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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第15章 覚醒の両翼

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568.歩みと停滞

「数日後……か。じゃあ、俺達よりもだいぶ早く先に進むことになるな」


 勝負ののち、アテルと二人で飲み物片手に話をしていた。


 ザッカル達が居るのは、まだ三十二ステージ。


 適度に休みを入れながら順当に来られたとして、大体二週間くらいは掛かるだろう。


「君達の方が圧倒的に人数が多いみたいだし、そっちに取られる前に仲間を増やさないといけないからね」

「……いつか決着を着けるとき、レギオン戦で決めるつもりなのか?」

「それが一番、全員が納得出来る決着の形だと思っているんだけれど? なにか他に案があるのかい?」

「いや……」


 レギオン戦なら、たとえ俺がアテルより強くなれなかったとしても勝ち目が出て来る。


 向こうの方が人数が増えたとしても、レギオン戦なら人数調整も可能。


「判った。いずれレギオン戦で決着を着けよう」

「場所は……取り敢えず九十ステージの街で一度合流しようか。滞在ペナルティー次第ではあるけれど」


 そう言えば、ダンジョン・ザ・チョイスのステージ数について訊いたことはなかったな。


「最終ステージは、なんステージになるんだ?」

「ジュリーという子から聞いていないのかい? 全部で百ステージの予定だったそうだよ」

「予定?」

「ダンジョン・ザ・チョイスというゲームのオリジナルの更新は二年……いや、三年前か。九十ステージの街までで途絶えて、程なくして前触れもなくコンテンツが終了したそうだよ」


 ジュリーの両親が、事故に見せかけて殺されたから……か。


「僕は知らなかったけれど、そのゲームは根強いファンが多くて、ネット上でオリジナルの武具やスキルのアイディアを出し合って楽しんでいた人達が、世界中に五千人くらいいたらしい。半数は日本人だったそうだけれど」

「サキって人から聞いたのか?」


 ジェリーが姉と慕うオリジナルプレーヤー。


「デボラさんからもね。というわけで、SSランクは僕達が先に手に入れておくよ」


 本来は全十三種しかないはずの武具。


「そっちは、SSランクを幾つ保有しているんだ?」

「ああ……まあ、二つかな」


 妙な反応に訝しむも、まさか答えてくれるとは思わなかった。


「君達は?」

「実質二つだな」


 俺の剣と“ブラッディーコレクション”の事は知られているけれど、タマの槍に関しての情報は漏れていないはず。


 “ブラッディーコレクション”はヴァルカに譲渡したため、実質二つというのは嘘ではない。


 お互い、所有しているSSランクは基本的には二つか。


 魔神子の隠れNPCであるナノカはランクだけならSS扱いの武具を持ってはいるけれど、何かを自在に操るような能力は無いし。


「……楽しそうだね」

「へ?」


 アテルの視線は、お互いのレギオンメンバーが交流している風景に向けられていた。


「……彼女達と、一緒に生きたいとは思わないのか?」


 ふと争わずに済むのではと考え、口にしてみる。


「思わなくもないさ。けれど……それ以上に、全部終わらせたいんだ」


 自分にたくさん向き合ってきたからこその重みが、その言葉には込められている気がした。



●●●




○ミキコをタマコに譲渡しました。

○パンパンをタマコに譲渡しました。



 《日高見のケンシ》のリーダーとコセの戦いののち、私達はバーベキューを開いて食事を楽しんでいた。


 そろそろ宴もたけなわという頃になり、コセからタマコ様へと私達の所有権が移ることに。


「確かに、受け取ったわ」

「……」


 所有権……一度死んだ私達には、もう二度と自由など無い。そう知らしめられたような気分。


「それで、そっちのレギオンは今後どうする?」

「この“明けの鬼京”に残るわ。同盟を組むとはいえ、それくらいの自由は認めてくれるわよね?」

「まあ、それは構わないけれど」


 やはり、タマコ様は残る方を選択されるか。


「私は……」


 私は、本当はどうしたいのだろう?


