表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第15章 覚醒の両翼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

616/956

577.三色鬼

「……来た」


 重厚な門が破壊され、“赤鬼”が列を成して“明けの鬼京”へと流れ込んでくる。


「ざっと百体ってとこか」

「五人だけでどうにかなる? ジュリー姉」


 フミノとクレーレの言葉。


 NPCであるエルザ、ヘラーシャ、レンが居ないため、今の私達はクレーレ、イチカ、フミノ、チトセの五人のみ。


「さすがに、モモカとバニラをこっちに連れて来るわけにはいかないからね」


 だから、私のパーティーからは私とクレーレしか南東の道に来ていない。


「でも大丈夫、鬼達は十字路しか通らないみたいだから」


 路地に入られたら対処は大変だったけれど、進行ルートが一本に絞れるならやりようは幾らでもある。


「私とフミノの魔法で数を減らすから、三人はうち漏らしの対処を」


 第二陣が来てもチトセの高火力で対処出来るし、一番人数が少ないけれど、どうとでもなるはず。


「行くよ! ――“二重詠唱”、“天雷魔法”――ヘブンスプランター!!」

「“光線魔法”――アトミックシャワー!!」


 私とフミノの魔法が、同時に放たれる。



●●●



「“四重詠唱”、“雷雲魔法”――サンダークラウズスプランター!!」


 南西から迫る赤鬼の集団を、雷雲より放たれる雷で殲滅する。


挿絵(By みてみん)


「さすがです、ウララさん」


 クマムちゃんが褒めてくれる。


「ありがとう、クマムちゃん」


 綺麗で可愛い娘だな~、クマムちゃんは。


「もう来ない……さすがに、今ので終わりってわけじゃないわよね?」

「四方向から千体なら、単純計算で一方向から二百五十。まだ半分は来るはず」


 ユリカちゃんとレリーフェさんの会話。


「なら、もう半分近く倒したことになるんだ……楽勝過ぎない?」


 暢気気味なナオちゃんですら、話が上手すぎると思ったみたい。


「私が敵なら、四方向から同時に攻めさせつつ、どこか一方向に戦力を集中させますね」

「カプアさんの言うとおりになったら、私達はどうします?」


 スゥーシャちゃんが、誰ともなく尋ねた。


「気にしなくて良いわ。私達の役目は、この方角から入ってくる鬼の相手。下手に動けば裏を掛かれるかもしれないから」

「レギオン戦と同じく、相手の裏の裏を読む必要があるというわけですね」


 タマちゃんが、ユリカちゃんの意見に理解を示す。


「なにが起きても良いように、牢の周りにはパーティー三つ分の戦力が配置されてます。私達の役目は、あくまで敵の戦力を削って、後方のエリューナさん達の負担を減らすこと」


 カプアが、私達の役目を簡潔に纏めてくれた。


「おい、次が来たぞ!」


 いつの間にか屋根に登っていたレリーフェさんが、注意を促してくれる。


「……青い鬼?」


 夕陽で見えづらいけれど、“赤鬼”とほぼ同じ姿の鬼がおよそ百体。


「確か“青鬼”は、“赤鬼”より総合能力が低い分、素早さが高かったはず」


 そのせいか、青鬼は直立二足歩行の赤鬼と違って前傾姿勢。


「さっきの赤鬼と同じで、大した事無さそう。次は、私が綺麗に吹き飛ばし――へ?」


 ナオちゃんが自撮り棒付きカメラみたいな杖を構えた瞬間、門を潜ってきた青鬼達が地に手を付き――一斉に路地へと駆け込んだ!?


 中には、屋根の上を駆けている個体も居る!


「コセ達の所に行かせるか!!」

「待ちなさい、ナオ! 無理に追わなくて良い!」


 遠距離攻撃手段を持つカプア、レリーフェさんが次々と倒していくも、大半が私達を無視して京の中心地へと向かっていく。


「で、でも!」

「ナオさん、厄介な新手がもう来てます」


 タマちゃんの声に、警戒が帯びている。


「……まあ、“赤鬼”、“青鬼”と来れば、アイツが来てもおかしくないか」


 ユリカちゃんが疲れたように口にした相手は――三メートル程の巨軀を誇る“黒鬼”、およそ五十体。


「もしかして、戦った事があるの?」

「始まりの村で一回だけね」

「そういえば、あれってユリカさんのせいでしたね」


 タマちゃんのよく分からない指摘。


「グッ! ――今ここで、あの時の汚名を返上してやるわよ!」


 凶悪なシルエットの杖に、十二文字刻むユリカちゃん。


 なんとなくナオちゃんも、タマちゃんの指摘に……気まずそう?


