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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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595.七人ミサキ

「ふー……どうしよっかな」


 夕食後、メルシュが今日の戦利品を食堂のテーブルに並べて思案している。


「なにを悩んでるんだ、メルシュ?」


 メルシュがこんなにも悩んでいるのは珍しい。


「マスターが今日倒して手に入れた、“サトリのスキルカード”がね」

「どんなスキルなんだ?」

「“超同調”っていう物なんだけれど」

「じゃあ、リンピョンの“同調”の上位互換か」

「まあそうなんだけれど、ちょっと違うかな。“同調”は味方に対して用いる能力なんだけれど、“超同調”には相手と“同調”する能力もあるから……」

「それって、相手の考えが手に取るように解る、という事ですか?」


 皿洗いを終えたトゥスカが尋ねてきた。


「その逆もしかりでね。私としては味方にだけ使って欲しいんだけれど、もしアルファ・ドラコニアンや低周波人間に対して使ったら、人格にどんな悪影響が出るか判んないからね」


 何気に怖いこと言うな。


「一番良いのは、サキに渡すことかな。モンスター同士の連携を向上させられるだろうし」

「……俺が貰って良いか?」

「良いけれど……絶対に、味方だけに使用してよ?」


 メルシュからカードを受け取る。


「ああ、そうする」


 これがあればバニラとの意思疎通が今までより上手くできるだろうし、何かと便利そうだ。


「じゃあ今夜、さっそく私達で試してみましょうか、ご主人様♡」

「うん?」


 その日の夜の充足感は、間違いなく今までで最高だった。



●●●



「……山超えルート、思っていたよりキツい」


 私以外のメンバー、ユイちゃん、シレイア、ザッカル、アルーシャは難なく、急で凸凹だらけの坂を登っていく。


「もうへばったのかよ、カナ?」

「そういうわけじゃないけれど……最近、足場の悪い所を歩いてなかったから」


挿絵(By みてみん)


 模擬レギオン戦の時は、足場の悪い場所は“シュバルツバルトブルーム”でひとっ飛びしてたし。


「ザッカルと違って、大半の面子は攻略自体久し振りだからね~」


 シレイアが庇ってくれる。


「安全エリアではありませんが、今のうちに軽く休憩を取りますか?」

「へ? さすがに早すぎんだろ。まだ山を登り始めてから二、三十分程度だぞ?」


 せっかくのアルーシャの提案に、ザッカルがやんわりと反対。


「悪くない判断だと思うけれどね。そろそろ、超強力な妖怪モンスターが出て来てもおかしくないし」

「それって……アレのこと?」


 先頭のユイちゃんが指し示した先に居たのは、傘を被った白装束の一団。


 数は七で、お遍路さんみたいな格好をしていた。


「“七人ミサキ”。近接戦に強い奴等だ」


 シレイアの雰囲気から、油断できない相手だと悟る。


「名前から察するに、七人で一体のモンスターってことかしら?」

「正解です。短時間で全員倒さないと、時間経過で復活してしまいます」


 私の質問に、アルーシャが答えてくれた。


「なら、俺が一気に仕留めてやる――“万悪穿ち”!!」


 ザッカルが投げた黒の剣槍が、無数に分裂!


「……うそ」

「……マジかよ」


 手にしていた木杖から抜いた仕込み刀で、直撃する槍だけを弾き去なした!?


 しかも、完全に戦闘体勢に入ったのか、“七人ミサキ”全員が散会。木々の中に姿を晦ます!


「互いをカバーし合いながら、着実に一体ずつ仕留めろ。奴らの連携能力はかなりのもんだ」


 この起伏の激しい狭い場所で、白兵戦に優れた集団とやり合わなきゃいけないのか。


「――ザッカル!」


 彼女の背後から音もなく刺突を見舞うお遍路さんに、黒の大鎌で斬り掛かる事で下がらせ――別の奴が、鎌を振り抜いた私を狙って――


「ソーラーレイ!!」


 アルーシャが魔法で迎撃――すると同時に、自分に襲いかかってきていた個体の攻撃をモーニングスターで防いでいた。


 その隙を突くように、更にもう一体がアルーシャの胴を薙ぎに来て――ザッカルに首を刎ねられる。


「く!!」


 息つく暇もなく次々と斬り掛かって来ては、即座に茂みに姿を消す“七人ミサキ”。


 纏めて吹き飛ばそうとすれば、次の瞬間には首を飛ばされそう。


 攻撃を、次の攻撃に繋げるように動かないと!!


