567.大地の英雄龍VS絶視の太陽神
“神秘の館”の前、多くの観客が遠巻きに見守るなか、俺達は向かいあって戦意を高めていた。
俺は“サムシンググレートソード”を、アテルも初めて会った時の剣を手にしている。
アイツの装備で変わったのは、今の所“日蝕の黒衣”の上に着ている“絶視なる北天の雄の歩み”という黒炭のような石の鎧くらいか。
“荒覇吐の外套”の位置が、鎧の上に変わっているけれど。
「まずは――小手調べと行こうか!!」
「来い!!」
互いに瞬時に十八文字を刻み、その剣をぶつけ合う!!
――想像を超える衝撃波が巻き起こり、互いの手から愛剣が弾き飛ばされてしまった!?
「ハアアッ!!」
「ク!!」
両腕、両脚に三文字ずつ刻んでの肉弾戦へともつれ込む俺達!
神代の力を拳や脚に纏わせながらぶつけ合っているため、一発ごとに衝撃が辺りへと拡散していく!!
「――“剛力竜衝”!!」
「“北天の歩み”」
俺の左掌底から放たれた竜属性の衝撃波を、纏った黒いオーラで拡散させられた!?
「“超噴射”!」
俺のように推進力に使うんじゃなく、吹き飛ばすための攻撃に用いただと!?
「“神代の女神”!!」
どこか女に見える青白い光を纏った!?
「――“神代の天竜”!!」
纏いし竜光の鉤爪で仕掛けるも、向こうは光の振り袖のような物で絡め取ってきて去なされる!
こっちは光翼、アテルは光の羽衣のような物で低空飛行しながら幾度もぶつかり合う!!
「文字の力に関しては、ほぼ互角といったところかな?」
「よく言う」
僅かに、俺の方が押されている気がしてならない。
「小手調べはこの辺にしないかい? ――そろそろ、君に全力をぶつけたいんだ」
お互いに、鎧に刻んだ文字を消して天竜と女神を解いた。
「俺もだ――オールセット2」
左手で青石の直刀、“名も無き英霊の劍”を掴む。
「撒き実れ――”雄偉なる大地母竜の永劫回帰”」
大地の竜の力を秘めた、金の刃持つブラウンの大剣へと姿を変える!
「――“五葉手の九鬼の黒翼”」
鬼の五本指の如き黒金の翼を生やすアテル。
あれが、リューナが見たというアテルのSSランク。
俺同様、自分自身の手で作り出した物だと視ただけで解る。
「装備セット2」
見覚えのあるような二振りの大剣を手にするアテル。
「“偉大なる英雄の黄金翼”」
出現させた背の黄金パーツから、黄金の光の翼を生成。
「やっぱり、君との戦いが一番の刺激になるよ――コセ!!」
「残念ながら――俺もだ!!」
推進力を利用した正面からの突撃――いち早く上段からの一撃を繰り出す!
避けきれないと判断したアテルは二刀で受けるも、一瞬だけ三文字を刻んで弾き上げられる!
――二振りの紅の剣が白色の光に染まっていく!?
「“二刀流”、“太陽極光剣術”――サンオーロラプリック!!」
「“大地竜剣術”――グランドドラゴンブレイク!!」
すんでの所で迎撃に成功し、再び互いに大きく吹き飛ばされてしまう!
「――ク!! “飛翔”!!」
白色の光が降り注ぐも、即座に生成した岩盤で防ぎ続け――なんとか攻撃の間隙を突いて、空へと逃れる!
「その程度かい?」
再び剣に光を纏わせ、ただ振るうだけで光の斬撃として放ってきた!?
「そういう使い方も出来るって事か!」
剣を横に振るい、斬撃状の岩石の盾を放って相殺!
「だったら、これでどうだ!!」
頭上から岩石の雨を降らせる!
「甘いね――“飛翔”!!」
黒金の骨翼から銀光の皮翼を生み出して頭上へと逃れながら、無数の光線で迎撃されてしまう。
「僕は光熱線で、そっちは岩石か……もう一段階、ギアを上げようか!」
「今日はとことん応えてやる!」
互いのSSランクに十八文字が刻まれる!!
