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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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613.光輝正教の主都

 最後にルイーサ達がボス戦を終え、転移してきた。


「随分と綺麗な街ね……でも、なんか二十ステージに似ている気がするのは気のせいかしら?」

「あ、姉ちゃんも?」


 そんな双子の会話が耳に届く。


 街は白い六角柱状の建物ばかりで、神聖という印象を受けるも……妙に不気味というか。


「日も傾いて来ましたし、急いで下りましょう」


 トゥスカに促されるまま、祭壇の麓へ。


「マスター。ここで数日、休養を取らない?」


 メルシュからの提案。


「手に入れたアイテムやスキルの習熟もあるし、アイテムの制作依頼も出したいんだよねぇ」


「そうだな。久しぶりの攻略なのに、結構急ぎ足だったし」


 ステージが四十代に入ったからか、地味に手強くなった印象もある……休めるときに休ませよう。


「この都市の滞在ペナルティーは?」

「一週間以内に毎週、正教教会にお布施をするだけです。確か、一人100000(十万)Gだったかと」


 リューナとヒビキさんの会話。


「ようこそ、正教の総本山へ」


 祭壇を下り終えると、聖職者らしき格好の白髪老人が和やかに声を掛けてきた。


「……へー」


 メルシュの妙な反応。


「天使様の情熱を持っているのなら、私の方で買い取るがいかがかな?」

「それより、交換して欲しいんだけれど」


 交換?


「ほう、何とかな?」

「“ミカエルの情熱”を“ウリエルの情熱”と交換で」

「うむ、構いませんよ」


 メルシュとおじいさんが差し出したランタンの中身、赤味の白い炎と黄色味の白い炎が入れ替わる。


「そんな事が可能とは知らなかったな」


 ジュリーが驚いている。


「オリジナルにあった仕組みかどうか判らないけれど、これで大天使の情熱が四種類揃ったね♪」


 随分と機嫌が良さそうなメルシュ。


「アークエンジェルをレギオンに加えるつもりか?」

「大天使のサブ職業はもうクマムが持ってるから、無理に契約する必要も無いよ」


 メルシュもジュリーも、当初からアークエンジェルは眼中に無さそうだったけれど。


「この四つのアイテム、どうやらオリジナルには無かった使い道があるみたいだよ」



            ★



「ウララさん?」


 夜、“神秘の館”のエントランスに佇む彼女を見つけ、声を掛けた。


「コセさん……」


 今朝も見た、申し訳なさそうな顔。


 彼女の横に移動し、手すりに手を掛ける。


「ホイップと、何かあったんですか?」


 どれだけ考えても、彼女達の関係性が俺には分からなかった。



「…………ホイップは――私の弟です」



「………………へ?」


 予想外も予想外も予想外過ぎて、何を言われたのか数秒間理解できなかった。


「弟って……三十六ステージで亡くなった……」

「はい。突発クエストで亡くなった私の双子の弟……ラキです」


 …………ぉぉーーん?


「そっか、レンと同じように……隠れNPCになっててもおかしくないのか」


 なんで、わざわざ男を女の子の隠れNPCにしたのかは理解できないけれど。


「じゃあ、彼がレギオンを離れたのって……」

「カミングアウトされたのは四日前。本人も、明かそうかとても迷っていたみたいなんですけれど……アルファ・ドラコニアンとの戦いを見て、神代文字を刻める武器が必要だと思ったらしくて……」


 遺言機能で、弟さんのアイテム一式をウララさんが持っていたのかな?


「でも私……受け止めきれなくて」

「弟さんが、女の子になってしまった事がですか?」

    

 確かに、自分の弟が突然女になってたらな。


「違うんです……私が受け止めきれなかったのは……ラキに、元々女の子になりたいって願望があったって言われた方で……」


 …………んんー?


「じゃあ弟さんは、女の身体になってしまったこと……」

「むしろ喜んでました」


 ……。


「でも私、ラキがそんな風に思ってたなんて知らなくて……双子だったのに」


 二卵性だったのだろうか?


「……もしかして、ホイップが去って行ったのは自分のせいだと?」


 だとすれば、ウララさんの申し訳なさそうな態度にも納得がいく。


「はい……ラキからしたら、自分の事を何も知らない人の所に行きたかったからとか、あの男の人を気に入ったからとかもあるんでしょうけれど……生きていてくれた事があんなに嬉しかったはずなのに、どうして私は……」


 愛していたつもりだったのに、たった一つ前提条件が変わってしまった事により、その愛情を疑わざるおえなくなってしまった……か。


「……ウララの人生は、もう俺の物だから」


 ウララさんが、ゆっくりと俺の顔を見詰めてくる。


「だから、ウララの愛は……誰にも渡さない」


 背の低い彼女を抱え上げ、俺にだけ意識を向けさせる。


「コセ……さん?」



「誰よりも何よりも――俺を愛せ、ウララ」



 キザっぽいとは思いつつ、できる限り飾らない言葉で、想いが正しく伝わるように……彼女に。


挿絵(By みてみん)


「――うん!」


 涙を流す彼女に唇を奪われ、強く首に腕を回される。


 身体を擦りつけながら何度もキスの逢瀬を繰り返され、彼女の離れたくないという感情を汲み取った俺は……そのままウララを、寝室に連れ込んだ。



             ★



「“超同調”」


 翌日の早朝、軽く素振りを終えたあと、ルイーサとジュリーと一緒にある実験を開始。



「祈り灯せ――――“雄偉なる双聖女の極光聖剣”」



 左手に、荘厳にして厳粛なる聖剣を顕現。



「聞き届けよ――――“雄偉なる明星は救済を願いて”」



 右手に、橙色の翼を模した麗剣を顕現。


挿絵(By みてみん)


「せ、成功だな」

「他者の力を借りたSSランクの同時装備」


 ジュリーとルイーサとの剣の精製がすんなり成功したため、思いつきで二本同時に挑戦してみたけれど……キツい。


 右手と左手で全然違う作業を、同時にさせられているような感覚だ。


「まずは」


 天雷の雷を無数に飛ばし、次に天井から降り注がせる!


 今度はオーロラのカーテンを生成。カーテンを的に雷の槍を――ッ!!


「――ハアッハアッ、ハアッハアッ!!」


「大丈夫か、コセ!!」


 二人が駆け寄ってきてくれる。


「うん、大丈夫。ハアハア、ハアハア」

「同時精製までは問題ないが、剣の能力を同時に振るおうとすると、一気に負担が増すって感じか?」


 ジュリーの冷静な分析。


「ああ。剣の精製自体は一人でする時よりも負担が少ないけれど、剣を維持しながら戦いにまで思考を割くと、共同作業で生み出した剣の方が負担が大きい」


 一人で生み出す大地竜の剣と精霊の剣は、生み出すまでの負担が重い分、使用時の負担はだいぶ軽い気がする。


 自分だけの延長線上にある剣と、他者との道の先にある剣……か。


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