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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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601.化かし合い

「ハイパワーキック!!」


 馬獣人のケルフェの蹴りで、最後の狸が茂みの中に消える。


「ようやく片付いたか」


 山に入ってからというもの、狸モンスターの集団に襲われること六度目。


「さっきから狸しか出ないわね。これはやっぱり……」

「もう山頂だし、そろそろ本命が来て良い頃だと思うんだけれど」


 マリナとコトリは、私達の前に現れる超強力な妖怪モンスターを特定していると見える。


「“隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)”か。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「うん? どういう意味だ、ホイップ?」


 ていうかアイツ、やたらモンスターや武器に詳しいような……。


「――来るよ、エトラ!」


 コトリの低い声に、咄嗟に視線の先を追う。


『――我が眷族を傷つけた罪、万死に値する』


 人間のような体型に和装。そして凶悪そうな狸の面……アレが“隠神刑部”か。


『行け!!』


 奴の背後から現れたのは、奴よりも小柄な二足歩行の和装狸。


 短刀を手に、十体以上がバラバラに襲いかかって来た!


「“猪古令糖魔法”――チョコレートバイパー!!」


 甘ったるい匂いと渋い香ばしさと共に、茶色い液体龍が私の前に躍り出る!?


「どういうつもりだ、ホイップ?」


 私が、この程度の奴等に遅れを取るとでも?


「“隠神刑部”は火耐性が低い! コイツらは無限湧きだから、エトラはボスを狙って!」


 かつてのボスみたいな言葉を並べやがって。


「相性の良い私に、さっさと奴を倒せということか!」


 良いだろう、大物取りは燃えるからな!


「ホーン族のエトラが、貴様の相手をしてやろう! “熱視線”!!」


 目を狙って、“万物よ灰燼に帰せ”の刃先から光線を放つ。


 簡単に避けられたうえ、短刀を袖から滑り出し――二刀流で攻めてきた!?


「面白い――装備セット2」


挿絵(By みてみん)


 武器を爪の黒短剣である“万能のドラゴネイルエッジ”と、拳を覆うガード付きの灰色短剣である“灰燼のナックルブレイド”に、逆手状態で持ち替える。


「ハハハハハ!!」


 正面からの刃物と刃物の応酬――久し振りに好みの戦いだ!!


「エトラ、遊んでいる場合じゃないよ! ――キャ!!」


 コトリが狸共に蹴り飛ばされた!?


「何やってんだ、アイツ? ……おいおい」


 私以外の全員が押され気味じゃないか!


 コトリ達の相手は目の前の奴より弱いはずだが、強い個よりも弱い集団の方が厄介な事もあるか。


「仕方ないな! “烈火竜技”――レッカドラゴンファング!!」


 右腕に竜属性の火花が混じった牙群を生成――奴の右腕を刈り取る!


「氷河拳!!」


 “氷河武術”をナックルブレイドのガード部分で放ち、顔面の右を殴打と同時に凍結。


「距離を取るか――なら! 装備セット1」


 得物を、“万物よ灰燼に帰せ”に持ち直す。


「“灰燼魔法”――アッシュバレット!!」


 とにかく手数で動きを制限すると同時に、向こうの出方を見る。


 昔、初見の相手に全力で魔法を放って痛い目に合ったからな。


「あ?」

 

 奴の姿がぶれたと思ったら、攻撃がすり抜けた?


「カウンターを狙わないとダメなタイプか?」


『“八百八狸(はっぴゃくやたぬき)”』


 舞い落ちてきた葉っぱが、次々と狸に――クソ!!


「――――アッシュブラスター!!」


 詠唱短略による威力低下を補うため、この危機を脱するため――“万物よ灰燼に帰せ”に()()()()()()()()()()()!!


 灰色の本流が青白い光により増強され、無数の狸共を纏めて消し炭にする!!


