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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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593.妖怪モンスター

『キシャァァァァ!!』


「“神秘武術”――ミスティックハンマー!!」


 首を伸ばして攻撃してきた“ろくろ首”の頭を、“倍打突きのザグナル”で吹き飛ばすセリーヌ……容赦ないな。


「“紅蓮魔法”、クリムゾンカノン」


 飛び回る布の妖怪、“いったんもめん”を燃やし尽くすメルシュ。


「聞いていた通り、妖怪タイプのモンスターが出るんだな」


 パーティーメンバーである犬獣人のトゥスカ、ワイズマンのメルシュ、NPCメイドのナターシャ、フェアリーのセリーヌの前で呟く。


「妖怪タイプですか……あまり共通点があるように見えませんが?」


 トゥスカには、妖怪の概念が無いらしい。


 まあ、日本の妖怪の概念て、外国だと悪魔や精霊に置き換えられるしな。


 そもそも、妖精と精霊の区別なんかも曖昧だったりするみたいだし。


「俺がいた国モチーフのモンスターを、一括りにして妖怪って呼称してるってところかな」

「はあ……」


 いまいちピンときていない様子のトゥスカ。


「ボロ屋が見えるようになってから、鬼じゃなくてその……妖怪ってのばかり出るようになったな」


 セリーヌの指摘通り、安全エリアの茶屋でパーティー事に別れてからというもの、“ぬりかべ”や“子泣きじじい”といった妖怪モンスターしか出てきていない。


「進めば進むほど、妙に不気味になっていきますね」

「……だな」


 俺もトゥスカと同じで、崩れた和風の長屋? がどんどん黒ずんでたり障子の破け具合が酷くなっていくさまに、薄ら寒い物を感じ始めていた。


「そろそろ強力な妖怪モンスターが出てくるから、気を付けてね」


 メルシュがそう言うのを待っていたかのように、巨軀の不気味な猿が姿を現す。


「メルシュ、アレか?」

「ランダムで出てくる強力な妖怪モンスターの一体、“サトリ”だね」

「それって確か、一対一じゃ勝つのが難しいっていう……」

「うん、搦め手が必要なタイプだね。マスター、引きつけ役をお願い。ナターシャが仕留め役で」

「よし」

「畏まりました、メルシュ様」


 恭しく返事をするナターシャを尻目に、“サムシンググレートソード”を構えて突っ込む!


『キキキ!』

「本当に捉えられない!」


 高速で剣を何度も振るうも、余裕で躱される。


 “サトリ”、相手の行動を読んで避ける事に優れた、倒すのが困難なモンスター。


「なら」


 わざと攻撃の手を緩め、反撃を誘う。


「ダメか」


 カウンター狙いなのを見透かしたのか、逆に距離を取られた。


「“大地魔法”、グランドクエイク!」


 地面を揺らし、相手の行動を制限。


「ハイパワースラッシャー!!」


 “飛剣術”で斬撃を飛ばすも、ボロ屋の屋根へと跳んで回避されてしまう!?


「これ、魔法のような面攻撃でもないと、ろくにダメージも与えられないな」


 さほど強くないのに、倒すのに労力を必要とする敵……ゲームじゃなくても嫌な敵筆頭タイプだな。


「“偽命の腕”」


 ボロ屋を素材にしたかのような腕が奴の足下の屋根から現れ、拘束に成功する。


「今です、ユウダイ様!」

「――ハイパワーブレイク!!」

『ギギーー!?』


 動けなくなった“サトリ”は、呆気なく上半身を吹き飛ばして絶命した。


「地味に面倒な奴だったな。助かったよ、ナターシャ」

「お役に立てて何よりです、ユウダイ様」


 いつも通り慇懃な態度のナターシャだが、頭を撫でると少し柔らかい笑みを浮かべてくれた。


挿絵(By みてみん)


