表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第15章 覚醒の両翼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

600/956

561.不細工なリエリア

 甲板上にある広い部屋へと案内された私とサンヤは、固定された椅子に座り、ツェツァ達とテーブル越しに対面する。


「その……久しぶりだな、ツェツァ、ルフィル」


 対面側に居るのは三人。箒を持ったメイドみたいなのは、ツェツァが契約したと聞いていたシルキーの隠れNPCだろう。


「ええ、お久しぶりです」

「……うん、久しぶり」


 ルフィルは相変わらずの坦々とした雰囲気で、ツェツァは……どこか申し訳なさそうだった。


 もっと、険悪な態度を想像していたけれど。


「……怒ってないのか? 私が勝手に、パーティーの方針を変えたこと」

「私は、なんだかんだで今の居場所が気に入っていますので」

「リューナが男に股を開いた事には怒りが抑えられなかったけれど……もう、私も人のこと言えないし」


 見せつけてきたツェツァの左人差し指には、私と同じ”最高級の婚姻の指輪”が。


「ああ……アテルって奴と……か」

「うん……まあね……♡」


挿絵(By みてみん)


 幸せそうな顔をしやがって……そんな顔されたら、戻ってこいなんて言えないじゃないか。


「リューナ……サンヤも一緒に、《日高見のケンシ》に来ない? 文字を刻める二人なら、きっとみんな歓迎してくれるわ!」


 まだ、やり直したいとは思ってくれていたのか。


「そっちの最終目的は言わば、全ての人間を巻き込んだ集団自殺だろう? 私は……コセと未来を生きたいんだ」

「…………そう。やっぱりもうダメなのね、私達」


 ツェツァの態度が硬化したのが解った。


「お前は、未来を自分の手で摘む気なのか?」

「私が故郷で……チェルノブイリ原発の地下で何を見たのか、リューナには教えたわよね?」

「それは……」


 スヴェトラーナという少女の根幹を形成してしまった……あの話か。


「当時はよく分からずにロシアを恨んだけれど……あの場所から私達を助けてくれたのは、ロシア兵だった。もしかしたら、リューナのお父さんもあのとき居たのかもね」

「ツェツァ……」

「私はね、今でも許せないのよ。あんな世界を許容した人類も――神だって」


 ツェツァは完全に……アテル一派に傾倒してしまっている。


「お願い、リューナ」


 私に手を伸ばしてくるツェツァ。


「サンヤと一緒に来て。前みたいに一緒に、全てを滅ぼしましょうよ!」


 私は――この手を取れない。


「すまない、ツェツァ。私は……幸せが欲しいんだ」


「……」

「サンヤはどうです?」


 ルフィルがサンヤに尋ねる。


「私のスタンスは知ってるっしょ? リューナの進む道が、私の行くべき道っす」


挿絵(By みてみん)


「サンヤ……」


 ドアの方から、ノック音が聞こえてきた。


「なに?」

「モンスターが出始めたから~、一応伝えとこ思て~。私らで対処する気やけど~、念のため注意してな~」


 今のは……京都弁?


「分かった。ありがとう、ヒフミ」

「フフ、気にせんといて~」


 柔らかな雰囲気だったが、気配はなんというか……重鎮。


「……いずれ、私達は敵対することになる」

「……そうだな」


 もう、決して避けることは出来ないだろう。


「今の私の仲間は強いわよ、リューナ」

「それは、こっちのセリフでもある」


 私達は、完全に袂を分かった。


 それを確認できただけでも、この話し合いには意味があったのだろう。


 コセのライバル……アテルか。


 いったいどれ程の男なのか、この目で見定めてみたいな。



●●●



 三十ステージの一番下とされる樹の中、魔法使いの方々が暗がりに浮かぶ青白い球体に触れていく。


「リエリア、貴女の番です」

「は、はい!」


 私の新しいご主人様であるエレジーさんに言われ、私も球体に触れる。



○“三重魔法”が進化し、“四重魔法”になりました。



「あ、成功した!」

「なんでそんなに驚いてんだ、お前?」


 私達のおっかないリーダー、ザッカルさんに声を掛けられてしまう!?


「わ、私は……前にもここに来たので……」


()()()()()()()()である貴女は、もしや第九ステージで売られていたのですか?」


 エレジーさんに尋ねられる。


「第九ステージ? 私が最初に居たのは、えと……名も無き王国の廃墟という場所です」

「あそこに、奴隷を売っている場所なんてあったのですか?」

「そういや、夜な夜なオークション形式で奴隷が売られるって誰かが言ってたな。ヒビキの奴も、そこで買われたはずだ」


「たぶん、私が特殊な種族だったからでしょう」


 人魚の母と、ホーンの父との間に生まれた異端児。それが私。


「だから、ここに来るのも二回目と。お前、どのステージまで行ったことあるんだ?」

「えっと……確か、三十四ステージです」


 夕暮れに街を彷徨っていたら、突然現れたモンスターの大群に…………。


「ほう。なら、そこまでの道のりは当てにできそうだな」

「あ、はい! 任せてください! 私、ダンジョンではいつも先行させられていましたから!」


「「…………」」

「あれ?」


 役に立てると思って嬉しくなったのに、お二人から可哀想な物を見るような目を……。


「……お前、前のパーティーではどういう扱いを受けてたんだ?」

「ほとんど雑用ですね。料理とか一通り出来るので、皆さんのお世話は私がしていました!」


 私の料理、結構好評だったんですよ!


「何を嬉しそうに……」

「やたら高ランクの武具を持っている理由を聞いたら、パーティーリーダーが複数の武器を使い分けるからとは聞いていましたが……」

「ああ、“連携装備”って奴でか」


 頭を抱えるエレジーさんとザッカルさんに、見捨てられてしまうのではと不安が込み上げてしまう!!


「わ、私、見た目も心も不細工で鈍くさいですすけれど、一生懸命頑張りますから!!」


 ちゃんとアピールしておかなきゃ!


「ブサイクって……お前、喧嘩売ってんのか?」

「へ?」

「そうですね。貴女がブサイクなら、この世の人間のほとんどがブサイクになってしまいます」

「……どういう意味ですか?」


 私が居たパーティーの女の人達から散々不細工と言われていたので、私はとんでもない不細工人間のはずですけれど?


「……よし、良いこと思い付いた! エレジー、俺に協力しろ」

「ザッカルさん、悪い顔してますよ?」

「クククク! コトリにも相談してみっか」

「あ、あの~……」


 私、いったいなにをされちゃうの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