「ハアハア、ハアハア……」


 咄嗟だったから、限界以上に文字を使いすぎた。


『――滅せよ』


 背後に、木槌を手にした“隠神刑部”が――


「“殴打撃”!!」

「“穿孔脚”!!」


 コトリの金棒が“隠神刑部”の頭をちぎり飛ばすと同時に、ケルフェの蹴りが脇腹を貫通していた。


『お……のれ……』


 光になって消えていく狸男。


「お前ら、押され気味だったんじゃ……」


「うん? 本気でそう思ってたの?」

「コトリの猿芝居を見た時は、さすがに気付かれたと思ってたんですけれどね」

「猿芝居ってなんなんだよ、ケルフェ!」

「キャ! とか、絶対にコトリからは出ない声でしょう?」

「は? 私だって、たまにはそういう可愛いこと言うし!」


「いや、なんでわざわざそんな……」


「――やっぱり使えたんだね、神代文字」


「……ぁ」


 しまった、今まで隠してたのに!


「……いつから疑ってた、コトリ」

「最初に文字を使えないって言われた時から」

「そんなに前から!?」

「知らない割には食いついてこなかったし、エトラの前で文字の優位性を披露しても全然反応しないし、結構バレバレだったよ?」

「刻めるのは九文字というコトリの予想も当たってましたね」

「ザッカルさんが十二文字刻んだときは、驚きを隠せてなかったもんね」


 鋭いとは思っていたが、こうまで見透かされていたとは。


「わざわざ私に神代文字を使わせるために、こんな茶番を仕組んだのか?」

「ホイップが上手い具合に誘導してくれたから、助かったよ」


 アイツが“鵺”か“牛鬼”が良かったとか言ってたのは、その方が状況を整えやすかったって事か。


「で、なんで隠してたの?」


 マリナに少し睨まれる。


「……前のレギオンメンバーと合流した時に、お前らの寝首を掻けるようにするためだ」


 《龍意のケンシ》メンバーの大多数と交流した今なら、必要なかったかもなとは思うが。


「馬鹿っぽいって思ってたのに、意外としたたかね」

「おい、マリナ……で、私をどうするつもりだ?」


 コトリの奴隷である以上、私は運命を委ねることしかできない。

 

「別に、どうもしないよ」

「は?」

「むしろ、神代文字が使えるって判って心強いくらいだよ」


 握手を求めてくるコトリ。


「……器が広いな」


 まるでボスみたいだ。



○“隠神刑部のスキルカード”を手に入れました。




◇◇◇



『ヒィィぃ!! た、助け――』


 神隠しの先で現れたボサボサ黒髪禿げ頭が、妙に人間臭い態度で命乞いしていたが、コセは問答無用で両断した。


 ……強い。


 SSランクを使用した時の強さには隔絶した差を感じていたが、今回は“サムシンググレートソード”とかいう剣一本で終始圧倒。


 ユイを見ていると感じる、戦闘に対する人外感をアイツからも垣間見た。


 景色が歪み、外へ。


「“九尾狐狸”、ルイーサかジュリーが“殺生石”を手に入れていれば良いんだけれど」

「隠れNPC、九尾を手に入れる手段でしたっけ。そんなに強いの?」


 トゥスカがメルシュに尋ねる。


「獣人専用アイテムを魔法使いが装備できる事に加え、多くの武具を尻尾に装備する能力があるから、強力な武器があればあるほど強くなるんだよね」


「サトミのパーティーにも、そろそろNPCが居ないとキツいだろうしな」


 コセが剣を背中に収める……ちょっと格好良かったな、今の。


「どうした、セリーヌ? ボーッとして」

「はぁ!? 俺様がボーッとなんてするはずねぇーし! お前が死んだら俺様も死ぬから、気が気じゃなかっただけだし!」

「ご、ごめん……」


 一々落ち込むな! 私が悪いみたいでしょう!


「……セリーヌ様は、もう少し素直になられた方が良いのでは?」

「は?」


 ナターシャに妙な事を言われる。


「そろそろボス部屋へ行こうか。万が一だけれど、向こうは他のプレーヤーに襲われる可能性もあるし」

「だな」


 釈然としないまま、私達はポータルで転移をした。



○“悪路王の毛抜形太刀”を手に入れました。



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