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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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606.三つのSSランク

「まだ昼食には早いし、私の話を先にしても構わないか?」

「モモカ、バニラ、私達は上で遊んでましょうか」

「やだ!」

「ワウ!」


 ヨシノが連れ出そうとするも、モモカとバニラに反抗されてしまう。


「まあ、そんなヤバい話はしないから」


 エトラはそう言うも、あまり信用できない。


「ええと……」

「おいで、モモカ、バニラ」

「うん!」

「ワン!」


 無理に連れ出すくらいなら注意を俺に引いておこうと、二人を膝に座らせる。


「すみません」


 二人を連れ出せなかったのが申し訳なさそうなヨシノ。


「大丈夫」


 二人を抱える腕の指を適当に動かして、二人の興味を引かせる。


「始めて良いよ、エトラ」


 ナターシャ達によって飲み物が用意され、使用人NPC以外の全員が席に着いたタイミングでメルシュが促した。


「まず、私は元々《真竜王国》というレギオンに所属していたわけだが、《真竜王国》は六十四ステージに根をはっていた三大レギオンと呼ばれる物の一つだ」


 まだこの世界に来たばかりの頃、ジュリーが警戒していた三つの軍団。


「だが、あることが切っ掛けでパワーバランスが崩れ……《真竜王国》は解散することになった」

「王国が消えた時期的に、大型アップデートが理由だよね?」


 メルシュの指摘。


「ああ。アップデート後に起きた突発クエスト・SSランクを奪い合えには、三つのSSランクが用意されていた」

「一回のクエストで、SSランクが三つ……」


 それだけの報酬が用意されていたとなると、クエストの難易度のエグさは凄まじい物だったろうな。


「SSランクは早い者勝ちで……《真竜王国》のメンバーは誰も、SSランクを手に入れる事が出来なかったんだ」

「エトラって、神代文字をある程度使いこなせてるよね? 他のレギオンもそうだったの?」


 コトリからの疑問。


「……《真竜王国》の半数が神代文字を一応操れていた。お前達に比べれば大したことはなかったが、だからこそ、他のレギオンより数で劣る私達でも、なんとか奴等に対抗出来ていたんだ」


 つまり、他二つは大して神代文字を使っていなかったということか。


「そのパワーバランスが、SSランクによって崩れたと」


 俺の言葉に顔を顰めるエトラ。


「男の戦士を中心とした《ハイベルセルクズ》が二つ、最大所属人数を誇る《聖王騎士団》が一つ手に入れ……《ハイベルセルクズ》で起きた内乱に私達が巻き込まれる形で戦闘に発展。私は命からがら都市から脱出した直後に……モンスターに殺された」


 レギオン同士のイザコザの話が出て来たから不思議に思っていたけれど、エトラが人に殺されていない者だけを生き返らせられる第二大規模突発クエストの対象だったのは、そういう経緯か。


「その三つのSSランクは、どういう物だったんだ?」


 ジュリーからの質問。


「私が見たのは一つだけだ。無数の金属製の牙を操る全身鎧。ライブラリには、“ファング・ザ・ビースト”という名前で表記されている」


 ライブラリを開いて確認……陸上生物をモチーフにした全身甲冑って所か。


 でもこれ、なんの生物なんだろう? 狼にも虎にも、獅子や狐にも見えるような。


「獣人専用のSSランクやね。隠れNPCでなければ、うちでも装備できたんかね~」


 タマモがわざとらしく残念がる。


「他二つだが、《聖王騎士団》が手に入れたのは剣で、レギオンリーダーが所持しているらしい。もう一つに関しては、《ハイベルセルクズ》の誰が持っていて、どんな形状なのかも不明だ」


