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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第15章 覚醒の両翼

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582.ドシラソファミレド

「クオリア、先に牢へ行ってろ」


 赤いトカゲ男が、猛スピードでこの祭壇上を目指してくる。


「分かりました」


 クオリアが祭壇裏へと翼を広げて落ちていくと同時に、この手のシャシュカと黒甲脚――“終わらぬ苦悩を噛み締めて”と“終わらぬ苦悩を踏み締めて”に十二文字刻む。


「あれが、噂のアルファ・ドラコニアンか?」


 相対する事が、ここまで恐ろしいと思ったのは初めてかもしれない。


《“回転”》


 赤いメタリックレッドの甲手、その先端の銀の鉤爪部分、というより鋭利な機械手を回転させ、真っ向から――身体がいきなり動かなく!?


 ――身体の表面を覆うなにかを、神代の力で弾き飛ばす!!


《なに!?》


 なんとか紙一重で回避。


 奴の能力について聞いていなかったら、今の一瞬で死んでいたかもしれない。


「“空遊滑脱”」


 空を自在に行けるユニークスキルを行使――トカゲ男の容赦ない連撃を避け続ける!


《ちょこざいな!!》


 一瞬だけ身体を止められて、回避のタイミングをずらされた!!


《死ね!!》

「――”逆さ立ち”!!」


 自分への重力の作用を逆転させ、上空へと足から落ちていく!


《本当に小賢しい!》


 “空遊滑脱”の力で、空中に着地。


「“神代の脚”――“瞬足”!!」


 青白い光脚を纏わせてから“逆さ立ち”を解除――自ら高速で蹴り落ちる!!


「逃げるなよ、トカゲ野郎!!」

《抜かしたな、ノルディック風情が!!》


 コイツらの思考は、拗らせた差別主義者だという。


 なら、見下す相手に挑発されれば――



「――“業王脚”ッ!!」



 黒いエネルギーを“神代の脚”に纏わせ、奴の超能力の力場を――力尽くで突き破る!!


 祭壇最上部にて神代と業の力が炸裂し、夕焼けの空を震わせた!


「ハアハア……あの野郎!!」


 防ぎきれないと見るや、祭壇裏に飛んで逃げやがった!



●●●



「ハアハア。粗方片付きましたね、ウララ様」

「うん。でもそれより……」


 ウララ様の視線の先に居たのは、ユリカとレリーフェと……ムキムキの赤いリザードマン。


「ユリカちゃんに、下がって見てろって言われたけれど……」

「劣勢ですね」


 黒い角ハンマーみたいな物が乱立した、鈍器なのか大刀なのかもよく分からない武器を振り回し、二人を圧倒している。


「――“煉獄鳥”!!」


 神代の力を纏った紫炎の鳥をユリカが放つも、スキルでもなんでもない何かによって防ぎきるレッドリザードマン。


「クソ!!」

《ぬるいぞ、小娘!!》


 鈍器の一振りが、ユリカに直撃し――



「“風光弓術”――――シーニックブレイズ!!」



 ゴツイ黒き大弓、“アルテミスの魔弓”から放たれた風と光の暴威は、レッドリザードマンの不可視の力を突き破って――派手に吹き飛ばした!


「二人とも、大丈夫ですか!」


 ユリカを中心に駆けよる。


「ハアーハアー、ハアーハアー」

「無茶しすぎだ、ユリカ。あんな化け物を一人で止めるなんて」

「生半可な攻撃じゃ通じないって知ってるからよ。ていうか、まだ全員、ハアハア、気をぬく――」


 ――砂煙から、倒したはずのレッドリザードマンがユリカさんを狙った!!


「――“不可侵条約”!!」


 ウララ様が、ユニークスキルで浮かせた“締結の聖典”で、攻撃を防いでくれる!!


《ああ、やりづれぇぜ》


 空気が揺らぎ――見えない何かに全員が弾き飛ばされた!!


「ぜ、全員、神代文字の力を全身に! アイツには、神代の力無しじゃ対抗できない!」


 そういうユリカは、最初からずっと十二文字を刻んでいて……既に限界が近そう。


「“神の丘の獅子”――“失墜の怨嗟”!!」


 ウララ様が“神の丘の獅子伝”から呼び出した有翼蛇尾の獅子に、”堕とされし外典”の効果と“目眩く禁断を読み耽り”に刻まれた九つの神代文字で強化を施した!


