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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第15章 覚醒の両翼

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587.極光の聖女の覚醒

《が……ぁ……》


「あんな状態になっても、まだ生きてるのか」


 人間と同じ臓器があるのかどうか知らないが、心臓や肺やらが吹っ飛んでいるような状態だろうに。


「ルイーサ、やったね」

「いや、最後まで油断するな」


 珍しく浮かれ気味のアオイに、無情と思いつつも気持ちを律するように促す。


 光に変わるまでは油断するな……私達がこれまでの経験で、何度も身に染みたはずの考え。


「良いわ、私が終わらせてあげる。“光線魔法”」

《しゅ、”瞬間再生”》


 ――身体が一瞬で元通りに!!


「ハハ……そう言えば、前の奴も使ってたか」


 あの時は更にパワーアップまでしてたし……あの頃のコセ、いや私達……よく勝てたな。


「……最悪なんだけど」

「今回ばかりは、姉ちゃんに同意……」


 二人の消耗は私以上。


「アヤナとアオイは、少し休め」


挿絵(By みてみん)


 時間を稼ぐだけなら、私だけでもなんとかなるはずだ。


「ちょ、本気で言ってんの!?」

「……五分で良いから」


 やはり、アオイの方が冷静だな。


「ああ、任せろ――オールセット2」


 “古代王の聖剣”から、もっとも慣れ親しんだ双聖女の白銀剣に変え、“高位騎士の聖鎧”に”ジェットウィングユニット”を装着した状態へ。


 ”ヴリルの聖骸盾”と聖剣に十二文字ずつ刻み――本気の戦闘態勢へ。


「“後光輪”」


 クレーレとトゥスカがゴーストシップで手に入れたというSランク、黄金の放射線状の金属棒が、同じく輪っかで括られた“降臨の後光輪”を背中側に浮かせる。


()()()()()でもしているつもりか? ――ノールディックぅぅぅッッ!!!》


 剣と槍を再び“連結”させ、自身の身体を浮かせて高速突撃してきた!?


「“浮遊”――“後光噴射”!!」


 ”降臨の後光輪”の二つの効果を使用。身体を浮かせたのち――後光の推力を利用して突撃!!


《死ねよぉぉッ!!》

「――“超噴射”」


 剣に不可視の力を纏わせているのを感知し、巨剣の薙ぎ払いを、鎧左脚に取り付けられた“ジェットウィングユニット”のスラスターを吹かし――右回転するように回避!! アルファ・ドラコニアンとすれ違う!


 “浮遊”と“後光噴射”と合わせて姿勢を制御し、即座に背後から斬り掛かった!!


《しゃらくせぇぇーーッ!!》


 ただ左腕を薙ぎ払っただけで、激しい衝撃波に襲われる!!


《――くたばりやがれぇぇ!!!》


 空中上段からの振り下ろし!!


「“守護武術”――ガーディアンランパート!!」


 最近世話になりっぱなしの障壁を展開――神代の力を流し込み、半ばまで斬り込まれた所でなんとか奴の剣を止める!


《ウザってぇ!! “分離”》


 三度剣と槍に分け、槍だけを手に障壁を上から回り込んで来た!!


「――“猪突猛進”ッ!!」


 スラスターを最大まで吹かし、気を抜いたアルファ・ドラコニアンへと全速力で激突――空へと一気に昇っていく!


《こ、こんな事をした所でぇッ!!》


 急上昇による気圧の変化、圧力、ドラコニアンの念による多方向からの衝撃波を無視し――ぶち込んだ盾を翳したまま昇り続けるッ!!


《――――ギャァぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!?》


 見えない天井に直撃――尚も押し込み続けていく!!


 もう誰も――アヤナとアオイを奪わせない!!


 ――――身体の左右から、さっきまでとは比べ物にならない衝撃波を……叩き付けられた。


《う、動かなければこっちのもんなんだよ》


 意図せず、急上昇し続けることで衝撃波による直撃を……避けていたのか。


 身体から……力が……。


「――ガハッ!!!?」


 ――お腹に何かが激突して、重しのように私の身体を急降下させていく!!?


《只の落下死なんて面白くねぇ――俺に蹴り潰されて、グチャグチャの肉塊になれぇぇぇぇッッ!!!》


 このままだと、地面に落下と同時に踏み潰されるッ!!


《お前を殺した後はあの女二人――そして、同胞を殺したあの男を、この爪で切り刻んでやるよぉぉッッッ!!!》



         《――させない》



 ――疲労と熱で火照った身体に、清らかな冷水が流れ込んでくるかのように……痛みが消えていく。


《――な!?》


 無様に地面へと墜落した、アルファ・ドラコニアン。


 なんて事は無い。衝突の直前に、この身体を分解して地上で再構成しただけの話し。


《ここ……》


 だいぶ、祭壇に近付いてしまったようだ。


《そ、装備セット1》


 またも巨剣槍を手にするアルファ・ドラコニアン。


《……すぐに終わらせる》


 彩藍色の文字を、盾と剣に十五文字ずつ刻む。


挿絵(By みてみん)


《何が五次元の力だ……ぶっ殺してやるッ!!》


 奴の怯えが、手に取るように解る。


《可哀想な子》

《……は?》

《低周波の存在は、本来腰抜けだ。自分よりも弱い存在にしか強気になれず、他者の優しさに付け込んで操り、搾取する事しかできない――どうしようもない出来損ない》


 それが、低周波存在へと堕ちた者達の本質。


 一部、()()()()()()()()()…………目の前のは違うが。


《シーカーによって作られた戦闘種族であるお前達は、戦闘に不要なものは可能な限り除外されている》


 怯えはしても、感情に任せて逃走するという選択肢を取れない。


 コイツらの不退転は、決して勇気じゃない。


 肥大して植え付けられた、くだらない自尊心への執着。ただそれだけでしかないのだ。


《俺を……見下すんじゃねぇ》


《強力で逃げない、都合の良い便利な()()()()。それがお前達の真実だ》


《――――奴隷はお前らだ、ノルディックぅぅぅぅぅぅッッ!!!!》


 豪快な振りの巨剣を避けながら、ゆっくりと聖盾に“ヴリルの祈りの聖剣”を収める。


《“抜剣”》


 十五文字を刻んだ聖剣を、万象の輝きと共に――聖者の骸より引き抜く。


《ぅわああああああああッッ!! 死ね! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇ!!!》


 巨剣と共に叩き付けられる衝撃波を、こちらも念で生み出した衝撃波で相殺。


《その念能力は本来、お前達如き、未熟な精神性存在が使用して良い力ではない》


《――死んでくれよぉおぉぉッッ!!!!》


 翳した左手の平から念を放ち、奴の念能力を纏う巨剣を――奴の身体を完全に止める。


《劣化コピーはお前達、低周波存在のお家芸だな》


《ぁぁぁぁぁああああッッッ!!!  黙れぇぇ!! 黙れぇぇぇぇぇぇッッ!!!》


 それは私のセリフだ。



《“極光剣術”――オーロラブレイド》



 最強の劣等種の身体を両断――一息の間にその身を切り刻んだ。


《お前達の声は、酷く耳障りだ》


おまけ

挿絵(By みてみん)

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