「「ハアアアアア!!」」
神代の力を込めた太陽光と岩石塊がぶつかり合う!
俺の岩石が太陽光を弾きながら接近するも、届く前に破壊されてしまった。
「――“断罪絶視の大蛇”!!」
赤光の大蛇を繰り出し、即座に神代の力で強化して来たか!
「“黒竜霊”――“古代竜魔法”、エンシェントドラゴバイパー。“大地魔法”、グランドクエイク」
二種類の魔法を、永劫回帰の剣に流しこむ!!
「――ハイパワースラッシャーー!!!」
太陽の化身を両断すると共に、アテルに回避行動を取らせる!
文字を刻めるSSランクが俺は剣であるのに対し、アテルは翼。攻撃面では俺が有利で、機動力においては向こうに分があるらしい。
支配対象が質量の鉱物と最速の光なのもあって、手数はアテル、防御は俺という感じか。
「舞え踊れ――“雄偉なる精霊と剣は千代に”!!」
左腕の剣を、銀の刃持つ白き剣へと変える!
「見た目が……なるほど。複数の形態を使い分けられるのが、そのSSランク最大の特徴か」
さすがに勘が良いな!
「“竜王剣”! “大地王剣”! “波動王剣”! “振動切断剣”! ”黄昏王剣”!!」
五振りの剣を呼び出し、“剣踊”の力で強化して操る!!
「速い!!」
全速力で回避行動を取るアテル。
引き離され過ぎれば、剣の操作精度が落ちる!
黄金光の翼で追い掛けるも、やはり最大速度でも俺の方が負けていた。
「“飛王剣”!!」
“振動切断剣”が破壊されてしまう!
けれど、TPを十分の一失わせたばかりか、かなりの神代の力を消費したはず。
異形と化した左の指に嵌められた“剣倉庫の指輪”から、右手で“ケラウノスの神剣”を抜く!
「”雷霆魔法”――ケラウノススプランター!!」
「無駄だよ!」
右腕の黒紅の剣を翳しただけで、黄色の雷が切っ先から霧散させられる!?
「あの剣、以前持っていた”魔術師殺しの剣”が変異した物か!」
俺の“グレイトドラゴンキャリバー”同様、奴も自身の剣を神代文字対応に変化させていたらしい。
残りの王剣達は、無数の光線によって強みである機動力と全方位攻撃を封じられてしまっている。
「そろそろ終わりにしようか――――“神代の巨翼”」
奴の黒金の翼から、銀粉混じりの青白い巨翼が展開された!!
「……“黒精霊”、“古代竜魔法”――ドラゴノヴァ」
莫大な全MPを消費し、全方位に暴威を撒き散らすはずのエネルギーを――全て四振りの王剣に吸わせる。
「”神代の飛踊剣”」
全ての剣に“神代の剣”のような刀身を付与し、貫通力と飛翔速度を強化。
「――“北天の歩み”!!」
自身は黒のオーラを纏って、真っ直ぐ突っ込んできた!?
「先に討ち取る!!」
莫大な古代竜の力を乗せた王剣を一斉に突っ込ませ、黒のオーラを突き破らせに掛かる!!
「無駄だよ!!」
――左翼を盾にして突き刺させたあと、薙ぎ払って“剣踊”のコントロール外まで振り飛ばしただと!?
「これで終わりだ」
「“精霊剣術”――ノームブレイクッ!!」
俺へと迫る右翼に対し、“雄偉なる精霊と剣は千代に”の固有剣術を行使――するも、“神代の巨翼”を歪めただけで叩き落とされてしまうッッ!!
「“神代の剣”――“太陽剣術”――――ソーラーストライク!!!」
アテルの剣が俺の鎧ごと……腹を貫いた。
「今回は、僕の勝ちだね」
「今回も……だろ?」
レギオンで同盟を組んでいる同士はお互いに殺せない。
だからこそ、全力の勝負が出来た。
地面に激突する前に体勢を立て直し、着地する俺達。
「これで、二敗一引き分けか」
近いようで……遠いなぁ。