「ちょっと良いか?」


挿絵(By みてみん)


 銀髪褐色肌を持つトゲ鎧の女が、会話に割って入ってきた。


「トキコ?」

「悪いんだけれどさ、コセ――私は、《日高見のケンシ》に入ることにしたわ」


 彼女の告白に、この場の空気が変わる。


「行ってしまうんですか、トキコさん!?」


 牛獣人の小柄な子が、戸惑っていた。


「悪いね、ノーザン。どうも、このレギオンの空気は私には合わなくてさ」

「そう……ですか」

「というわけでよろしく、アテル」

「初耳なんだけれど?」


 アテルという人まで戸惑っている……誰にとってもいきなりな話だったらしい。


「フー。トキコは賞金稼ぎだったよな?」

「ああ、そうだよ」

「なら、手続きは要らないな……短い間だったけれど、今までありがとう」


 アッサリと離脱を認めるコセ。


「悪いな。お前の料理、美味かったぞ」

「あの……勝手に進めないで欲しいんだけれど」


「待たせたわね、お待ちかねの美少女よ」


挿絵(By みてみん)


 魔法少女風のピンクのドレスを着た長身の女が、脈絡も無くいきなり訳の分からない事を言って入ってきた!?


「トキコは良い女だぞ、アテル」

「マサコさ……まあ、貴女がそう言うなら」


 彼女、他の女達と違って婚姻の指輪を付けていない?


「あんがとさん、マサコ」

「歓迎するわ、トキコ」


 固い握手を交わす二人。


 目の前の人達は、どんどん前に進んでいく……私と違って。



●●●



「フフフ、どうよ?」


 アヤナが、青味の強い青緑のウエディングドレスを着てクルッと一回転してくれる。


 四十ステージで合流した次の日の午前、俺達は婚姻式を上げる事にした。


「お姉ちゃん、はしゃぎすぎ」


 アオイはというと、“明けの鬼京”は教会ではなく神社であるためか、緑味の強い青緑の着物を着ていた……肩と胸元の出し具合が凄い。


「フ! 余の艶姿を見るが良い余!」


 大胆で派手な朱色の花柄着物を着て、扇子を振り回しながら見せ付けてくる隠れNPCのナノカ。


「バルンバルンが服を着られるなんて……ちょっと感動物だよ」


 青い着物を着たスライムの隠れNPCであるバルンバルンが、着物越しに自分の胸を揉みながら感慨深そうにしていた。


 メルシュは武器を装備出来ないけれど、バルンバルンは武具だけでなく衣服も装備出来ない隠れNPCらしい。


 たぶん、クセのあるスライムの固有スキルが関係しているんだろうけど。


「アウーゥ……」


 邪魔くさそうに赤いドレスの裾を引きずっているのは、四足歩行で人の言葉を口にする事が出来ない野生児、バニラ。


 普段の動きやすい格好と違ってフリフリが多いから、バニラにはストレスなんだろうな。


「バニラ、め!」

「ァゥー……」


 モモカの窘めにより、目に見えてテンションが下がるバニラ……早く終わらせてあげよう。


「お待たせしまぁした!」


 クリスは長い金髪を纏めて、色んな暗い色が散りばめられた黒っぽいドレスを選んだらしい。


 よく似合っているけれど……何故か、そのダークなウエディングドレスを選んだ事に対し、悲痛な物を感じてしまう。


「正直、カナさんが式を挙げるとは思いませんでした」

「……ま、まあ、こ、婚姻の指輪は……な、無いよりあった方が……良いので」


 真っ黒なドレスで着飾って綺麗なのに、普段のオドオドモードのままのカナがなんだか新鮮。


「お待たせしました」


 灰色の肌と赤紫の髪を持つエキゾチック美女、プレベール族バトルメイドのレミーシャが、白っぽい灰色のドレスに身を包んでやって来た。


 ……なんだか、白い風車をウエディングドレスにしたみたいなデザインだな、あれ。


 その後ろからは、白とダークブラウンのドレスを着た山猫獣人のサンヤ、鳳凰のような羽根飾りの付いた真っ赤なドレスを着たヒビキさんが出てくる。


「リューナの結婚衣装を見てみたかったっすね」

「まさか、自分が式を挙げる日が来ようとは……フフ、分からない物です」


 サンヤはともかく、攻略に意欲的だったヒビキさんがゲーム的な意味での結婚をしていなかったのは意外だった。


 逆に、なんで今回は結婚する気になったんだろう?


「な、なんというか……こういう格好は落ち着かないな」


 ――最後にミントグリーンのシンプルなドレスで現れたのは、緑の髪を持つ美女エルフ、レリーフェさん。


 息を呑むほどの美しさは、視線を外せない程だ。


「……コーセ~?」

「結構正直な反応をするんだね、コセは」


 アヤナに睨まれ、アオイにはイヤラシイ笑みを向けられてしまう。


「こ、これで全員だな!」


 俺は誤魔化すように、神父もとい神主の所に行き、婚姻の儀を始めるのだった。


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