「タマは、もしもの時のために力を温存しておきなさい!」

「分かりました!」


 ユリカちゃんの指示に従うタマちゃん。


 こっちの戦意を感じ取ったかのように、黒鬼達が戦闘態勢をとって――突っ込んで来る!!


「アイツらは、青いのと違って私達が標的みたいね」


 黒鬼の迫力に、ナオちゃんも含め全員が目の前の大鬼に集中する気になった様子。


 下手に後ろを見せれば殺られるこの状況、黒鬼の役割は私達の足止めで間違いない。


 でも……青鬼だけで牢の守りを突破できるとは思えない。


 たぶん、まだなにかある。


「アイツらは恐ろしく硬いから、タマ以外は全力で攻撃した方が良いわよ」

「前に見た黒鬼と違って、半数が武装してますね」

「見た感じ、全ての鬼が指輪か腕輪を装備しているようだった。特殊な能力を追加されている個体も居るかもしれない」


 ユリカちゃん、タマちゃん、レリーフェさんの情報を加味すると、余力を残せるような相手じゃなさそう。


「私の魔法で削るから、後はお願い!!」


 完全な魔法職である私は、乱戦になるとまともに戦えなくなるから――全力を尽くすならここしか無い!


「“積乱雲”――」


 低気圧の雲を生み出して、“目眩めく禁断を読み耽り”に九文字刻む。



「“六重詠唱”、“雷雲魔法”――サンダークラウズスプランター!!」



 私の最大火力を放つ!!


「な!?」


 三体の黒鬼が先行して来て、“黄金障壁”で軽減されたり、武器の刀で切られたり、マントで弾かれた!!


 残り三発も直撃はせず、余波でダメージを負わすだけに留まってしまう!


「対策されていたようですね。ウララ様、後は私達にお任せを」

「ええ……お願いね、カプア」


 仕方がないと解っているはずなのに……役に立てなかったという負い目が、重く心を沈ませていく。



●●●



「モモカ、下がってて」


 無数の気配が、そこら中から迫ってくる。


「やだ!」

「ガウ!!」


 モモカがやる気だと、バニラまで好戦的になりやすい。


「一体が牢に少しでも触れたらゲームオーバーだから、しっかり守ってね、皆」


 メルシュから、このタイミングで爆弾を投下された!?


「少しでもとは、初めて聞きましたよ、メルシュ」

「頼んだぞ、トゥスカ、セリーヌ」


 ご主人様からの応援!


「コセ、モモカは!?」


 いつになく荒ぶってる。


 もしかして、この間までご主人様がモモカをこのステージに置いていこうとしていた事に、無意識に勘付いていたのかも。


「モモカは、バニラを守るんだ」

「分かった!」


 ――上手い! さすがご主人様。


 ペットのように可愛がっているバニラを守れと言われたら、確かにモモカはバニラを優先する。


「アウ?」

「ローゼ、マリア、モモカのサポートをお願い」


 あくまでモモカのサポートということにして、モモカの自尊心を傷付けないよう配慮。


「任せなさい。モモカよりも素敵なレディーである私が、全滅させてあげるんだから」


挿絵(By みてみん)


「ローゼには負けないもん!」


 あ。せっかく、モモカが前に出すぎないように誘導してたのに。


「ローゼ……お前、本当はわざとやってる?」


挿絵(By みてみん)


 マリアが呆れ顔を浮かべていた。


「なんのこと?」


 ダメだ、本気で気付いてない。


「でも、今のところは杞憂で終わりそう」


 私達よりも前、祭壇を囲むように展開しているユイ、コトリのパーティーが、路地や屋根から飛び出てきた青い鬼達をあっという間に狩っていく。


 私がガンブーメラン、“荒野の黄昏は英雄の慰め”から“魔力弾丸”で援護すれば、問題なく対処出来そう。


「――トゥスカ!! 北側から一気に回りこんで来てるぞ!!」


 祭壇上から、リューナの叫びが!


「“竜技”――ドラゴンブレス!!」


 左側に素早く対処したのはモモカ!?


「ガオオオオオッ!!」


 潜り抜けてきた個体は、“愚劣な無我の境剣”から繰り出されるバニラの荒々しい剣閃によって……あっという間にバラバラに。


「近付くんじゃねぇよ、ゴミ共!!」


 反対側は、セリーヌと二体のバトルパペットが難なく蹴散らしていた。


「……フー」


 私は、モモカの前に自分の心配をした方が良さそう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