563.絶視なる太陽蛇
「“六重詠唱”、“雷雲魔法”――サンダークラウズスプランター!!」
風属性と雷属性を強化する”積乱雲”を使用した状態で魔法陣に神代の力を流し込み、前方を塞ぐ半壊状態の海賊船を今度こそ沈める。
「フー」
神代の力を記していた“目眩く禁断を読み耽り”と、魔法の使用MPを半分にしてくれる“至高のグリモワール”の二冊を閉じる。
「一息ついている場合じゃないぞ、マスター!」
「すみません、ウララ様。少々手伝って頂きたく!」
船首に立つ私を背後で守ってくれていた二人から、応援が掛かる。
私達が“海上連結船”で手に入れた帆船の左右には既に二隻の海賊船が隣接しており、凄まじい数の“パイレーツ”、“幹部パイレーツ”が雪崩れ込んで来ていた。
“幹部パイレーツ”は“パイレーツ”を強化してしまうため、幹部を優先して倒すのが定石。
既にサトミちゃんとユイちゃんのパーティーがそれぞれ二隻の船に乗り込んでいるけれど……皆は大丈夫なのかな。
特にユイちゃんの方は、シレイアさんと二人だけで乗り込んでいたはず。
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「――ハッ!!」
魔人の皇都で手に入れた“魔人の脇差し”と、王の墓で手に入れた“微毒な紫花より滴れり”という打刀の二刀流で、船内の海賊達を斬り殺していく。
「……戦いづらい」
長刀である”波紋龍閃の太刀”が使えるくらいの高さが無いから、脇差しと打刀の二刀流で戦っているけれど……私はあまり二刀流は好きじゃない。
「おーい、マスター。あんまり先に行かないでおくれよ」
いつもの“アマゾネスの大刀”ではなく、“アマゾネスの投げ斧”と“輪廻の業剣”を使っているシレイアさんが追い付いてくる。
「まあ、甲板に上がった奴等はぶつけた船に乗り込むのを優先するから、背後から襲われる心配はないんだけれどね」
「そうなんだ」
そう言えばこの世界って、ゲームを再現した物だったっけ。
「で、カオリと交換したその“漆黒の軽具足”はどんな感じだい?」
「悪くはないよ……こっちは肩の左右に楯があるから、“彼岸花の軽具足”とはだいぶ勝手が違うけど」
バランスが違うから、まだイマイチ慣れない。
「そういや、そもそもなんでわざわざ交換したのさ?」
「お姉ちゃんが、彼岸花系統の装備で統一したいとかなんとか」
私は拘りとか無かったし、ランクが同じならいっかと思って。
「相変わらず軽いね。なんの見返りも無しに」
「お姉ちゃんがアテルとエッチするの見せてってお願いしたから……見返りがないわけじゃないよ?」
か、考えとく……としか言われてないけれど。
「……ダメだ、このマスター……姉の方も」
どうしてシレイアさんは、定期的に私をダメ扱いするんだろう?
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「“幻影の銛群”――“聖水銛術”、セイントハープン!!」
“ファンタズムハープン”を六つに分裂させ、海中から船底へと全て飛ばし穿つ!
浸水により、目の前の海賊船はいずれ沈むでしょう。
「念のため、もう一度」
「”深海弓術”――アビスブレイズ!!」
昏い一矢が船底を大きく穿ち抜き、海水が途轍もない勢いで船へと流入しながら、穴を更に拡大させていく。
「……余計な真似を」
いやらしい笑みを浮かべているキジナ姉さんを一瞥したのち、私はメルシュさん達が居るクルーザーへと戻ることにした。
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「ハァァ!!」
“薔薇騎士の剣”をセットした大型銀銃、“ドラグ・ガンブレイド”の引き金を引いて、海賊達を一発で数人吹き飛ばしていきまぁす!
引き金を引きっぱなしにする事で銃口下部から下側へと生えている刃を前側に向け、振り下ろされた剣ごと薙ぎ払い――首を刎ねる。
”薔薇騎士の盾”で背後から迫る敵を薙ぎ払い、“大口径魔力弾丸”で蹴散らしていく!
