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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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596.アッコロカムイ

「ようやく海が見えてきましたね」


 さざ波と磯の匂いに気分が高揚したのか、パーティーを離れて先行してしまう。


「スゥーシャ、危ないよ」


 空を泳ぎ飛ぶ私を、タマが追いかけて来てくれる。


「ごめんね、磯の香りが珍しくて」


 私が住んでいた城があったのは海の真ん中だから、海草などはほとんど無かった。


 そもそも、まともに城周辺の海域外から出しては貰えなかったっけ。


 キジナ姉さんは、お構いなしに遠泳してたみたいだけれど。


「私には、ちょっと匂いがキツいです」


 嗅覚が鋭いからか、そもそも馴染みが無いためか、タマにはキツいみたい。


「“怪魚の港”に比べたら、なんてことないけど……」


 私と出会う前に立ち寄った町か……ちょっと良いな。


 もっともっと、タマとの思い出をたくさん作りたいもん。


「オーイ、スゥーシャ! タマ! 海から何か来るぞ!!」


 エルフのレリーフェさんの危機感を煽る叫びに、すぐさま状況を確認!


「海が盛り上がって……なにあれ?」

「巨大な……タコ?」


 赤紫色の水で出来たような巨大タコが胴体を覗かせ、海から海岸へと上陸していく!?


「例の超強力な妖怪モンスターです! 気を付けてください!!」


 ドライアドの隠れNPC、ヨシノさんの声。


 その次の瞬間、タコの脚が私達を捕らえようと高速で近付いてきた!!


「見るからに水耐性が高そうな敵――私が前に出るから、スゥーシャは援護をお願い!」


「うん、任せて!」


 タマと二人で倒せば、良い思い出になるかも!



●●●



「“蒼穹魔法”――アジュアダウンバースト!!」


 “蒼天を駆け抜けろ”で飛行しながらスゥーシャから距離を取ったのち、手始めに蒼の風圧を天から叩き付ける!


「陸に上がった事が仇になりましたね」


 海の中なら、蒼穹特化の私が打てる手はあまり無かった。


「く!!」


 あまりの巨体に、重風圧の範囲外だった水の脚が襲い来る!


「相手が水の塊である以上、私が与えられる最高の有効打は――“チャランケカムイ”!!」


 青紫色のオーラを纏い、飛行速度を強化!


「“蒼穹魔法”――アジュアバレット!!」


 カムイと六文字分の神代の力で強化された蒼の散弾により、四本のタコ脚を滅する。


 やっぱり、水で出来ているせいかすぐに再生していく。


 でも今は、一時的にでも邪魔な脚を排除できれば良い!


「――“万雷乱電槍”」


 轟き煌めく雷を蒼穹のランスに纏わせ、荒れ狂う雷の槍と成す!


「“魔眼”」


 黒い眼球を額に生み出し、襲い来る残りの水脚を見切りながら――接近し続ける!!


「――はあああッ!!」


 タコの頭に万雷のランスを突き立て、全身に雷を流し込む!


『ゥォォォ……』

「ク! “逢魔槍術”――オミナスチャージ!!」


 埒が明かないと判断し、水の身体の内部へと突っ込んでいく!!


 ――突入した瞬間、身体が重く!?


 突撃の勢いが水圧によって急速に失われていく中で、万雷の槍の雷が私にまで牙を向き始める!


「グぅ!!」


 マズい……このままじゃ。


 ――“蒼天を駆け抜けろ”に、今の私には考えられない力が宿る!?


《――タマちゃん!!》


 これ、スゥーシャの力が共鳴して、想いが伝わってきてるんだ。


 戦うんだ、最後まで――コセ様のように諦めず――――全てを駆け穿つ!!


 “()()()()()()穿()()”に宿った十二文字とスゥーシャの力を暴発させて、水のタコの巨体を駆け穿ち抜く!!


「“滑走”――“神代の騎槍”!!」


 駆け穿った勢いそのままに海面を滑走し、ランスのスラスターからの“噴射”で器用に方向転換――再突撃!!


「“万雷乱電槍”――“蒼穹槍術”、アジュアチャージ!!」


 再び万雷の槍を纏わせ、“神代の騎槍”により洗練された力で――今度は数本の脚ごと、アッサリと穿ち抜けた。


挿絵(By みてみん)


