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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第16章 醜悪よりも邪悪な悪魔たち

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592.旅立ちの邂逅

「ガウ?」


 “明けの鬼京”を北東門から出て暫く、獣のごとく振る舞うバニラが虚空を……窺っている?


「モモカ、バニラはどうしたんだ?」


 バニラと意識を通わせる事ができる七歳児、モモカに尋ねた。


「えっと……懐かしい匂いがするって」

「匂い?」


《そのまま、黙して進むが良い。俺はまだ、奴等に気付かれるわけにはいかん》


 この声、アルファ・ドラコニアンのように頭に直接……でも、奴等のような野蛮さは感じない。


「ご主人様……これってもしかして」

「トゥスカにも聞こえたのか?」

「ジュリーも?」

「ねぇ、今なんか声が」


 ルイーサとマリナにも聞こえている……簡易アセンションを経験したメンバーにだけ。


「ケルフェ、なんか聞こえた?」

「いえ、私にはなにも」


 コトリ達を始め、全員がトゥスカ達を訝しみ始めている。


「気を引き締めろ。モンスターも来た」


 ちょうど良く、山の斜面から鬼のモンスター達が下ってきてくれた。


 さっきの声は、おそらく星獣の声。


 デルタから姿を隠しているという星の意思の化身、その一体。


 気付かぬ振りが吉だろう。


挿絵(By みてみん)



◇◇◇



『昨日はお疲れだったね、ピーター』

『お、オッペンハイマー様にご足労させてしまい、も、申し訳ございません!』


 わざわざ私の管理室に来るなんて……。


『わ、私は……処分されるのでしょうか……』


 結局、三日前の突発クエストでは《龍意のケンシ》の人間を一人も殺せなかった。


 しかも、アルファ・ドラコニアン四体を失ったばかりか、二人の女を……覚醒させてしまったかもしれない。


『何を言っているんだい、ピーター? 君は、《龍意のケンシ》の同盟相手である《ザ・フェミニスターズ》に多大な死傷者を出し、解散に追い込んだじゃないか』

『そ、それはまあ……』


 てっきり、コセ一派の誰かを殺さなければダメだとばかり。


 でも、これで……惨たらしい死に方をせずに済む。


 薬物実験、悦楽による人体欠損、ミンチにされて獣の餌……暗殺を除けば、とにかく苦しめて殺すのがDSの流儀。



『まあ、シーカー辺りから、なにやら不満の声があったのも事実だがね』



 ――やはり、問題が無いわけではないのか!?


『そちらは統括者としての権限で一応黙らせたから、安心したまえ』


 シーカーを……黙らせた? たかがダンジョン・ザ・チョイスの一管理者の分際で?


『そんなことより、その少々騒いでいる者達を黙らせる良い案があるのだが……協力してくれないか、ピーター』


『そ、そういう事であれば是非!』


 よく分からないけれど、それで私の身の安全が保証されるのであれば!!


『さて、エリカ君には大仕事を頼まねば。ククククク!』


 オッペンハイマー……いったい何を企んでいるのやら。



●●●



「“斬切武装”」


 発光する竹刀、”只ひたすら打ち込むのみ”に青い、切断特化の光の刀身を纏わせる。


「――“六連瞬足”」


 六度の連続高速歩法を用い、擦れ違い様に――具足を着込んだ鬼三体を切り刻む。


挿絵(By みてみん)