「全員、下がって!」

《デカい猫がよ》


 獅子が正面から突っ込むも、見えない何かに止められてしまう!


「この!!」


 銀のクロスボウ、“アジャストメント・ギミック・クロスボウ”から“魔力矢”を連続で撃つ!


《ああ、ウザってぇぜ!!》


「“災禍の霧の宝珠”!!」


 レリーフェが紫の宝玉を呼び出し、緑の弓から文字の力を流し込んで、宝玉が生み出す紫霧を強化。


「“風光弓術”」


 文字が刻まれた弓、鏃の先端に紫霧を集中させている?


《お前ら、俺を舐めすぎだろ?》


 ――私と獅子の攻撃を置き去りに、一瞬でレリーフェの横へ!?


「お前こそ――私達を舐めるな、レプティリアン!!」


 霧で鈍器の一撃を止めた挙げ句、リザードマンの身体に纏わり付かせて捕らえた!


「――――シーニックブレイズ!!」


 至近距離からの一撃――これで決まる!!



《“音階”――ドシラソファミレド》



 黒い突起物先端から順に衝撃が弾けていき、拘束していた霧ごとレリーフェの一矢を相殺してしまった!?


「ふざけやがっ――」


 衝撃波を叩きつけられ、十字路脇の建物に叩きつけられるレリーフェ!!


「――オールセット1」


 クロスボウから巨大な銀槍、“慟哭よ・その胸を貫きたまえ”へと持ち替え、サブ職業などの構成も全て接近戦主体へ!!


「“ニタイカムイ”!」


挿絵(By みてみん)


 パワー特化の緑のオーラを纏い、銀槍に九文字を刻む!!


「カプア!!」


 ウララ様の書物に刻まれた文字が共振し、互いの想いが繋が――やっぱり、ウララ様の心は……。


「気をぬいちゃダメ!!」


 目の前にいきなり――レッドリザードマンが!!



「――――“神代の兆滅煉獄”ッ!!!」



 紫の炎混じりの青白い奔流が、レッドリザードマンに直撃……した。


「ハアハア、ハアハア」


挿絵(By みてみん)


 いつの間にか居なくなっていたユリカが、屋根の上から不意打ちを浴びせたようだ。


「ハアハア、もう……限界」


 その場で膝を付き、五爪の黒杖の文字も消えてしまう。


《――よくもやってくれたな》


 炎煙の中から飛び出したレッドリザードマンが、ユリカへと飛び掛かった!!


「“雷雲魔法”――サンダークラウズスプランター!!」


 ウララ様の魔法が奴を牽制し、その隙に獅子が飛び掛かって組み伏せる!


「今よ、カプア!!」

「はい――“凶暴化”」


 身体を赤黒く染め、TPと引き換えに力を最大限に強化!!


《邪魔だ、離せ!!》


 ユリカの一撃で肘から先の右腕が消えている奴は、簡単には“神の丘の獅子”を振りほどけない!



「“溶解槍術”――アシッドストライク!!」



 獅子が不可視の力で弾き上げられた瞬間、立ち上がり掛けた奴の胸を――深々と突き刺したッ!!!


《俺の念道力を……》

「ハアハア、ハアハア」


 溶解液を体内からタップリと浴びせた……これで、私達の勝利は確定し――不可視の力を叩き付けられ、私もレリーフェ同様に壁に強打させられてしまうッ!!


「ガ……ハ」


 木片が腹部から突き出していて……でも、なんとか勝て――



《“瞬間再生”》



 奴の傷が……一瞬で全快した?


《ああ、クッソ。お前ら如きに、こんな無様を――絶対に許さねぇ》


 もう終わりだ……ユリカもレリーフェも私も、もうまともに戦えるような状態じゃない。


 ウララ様だって、ほとんどMPは残っていないはず。


《まずはお前からだ、ガキ女》

「く!!」


「誰……か」


 ウララ様を……助け……。


 悔しい……私は……また。



「“聖水魔法”――セイントスプラッシュ!!」

「“蒼穹魔法”――アジュアダウンバースト!!」



 白水の奔流と蒼き重風圧が、レッドリザードマンの動きを止める。


《……ゴキブリみたいにゾロゾロとよ》


「貴方の相手は、私がします」


挿絵(By みてみん)


 レッドリザードマンの前に降り立ったのは、白猫獣人のタマだった。


おまけ

挿絵(By みてみん)

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