「タマちゃんをいじめないで!!」


 直後に六つの銛がタコに突き刺さり、内側から暴発。


 ……なんとか、二人で倒し切れた。


「オーイ、二人ともー!」


「ユリカさんが呼んでる。行こう、スゥーシャ」

「うん……なんか怖いけれど」


 その後、レリーフェさんとユリカさん、ヨシノさんに、二人で無茶した事を凄く叱られました……。



○“アッコロカムイ”のサブ職業を手に入れました。




●●●



「あったぞ、チトセ」


 山越えルートに生える樹、上部の幹を剥いで、中にあった物を投げ渡すヴァンパイアロードのエルザ。


「ヘラーシャ、これって何か判る? レンちゃんが持ってるのと同じに見えるんだけれど」

「おお、“アームリングリング”ですね。“リングリング”の腕輪版で、人数分あっても良いとされるアイテムです」

「そうなんだ。やったね、エルザ」

「見つけられたのはたまたまさ」


 降りてくるエルザ。


「まさか、木の中にアイテムがあるとはな」

「あれ? レンちゃんは知らなかったの?」


 フミノに突っ込まれる。


「ああ。このゲームのオリジナルをプレイした奴が、レギオンに一人しか居なかったからな。そいつも、二十ステージくらいまでプレイしてすぐにアンインストールしたらしい」


 あんまり町や村で情報収集とかしてなかったしな、私は。


「情報があるかどうかでかなり損してしまう物なのですね、ゲームって」


 お嬢様育ちらしいイチカの発言。


「お前って、今までろくにゲームしたことねーの?」

「ボードゲームやトランプならありますよ? テレビゲームはやったこと無いですけど」


「……本当に居るんだな、ガチのお嬢様育ちって」

「私の周りは、アニメも漫画も触れた事が無いという人は多かったですよ? うちは子供向けのアニメや漫画はオーケーでしたけれど」


 アニメも漫画も無い世界なんて、私からしたら地獄だな。


「二人とも、チトセさん達が行っちゃうわよ?」


 フミノが知らせてくれる。


「ああ、やべ――」


 山が大きく揺れ、木々が折れ倒れる音が響く。


「当たりを引いたようだぞ、レン」


 エルザの奴が、わざわざ私の名前を呼ぶ。


「で、アレはなんなんだ?」


 そこらの大樹よりも遥かに巨大な骸骨の巨人が……屹立する。


「山越えルートに出る最強の妖怪モンスター、“餓者髑髏(がしゃどくろ)”だ」

「へー!」


 前回は関所ルートを通ったからなのか、こんな巨大な奴は出てこなかった。


「よし、アレは私の獲物だ! 手を出すんじゃねぇぞ! ――“邪獣化”!!」


 黒い靄を纏う半獣となり、生前からの相棒である“邪悪に全てをぶっ壊せ”という名の巨斧と、ヘルシングの隠れNPC専用Sランクである“怪物狩りの戦黒斧”を握る!


挿絵(By みてみん)


『久し振りに――思いっきり暴れてヤルゼェェェッ!!』


 アルファ・ドラコニアンとトゥスカ達の戦いを見てから、ずっと身体がウズウズしてたんだからなぁぁ!!



●●●



「冒険者の皆さんなら、通行料さえ払えば通れますよ」



○一人100000(十万)G、500000(五十)万G払いますか?



 パーティーリーダーである私が、纏めて全員分払わなければいけないらしい。


「だが断る」

「では、お引き取りください」

「それも断る!」

「――不法入国者だ! 引っ捕らえろ!!」


 周りに突っ立っていた兵士達が、こちらに槍を向けてきた。


「行くぞ、ルイーサ!」

「おう!」


 フェルナンダの判断が下りたところで、関所内部へと駆け出す!


「追え! 絶対に入国させるな!」


 追ってくる兵士を倒さないように逃げ、関所半ばまで来た時――視界が歪んだ!


「……成功したんですか、フェルナンダさん?」


 ノーザンが確認を取る。


「周りの景色が変わった時点で、転移は成功だ」


 地味な木材の関所内部と違い、ここの木材は異様に黒っぽい灰色。


「金を払わず、兵士を一体も始末しないで無理矢理進んだ場合に起きる現象、神隠しって名前なんだっけ?」


 アヤナが訊いてきた。


「そうだ。そして、神隠しに遭った場合、脱出するには、その領域の主を倒す必要がある」


「それにしても、不思議な場所だな」


 屋内なのに、和風の庭園のように白い石が敷き詰められている。


 私達が居るのは、その白い石の地面に降りないように張り巡らされた木造の橋廊下。


 橋廊下は二階、三階の分もあるようで、広範囲が吹き抜けのようになっているため、その迷路のような異様さがよく伝わってくる。


「ここって、お城の中って事で良いのかしら?」


 アヤナが、攻略情報を持ってるフェルナンダに尋ねた。


「ああ。だが、狙っていた“九尾狐狸”が出る領域とは特徴が一致しないな」

「ここ……もしかして」


 アオイの様子がおかしい。


「どうしたの、アオイ?」

「……ここ、“黒昼の村”で受けた試練の場所と一緒なの」


 Sランクスキルを手に入れられる試練か。


 ――小さな振動が伝わってきて、次第に大きくなっていく。


「来るよ……アイツが」


「アオイさんが受けた試練の内容って……」


 ノーザンの質問の答え合わせをするように、角からソレが顔を覗かせた。



「このお城の中を四分間逃げろって奴だよ、アレからね」



 五メートルを超える巨大な、黒灰色の肌を持つ鬼の顔が。


おまけ


怪物狩りの戦黒斧

挿絵(By みてみん)


邪悪に全てをぶっ壊せ

挿絵(By みてみん)

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