「刃を前に向けてると、振り回しづらいでぇすね」
銃撃時は、刃は下に向けておいた方が良さそうでぇす。
「“竜技”――ドラゴンブレス!!」
メグミがぁ、船上の海賊達を薙ぎ殺しまぁした。
「一息つけそうだな、クリス」
「そですねぇ」
正直、暴れたりないでぇす。
「昨日のこと、気にしてるのか?」
在日朝鮮人に権力を与えたのは、間違いなくDSの息が掛かったアメリカ政府側の人間達。
「……少しだけ。あの、メグミはぁ、前世の記憶があるんですよねぇ?」
「完全じゃないから、色々誤解している可能性もあるけれどな」
「そぉ……ですか」
DS……レプティリアンの真実を知る機会は、果たして訪れるのでしょうか。
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『ガアアあああ!!』
“獣化”状態のリンピョンちゃんが、船内の海賊達を蹂躙していく。
「うーん、可愛くない」
力任せに挽き潰していく戦い方もそうだけれど、凶暴な筋肉質な体型が酷いわ。
何故か“獣化”すると衣服装備は見えなくなってしまうから、今のリンピョンちゃんは黒色の脚甲を付けただけの素っ裸痴女になっちゃってるし。
「死ねぇぇ!!」
“紺碧の空は静寂を願いて”から“分離”していた盾で奇襲を防ぎ、喉を切り裂いて絶命させる。
“思念操作”の訓練も兼ね、杖から飛ばした盾だけで撃退するようにしていたの。
『サトミ様~♡ 下への階段を見付けましたよ~』
「偉いわ、リンピョンちゃん」
うーん、やっぱり可愛くない。
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「……これが、SSランク」
アテルの黒い金属の翼の周りで収束した無数の光線が、甲板上の海賊達の頭を蒸発させていく。
この制圧力……死体と血、大地と黄昏と来て、奴が支配するのは太陽光か。
SSランクの凄まじさ、この目で見るのは初めてだが……。
「さすがに、乗り込まないと全滅させるのに時間が掛かるね……うん?」
「船の色が……」
赤く染まっていくと思ったら――船首下部分が割れて、まるで化け物みたいな顔が!!
船全体も躍動し始め、船が……海面から浮き始めただと!?
「これは……当たりを引いたかな?」
「……加勢しようか?」
あの大きさのモンスター相手だと、手に余るだろうと考えての提案。
「問題ないよ。それに、邪魔しないという約束だろう?」
気負っている感じはない。
「……そうだったな」
少なくとも、本気でどうとでも出来ると思っている。
「まずは小手調べ――」
さっきまでとは比べ物にならない威力の光芒が一斉に降り注ぎ、化け物と化した船を溶かし削っていく!?
「これでどうだ!!」
極大の光が船に落ちるも、まだ倒しきれてはいない。
「……圧倒的過ぎる」
あの化け物船の耐久力が異常なだけで、SSランクを操るアテルの力は規格外。
こんなの、無制限にして自在に、“光線魔法”を放っているような物だ。
「……おい、まずいぞ!」
あの化け物船、反転してツェツァ達が居る船の方へと移動を始めやがった!!
「大丈夫――ちょっと本気を出すから」
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「武器交換――“絶視なる太陽蛇の天神剣”」
”アマテルの太陽剣”を、進化した”天叢雲の神剣”に持ち替える。
白き刃持つ紅の刀身に十八文字を刻み、神代の力を高めていく。
「――“断罪絶視の大蛇”」
“氾濫調和の大蛇”とは逆、調和のための犠牲ではない――ただひたすら、調和を乱した者を裁くだけの灼熱光の化身を顕現し、モンスターシップへと纏わり付かせる!!
神代の力によって本来よりも巨大化した赤色の太陽蛇は、モンスターシップに絡み付いて締め潰していく。
「――終わらせよ」
その巨体から太陽光を放射、ゼロ距離から浴びせて蒸発させ尽くした。
「さて」
チョイスプレートを確認し、サキさんから聞いていたイベントの報酬を確認。
「今日は運が良いらしい」
○ユニークスキル、“怪物戦艦管理士”のサブ職業を手に入れました。