 うん、可愛い。


「イチャイチャしてないで、とっとと行くぞ。夜になるとマズいんだろ?」


 セリーヌの言葉に、我に返る。


「日暮れになると、理不尽なくらい妖怪モンスターが出てきちゃうからね。まあ、時間には余裕があるけれど」


 まだ昼前だしな。


「久々のステージ攻略、油断せずに慣らしていくとするか」


 俺が四十ステージに到着してから、丸一ヶ月ぶりの攻略だからな。さっさと勘を取り戻さないと。

 


●●●



「“邪悪斧術”――ウィケッドスラッシュ!!」


 空飛ぶ龍、“螭”を横に綺麗に捌いて仕留める、ヘルシングの隠れNPC、レンちゃん。


「強力な妖怪モンスターって言っても、やっぱこんなもんか」


 つまらなそうに得物の大斧を担ぐレンちゃん。


「それはそうだろう。お前は、対モンスター特化の隠れNPCなんだからな」


 指摘したのは、ヴァンパイアロードの隠れNPC、エルザちゃん。


「“怪物狩り”のスキルでしたっけ?」

「スキルだけではないですよ、チトセ様。ヘルシングの専用装備のほとんどが、モンスターに対してかなりの攻撃補正を持つ代物です!」


 赤青メイドエルフのヘラーシャちゃんが、妙に得意げに解説。


「フン! 前にここを通った時だって、楽勝だったっての。相手は螭じゃなかったけれど……」

「そういえば、螭がかなり強いって、メルシュちゃんがさっき説明してたっけ」


 茶屋の前でしてくれた注意事項を思い出す。


「空中を蛇のような動きで飛び回るうえ、硬い鱗と高い属性耐性まで備えているからな。レンがさっさと仕留めたから、さほど厄介には感じられないんだろうが」


 同じ隠れNPCでも、レンちゃんと違って純粋なNPCであるエルザちゃんの方が。正確な情報を理解して説明してくれる。


 NPCが一体でもパーティーに居てくれる有り難さを、実感せずにはいられませんね。


「イチカちゃんなら、ユニークスキルで仕留められちゃいそうですけれど」


 私の言葉に彼女の様子を伺う。


「……へ? ああ、はい……そうですね」


 注意力が散漫気味のイチカちゃん。


 やっぱり、三日前の突発クエストの時にアルファ・ドラコニアンに言われた事……気にしているのかな。



●●●



「姉ちゃん……大丈夫?」

「だだ、だ、大丈夫よ……」


 アオイの後ろに隠れるように怯えているアヤナ。


「最近は頼りになるようになったと思っていたのに、妖怪に対してはこの様か」


 マクスウェルの隠れNPCであるフェルナンダが、わざとらしく呆れてみせる。


「だだ、だって恐いんだもん! 仕方ないでしょう!」


「まあ、確かにアレは、かなり不気味ではあるが……」


 赤ん坊の死体を抱いた半裸の女。


 肌は異様に白く、生気を感じさせない様は、妖怪というよりも幽霊。


「“姑獲鳥(うぶめ)”だったか? 見た目が人間に近いせいか、下手な異形より恐いな」


 日本のホラー映画って、海外のと比べてもかなり恐いんだよな。なんでだろう?


『子供を寄こせぇぇぇッ!!』


 赤子の死体を投げ捨て、羽毛をまき散らしながらいきなり急接近してくる“姑獲鳥”!!


「“超高速”――“極寒断ち”」


 盾を翳した私の横を猛スピードで通り過ぎ、幽霊女を青い斧で一刀両断する……牛獣人のノーザン。


「一撃で倒せましたか。呆気なかったですね」

「ノーザン……アンタ、恐くなかったの?」


 アヤナの指摘に、私も同意する。


 私ですら、あの異様な迫力で急接近してきた際にはゾッとしてしまった。


「盗賊狩りをしていたときとか、アレよりも酷い死体を散々見てますから」

「そ、そうなのか……」


 死体が勝手に消えてくれるダンジョン・ザ・チョイスの仕様に、私達は地味に助けられているのかもしれないな……。


できたてホヤホヤ投稿!

少しのあいだ書き溜める予定です。続きはもう暫くお待ちください。

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