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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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594.ドワーフメイドのエリーシャ

「……あれ、なぁーに?」


 私達の前に現れた一つ目の馬の集団を見て、不気味がっているモモカ。


「“野馬(のうま)”という妖怪モンスターだ」

「強くはありませんけど、非常に凶暴です」


 私とテイマーのサキで簡潔に説明する。


「アレ……嫌い」


 動物大好きのモモカでも、アレは受け入れがたいのか。


「私が対処いたしますので、皆様はお下がりください」


 銀髪癖っ毛の美女メイドが、私達の前に出る。


挿絵(By みてみん)


 私のバトルメイドである、ドワーフ族設定のエリーシャが。


「よろしく、エリーシャ」

「頑張れ、エリーシャ!」


「お任せください、ジュリー様。モモカお嬢様」


 表情に乏しい淡々とした対応。


 これといった性格設定をしなかったからか、コセのナターシャのように事務的というか機械的。


「オールセット1――“超高速”」


 “深海王の真青鎧”の効果により、高速移動しながら“パチモンのトールハンマー”を振るって次々と単眼の馬を排除していくエリーシャ。


「さすがですね、ドワーフのパワーは」

「ええ」


 ダンジョン・ザ・チョイスのゲームには、ドワーフはパワーと耐久力が伸びやすい設定が元々あった。


 この世界にドワーフは実在しているみたいだけれど、ダンジョン・ザ・チョイスのオリジナルにどこまで性質が近いのかは解らない。


挿絵(By みてみん)