「――“闇隠れ”」


 影に潜ることで背後からの刺突を回避すると同時に、身体を捻りながら両足を切断。影からの出現と同時に、ザッカルを狙うお遍路の

胴を両断。


 私を狙ってきたもう一体の攻撃をわざと受け止め、アルーシャが脇をモーニングスターで打ち据えた。


「終わったみたいだね」


 私が両足を切断していた奴の首を刎ね、緊張を解くように伝えてくれるシレイア。


「お前ら、もう三体も仕留めたのか?」


 私達が仕留めたのは三体。シレイアがトドメを刺したのを入れても四体。


「まあ、片付けたのはアタシのマスターだけれどね」

「シレイアさんが止めてくれたから、私も一撃で仕留められたんだよ」


 ユイちゃんの謙遜。


 やっぱりユイちゃんの戦闘能力は、レギオンの中でも頭一つ抜けている。


 模擬レギオン戦の時だって、SSランク持ち相手に正面から一番粘っていたのはユイちゃんだし。


「……」

「な、なに、ユイちゃん?」


 なんで私をジッと見てくるの?


「……やっぱり、カナさんには暗殺者の才能がありそう」

「あ、暗殺者?」


 なんか、肩をガッシリと掴まれた!?


「戦い方……教える」


 ……ええー。



○“七人ミサキの指輪”を手に入れました。




●●●



「……アレが関所か」


 別れ道から真ん中の関所ルートを進んだ私達の目の前に、山と山を塞ぐように建つ木造の壁が見えてきた。


「入り口は……このまま進めば良いみたいだな」


 フェルナンダの言う通り、入り口らしき場所は、私達が今歩いている慣らされた道の先にしか見当たらない。


「まだ結構あるわね、距離」


 アヤナがそう口にすると、見窄らしい格好の子鬼が草木の隙間から出てくる。


「むう、姉ちゃんがフラグを立てるから」

「フラグでもなんでもなかったでしょうが!」

「コイツらは数が多いうえに、小さいから狙いづらいぞ! “四重詠唱”」


 フェルナンダが、“精霊魔法”でサラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノームの四精霊を呼び出す。


「結構すばしっこいわね!」


 などと言いつつ、私やアオイ、ノーザンと変わらない戦火を上げていくアヤナ。


「“ヒトダマ”まで出てきたか」

「僕が対処します――“水流弾”!」


 ノーザンが水の玉を器用に操り、無駄なく火の玉を消化していく。


「フー、思いのほか手こずったな」

「さっさと関所に入っちゃいましょう。入り口は安全エリアだろうし」 


 アオイが死ぬ前なら愚痴りそうだった場面で、自ら建設的な意見を出すアヤナ。


「なに笑ってんのよ、ルイーサ」

「いや、良い意味で変わったなと。改めて思ってな」

「つい最近大人の階段登った奴が、なに言ってんだかー」

「確かに」


 アヤナとアオイに突っ込まれる。


「き、気付いてたのか」

「でもこれで、遠慮なくコセを“忍者屋敷”に呼べるね」


 アオイが変な事を言い出す!


「その時は、フェルナンダとノーザンも混ざる?」

「フム……考えておこう」


 フェルナンダの意外な返事!


「でも今、“忍者屋敷”にはイチカさん達も住んでるんですよね?」


 ノーザンのもっともな指摘。


「……追い出すか」

「コラコラ。アホみたいな事をぬかすな、アヤナ」


 そもそも、“忍者屋敷”の家主は私なんだぞ。


「さすがに冗談よ、半分は」

「半分って言ったよ、コイツ」


 などと話しながら、私達は五人で、関所入り口へと足を進める。


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