悪魔竜の頭から尾の先まで、爆散し尽くした。


「ハアハア、ハアハア。無事か、トゥスカ?」

「ハアー、ハアー。はい……ただ、ちょっとキツいです」


 メルシュ達が追いついてくるまでの少しの間、俺達は背中を預け合いながら座り込んだ。


 やっぱり、トゥスカだけは……絶対に失いたくないな。


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