「ワーオ、鬼武者をアッサリ。さすがだね、フミノ」


 ワイズマンのNPC、メルシュに褒められる。


「これくらい、大したことはありませんよ」


 剣道をやっていたのもあって、人型を相手にするのには慣れている。


 だから私は、人型から大きく逸脱した物にほど対処が遅れがち。


 でなければ、あの白いワームに貪り喰われずに済んだはず。


「アイツ、結構強かったのに……凄ーい」


 ボーッとした顔で褒めてくれたのは、ユイちゃん。


「ユイ先生は、さっきの鬼と戦った事が?」


 質問したのは、ピンクの戦巫女って感じの格好のヒビキ……髪も服もピンクなのに、何故か凛々しい格好いい人。


「うん……伝統の山村? てところで」

「そんな序盤の村で? ああ、突発クエストですか」

「うん、結構強かったイメージ」


 二人の会話。


「そんな序盤で戦ってたら、ユイ先生でも強敵と感じるわけですね」

「お前ら、そろそろ安全エリアとはいえ、油断してるんじゃねぇ」


 バカでかい黒斧を肩に掛けた元人間、ヘルシングのレンちゃんが、不器用に注意を促してきた。


「ありがとね、レンちゃん……そう言えば、ヒビキさんとレンちゃんは、このステージも経験済みなんだっけ?」

「おい、フミノ。なんでヒビキにはさん付けで、ヒビキより年上の私にはちゃん付けなんだよ!」

「見た目と雰囲気でだよ?」

「身も蓋もねぇな、このアマ!」


 背がちっちゃいから、怒っても可愛くしか見えない。


 むしろ、精神年齢は今の姿の方が合ってるのかも。


「何を騒いでいるんだ?」

「ヒッ!?」


 相変わらず、コセさんが近付くと反射的に怯えるのですよね、レンちゃんは。


「ご、ごめん……」

「き、気にすんなし……」


 もう結構な期間を一緒に行動しているのに、この二人の関係性は全然変わらない。


 まあ、一度は受け取るのを拒んだ生前の装備を使っている辺り、頭では許してはいるのでしょうけれど。


「そう言えば、次の安全エリアの先は例の……」

「ああ、お前のお気に入りの場所か」


 ヒビキさんのお気に入り?


「別にお気に入りというわけでは……」

「嘘つけ。あそこで手に入れたスキルや装備を、ずっと愛用してんじゃん」

「そういう意味では、確かにお気に入りですけれど」


 ヒビキさんのお気に入りって事は……炎や和風の武具が色々手に入るとか?



●●●



「……うまー」


 安全エリアにあった茶屋で、串団子というのを食べていた。


 最近は美味しい物ばっかり食ってるから、ちょっと……腹回りが心配になってきたかもしれん。


「にしても……」


 茶屋の……安全エリアのすぐ横に広がっているのは、寂れた村。


 建物は“明けの鬼京”の物に似ているが、二階建てはないし、華やかな色も使われていないようだ。


 というか、穴だらけだったり半壊してたりで、人が住めるとは思えないほどボロボロの建物しか無いだろ、これ。


「この先はパーティーごとの行動になるから、しっかり聞いてね」


 メルシュが、五十人以上の前で喋りだす。


「さすがに狭いな」

「セリーヌ、お話、聞きにいかないの?」


 声を掛けてきたのは、私よりも背の小さい少女、モモカ。


「ガウガウ」


 退化した獣人みたいなガキ、バニラはいつもモモカと一緒だな。


「俺様はメルシュと同じパーティーだからな。わざわざ聞く必要は無い」


 なのに俺様まで聞きに行ったら、本当に聞かなきゃいけない者共の邪魔になってしまうだろうが。


「スッゴーい! セリーヌって頭が良いんだね。私くらい小っこいのに!」

「お前な……」


 俺様はフェアリー族だから、他種族と比べて平均身長が小さいってのに。


「何度も言ってるが、俺様はフェアリー族の中では大きい方なんだぞ?」


 だから、フェアリーの男には全然モテなかったけれどな!


「俺様はこれ以上大きくなれない。そういう種族なんだ!」


 だからこそ……私の種族はデルタ共に狙われて……。


「……お前たちも気を付けるんだぞ、モモカ、バニラ」


 モモカの頭とバニラの顎を撫でてやる。


「セリーヌって、優しいよね♪」

「は、ハァ? 俺様が優しい?」


 俺様は……私は、全然優しくなんてない。


挿絵(By みてみん)


 私は只の…………偽善者だ。


おまけ

挿絵(By みてみん)

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