「片付きました。オールセット2」


 巨大黄金ハンマーだけでなく、青い全身鎧まで解除するエリーシャ。


 見た目は異世界人と変わらない彼女だけれど、ドワーフのためか敏捷力や跳躍力が低い。


 そのため、重装備状態だと歩くスピードが遅い彼女は、攻略中でも鎧や重量武器を外して貰っている。


 “超高速”であるていど速度は補えるとはいえ、歩いて進んでいるだけの状態で能力を使わせるのもね。


「ありがとう、エリーシャ! 倒してくれて!」

「それが私の役割ですから」


 モモカに対しては、少しだけ柔らかい笑顔を返すエリーシャ。


「進みましょう、マスター。油断していると逢魔が時に間に合わなくなるかも」

「そうね」


 サキの言葉にそう返す。


 エリーシャにはモモカを守るのを優先するように命じているけれど……NPCはNPCだと割り切るべきという私の考え方は、間違っているのだろうか。



●●●



「ハァー……」


 先頭を歩くコトリが、ため息を発しながら白い金棒を振り、ペシッという子気味良い音を鳴らす。


「どうしたんだ、コトリ?」


 コトリの奴隷となっているホーン族の褐色美女が尋ねる。


「いやさ、結局一度もギルマスに勝てなかったなって、模擬レギオン戦」

「……ですね」


 わかりやすく気落ちするコトリと、馬獣人のケルフェ……今、ケルフェが振った盾からパン! ていう音が。


「もしかして、例の賭けの話?」


 バレンタインの隠れNPC、ホイップがジャンプしながら訊いてきた。


 その後、ズザザという音と共に小さな土煙。


「そうそう……勝って、エッチなことして貰おうと思ってたのにさ」

「いや、もっと普通に告白すれば良いでしょ」


 あんま増えて欲しくはないけれどと思いつつ、鏡の盾で鬱陶しい何かを打ち払う。


「ていうけれどさー、二人きりになれそうなタイミングとか全然無いし……私より綺麗で可愛い人ばっかだし……」

「マリナは良いですよね。既にギルマスと……本当に羨ましい……」


 コトリとケルフェ……私が“始まりの村”に到着する前に起きた突発クエストの際に、ユウダイに惚れたらしい二人。


 あ、今、エトラが鋭利な灰色の杖で何か叩き落とした。


「私にはよく分からないな、色恋に浮かれる感覚というのは」


「もしかして、エトラって恋したこと無いの?」

「あん? ……そうかもな」


 本当に興味無さそうなエトラ……ちょっと安心。


「それにしても、少し前から全然モンスターが出てきませんね」

「本当だな」


「……ケルフェとエトラ、気付いてなかったの?」


 ホイップが、割と本気で驚き気味に尋ねた。


「「なにが」です?」

「さっきから襲われてるよ、私達」

「「へ?」」


 エトラはともかく、真面目なケルフェまで気付いていなかったとは……まあ、ケルフェって結構ぬけてるけど。


「さすがに、そろそろ鬱陶しいわね」


 硝子の刀身と石の柄で構成された山剣、“キヤイウメアイ”に三文字刻み――強化された動体視力と感知能力で、高速で飛び回るモンスターを刺し貫く!


『ぅ……ぁ』


「なんですか、コレ? 小人?」

「“一寸法師”っていう、妖怪モンスターだね」


 ケルフェの疑問に答えたのは、ホイップ。


「一寸法師って妖怪なの? 昔話に出る奴でしょ?」


 コトリが尋ねる。


「私も疑問に思って調べたんだけれど、書物によっては妖怪扱いみたい。ちなみに、妖怪として紹介している方の一寸法師は、一般的に知られている一寸法師の物語よりもかなり外道に描かれてるね」


「外道って、どんな風に?」

「えーと、最後に結婚するお姫様を追い詰めるように画策して、傷付いたお姫様を自分が慰めることで気を引かせようとする……みたいな?」


「……普通にクズじゃん」

「クズですね」

「クズね」

「クズだな」

「まあ……控えめに言ってもクズだね」


 思いがけず皆の心が一つになったところで、針を持ちながらジタバタしていた一寸法師が弾け、光に変わった。


「人を騙すとか、普通に最低だよね」

「よく男の人には、結果良ければ全て良しという輩がいますが、その過程で振り回される人達の事をもう少し考えて欲しいです」

「解る。漫画とかアニメの影響なのか知らないけれど、下手な格好つけが逆に女の子の好感度を下げてるって気付けよって話よ」


 媚びるように上辺だけ優しくされたって、バカな女子しか騙されないっての……つい、コトリとケルフェの愚痴に乗っかっちゃった。


 まあ、こういうところで二人とは気が合うなって思えるんだけれど……同じ男を好きになっているわけだし。


「その点、ギルマスは変に下手に出たりしないよね。締めるところは締めるけれど横暴じゃないし」

「男性の中には、横暴な振る舞いが漢らしい姿、女性に格好よく見える姿だと勘違いしている人が多すぎます!」

「むしろ、そういうところで話すだけ無駄だって悟って、ろくに相手しなくなっていくのにね」


 私の父親も、同じ理由で家族の誰からも相手にされていなかったんだろうな。無駄に亭主関白気質だったし。


 相手して欲しくてマウント取ったり自慢話されたって、ますます関わりたくなくなるだけだってのに。


 もう少し共感能力があれば、それくらいの心情、察せられるはずなんだけれど。


「……どうしたの、二人とも?」


 私達から目を背けているホイップとエルザに尋ねる。


「「べ、別に……」」


「あ、あそこって安全エリアじゃない?」


 コトリの視線の先に、三つの分かれ道が見える。



○以下から一つのルートを選んで進んでください。


  右:山越えルート

真ん中:関所ルート

  左:海岸ルート



「今日はここまでで良いんだっけ?」


 エトラの質問。


「ルート選択が出たなら、メルシュが言っていた今日の最終地点はここのはず」

「そろそろ日も傾きそうだし、ちょうど良かったね。さすがメルシュ参謀だよ♪」

「やはり、参謀はギルマスの隣に居るのに相応しい方です!」

 

 コトリとケルフェからのこのメルシュへの厚い信頼は、いったい何なんだろう?


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