「メルシュ、その二つのレギオンは今も健在なのですか?」


 トゥスカの問い。


「数日前に四十ステージで確認した限りでは、どっちも残ってるね」


 最悪、六十四ステージで三つのSSランク所持者と敵対する可能性があるのか……。


「私が言いたかったのは以上だ」


 椅子に腰を下ろすエトラ。


 SSランクの情報と脅威度を伝えたかったって所だろうか。


「SSランクか……今うちにあるのは、実質三つよね?」


 ナオの確認。


「“名も無き英霊の劍”と“亡者の怨嗟が還る場所”に、“マッスルハート”。でもぶっちゃけ、“マッスルハート”って他のSSランクに比べて製圧力が無いよね?」


 クレーレの言葉。


「前者二つはコセとタマ専用だし……SSランク、手に入れられる機会があるなら手に入れたいな」

「今更だけれど、《獣人解放軍》から“ブラッディーコレクション”を返して貰う?」


 メグミの言葉に触発される形で出たリンピョンの提案に、空気が少し張り詰める。特にエレジーの辺りが。


「武器との相性を考えると、有効活用できそうなのはユイだが……嫌なんだよな?」

「うん……アレは要らない」


 フェルナンダの言葉を肯定するユイ。


「“エンバーミング・クライシス”も、手に入れたとしても使用したくはないですね」


 実際に目にしたトゥスカの発言。


「死体を操るのはな」


 さすがに悪趣味が過ぎる。


「て言っても、コセやタマ、アテルの例外を除けば、全部で13種だけなんでしょう?」

「現在のSSランクの総数は21ですよ、アヤナ様」


 ナターシャの指摘に、気付いていなかった何人かが少し焦り出す。


「タマのが14番目でコセのが15番目、アテルのが16番目じゃなかったか?」

「結構前から17、18の欄は出ていました。ちなみに21番目は“マッスルハート”、前回の突発クエストの景品です」


 ザッカルの言葉に指摘するザッカルのメイド、アルーシャ。


「その“マッスルハート”のように、今後も新しいSSランクの追加は起きるでしょう」

「実装案内の際に、オッペンハイマーと名乗った者がそう言っていましたね」


 チトセのエルフメイドであるヘラーシャの言葉を、ヒビキが補足。


「それじゃあ、いつどこで複数のSSランク使いに襲われてもおかしくないって事っすか……おっかないっすねー」


 吞気そうに語る山猫獣人のサンヤだけれど、言っていることは事の深刻さを理解しているからこその内容。


「ユウダイが居るときなら、この前のトゥスカみたいに、SSランクを借りたり出来るんだけれどね」

「いやマリナ、あれは“連携装備”が適用される俺とトゥスカだからこそで」

「……あ」


 自分は対象外と気付いた途端、悔しそうにトゥスカを睨みだした。


 また口論が始まるかと思ってトゥスカを見ると……むしろ申し訳なさそうにしていた。なんか意外だな。


 まあ、マリナの希望を叶える方法が無いわけでもないんだけれど……。


「とはいえ、私達はほぼ確実にもう一つ、SSランクを手に入れられると思いますよ」


 チトセの驚きの指摘に彼女の視線を追うと、そこに居たのは……。


「……へ、私?」


 雪豹獣人のクレーレだった。


「クレーレが盾を取り込んだって話し、やっぱり本当なのか?」


「うん。苦しみ方も、コセくんの時によく似てたよ」

「私も、第二大規模突発クエストの時、クレーレ様の苦しみ方はコセ様そっくりだったように思います」


 俺が左腕に何かを取り込んだ際、どんな風に苦しんでいるのか知っているチトセとクオリア、二人からの指摘。


「クレーレは、あれからなんともないのか?」

「うん……ちょっと胸の所に変な感じはするけれど、その二回以外で痛かったり苦しくなったこと無いし」


 あの激痛をクレーレが今後も味わうと思うと……不憫でならない。


「ジュリー、クレーレのこと……よろしくな」

「ああ、任せろ」


 痛み止めの薬はジュリーとサキ、ドワーフメイドのエリーシャにも渡してあるはずだけれど……大丈夫かな。


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