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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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607.天使の砦

「……」

「どったの、レンちん? 私のこと見て?」


 クレーレに気付かれる。


「なんで年上の私に対して、他の奴等みたいに姉ってつけねぇんだよ」

「レンちんはレンちんって感じだから♪」


 コイツ!


「……悪いな。お前のその胸の不調、私のせいなんだろ?」


 微かに覚えている……頭に靄が掛かって、ボーッとした感覚で、妙な衝動に突き動かされながら人を殺しまくっていた頃の記憶。


 おかしくなった私を、実質二度も殺した男との激闘も……どこか、夢の中でVRゲームをしていたような感覚で。


「でも、おかげで私、もの凄く強い武器が手に入るかもだって! 凄くない?」

「お前なぁ……」


 吞気なこと抜かしやがって。


「まあ、ギオジィとの子供をちゃんと産めるのかなって心配は……あるけれどねぇ」

「……子供か」


 ヘルシングの隠れNPCになった私は、このゲームを終わらせた時……どうなっちまうんだろう。


 私と同じように隠れNPCとして蘇ったホイップの奴はその辺、どう考えていたのやら。


「居なくなる前に……訊いておけば良かったぜ」

「レンさん、そろそろ行きましょう」


 イチカが呼びに来た。


「おう」


 まあ、なるようにしかならねーか。



●●●



「皆が消えましたね」


 安全エリアから全員で、白い煉瓦で整備された道を進んでいたにも関わらず、忽然とパーティーメンバー以外の面子が消えてしまう。


「出て来たぞ、()使()()()()()


 エルザさんの言うとおり、かなりの数の気配があっという間に迫ってきた!


「子供のような天使に、白く燃える騎士?」

「弓を持っている子供が“キューピッド”、燃える騎士が“エンジェルナイツ”です」


 ヘラーシャさんが教えてくれる。


「最初に矢が来るぞ!」


 レンさんの言葉通り、“キューピッド”達が一斉に矢を放ってきた。


「“鞭化”!」


 “背負いし十字架はこの手の中に”を鞭となし、全て弾き飛ばして見せる!


 すかさず“炸裂ナイフの皮鞘”から抜いたナイフを投擲――先頭の“エンジェルナイツ”のヘルムを貫くと同時に炸裂、内側からバラバラに弾け飛ぶ。


 “投擲貫通”と炸裂するナイフの組み合わせは、非常に凶悪。


 ただ、このような小手先の戦術は、アルファ・ドラコニアンのような圧倒的強者には通用しないだろう。


「下がって、イチカさん!」


 背後からチトセさんの声が聞こえてきたと思いきや、黒い液体が弧を描いて“エンジェルナイツ”へと落下。広範囲に飛び散って――天使達が悶え苦しみだし、あっという間に消滅していった。


「今のは……」

「もしかして、“不浄液”?」

「そうです」


 フミノさんの予想を肯定するチトセさん。


「天使にも有効なのですね」

「効果があるタイプと無いタイプが居るらしいけれどね」


 チトセさんが、グレネードランチャータイプの薬液銃を持ちながらにこやかに教えてくれる。


 その間、エルザさんが私のように槍を鞭にして矢を弾き、ヘラーシャさんが“薬液マシンガン”で“キューピッド”を倒していた。


 こちらも“不浄液”の効果は覿面で、虫のようにボタボタと落ちては消滅していく。


「薬液か。前のレギオンにも使っている奴はいたけれど、あくまで補助的な武器としてだったな。それに、“溶解液”以外は全然使ってなかったなような」

「薬液とモンスターの相性が判らなければ、まあ、そうなるだろうな」


 レンさんのかつての仲間を、フォローする形となるエルザさん。


「ライブラリシステムが追加された今ならともかく、それ以前に一から薬液とモンスターの相性を探っている余裕なんて無かったでしょうね」


 薬液を専門武器にしているチトセさんが言うと、説得力がある。


「ライブラリね。そんな便利な物、もっと早く追加して欲しかったぜ」


 考えてみれば、レンさんは大規模アップデートの時からずっとおかしくなっていたから、ヘルシングとして蘇るまでのおよそ一ヶ月間、ライブラリを利用した事は無かったんですね。


「そろそろ行きましょう」


 フミノさんに促されるまま、私達は天使が守る白煉瓦の砦へと歩を進める。



●●●



『み……ごと……』


 見るからに“エンジェルナイツ”よりも格上であろう燃える甲冑騎士が振るう得物、黄金の薔薇の意匠がある槍をトゥスカが踏みつけ、その隙にセリーヌが頭に武術を見舞い。問題なく仕留めた。


「門番の割には呆気なかったな」

「“パワー”程度では、こんなものかと」


 ナターシャからみると、弱くて当然らしい。



○“ゴルドローズスピア”を手に入れました。



「名前からして、クマムが持っている剣の槍バージョンか」

「ゴルドローズシリーズは天使の武器っていう設定があるから、このタイミングで出て来るのは当然だね」


 メルシュが教えてくれる。


「砦が……」


 閉ざされていた砦の門が開くと同時に、砦の一部が変形して、上と下への階段が現れた。


 同時に、砦上部を覆っていた白い光熱のカーテンも消える。



○好きなルートを選んで進めます。


上階:上位天使の領域

砦内:天使の軍勢の駐屯地

下階:天使の宝物庫



「上が一番ヤバそうだな」

「どうなのですか、メルシュ?」

「見たとおり、上は強力な天使。砦内は天使や天使に与するモンスターの集団。下は、天使に関連するアイテムが主に手に入るよ」


 集団と宝物庫は、どっちにしろ天使関連のアイテムが手に入る気がするけれど……。


「メルシュ、一番面倒なルートは?」

「厄介という意味では、宝物庫かな」

「よし、下に行こう」

「よろしいのですか、ユウダイ様?」


 ナターシャの、珍しい不安げな表情。


「ああ……何かマズいの?」

「いえ……」


 この微妙な反応、ナターシャにしては本当に珍しい。


「確かに、メルシュにしてはあまり詳細を話そうとしない気がしますね」


 トゥスカの発言に、困ったように笑みを浮かべるメルシュ。


「今回はぶっちゃけ、どのルートを通った方が良いとか無いからね。天使系統のビルドはほぼクマムだけだし、天使系統のアイテム以外はランダム要素が強いし」

「だから、今回は自主性に任せたと? どのルートにどんな敵が出るかくらいは、教えてくれても良かったんじゃないか?」

「その辺は一通りNPC組に話してあるから、安心して」


 やっぱり、わざと情報を伏せてる時があるよな、コイツ。


「まあ、良いか。そろそろ進もう」


 五人で、下へと続く階段を下りていく。


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