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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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おまけ 三人の出会い

「……戻ってきた」


 私の持ち家、“古びた教会”に。


「……やっぱり、二人は……」


 数時間前、ここで共にクエスト開始を待っていた二人の依頼者の姿は……どこにも無い。


「解ってはいても、中々受け容れられない物ですね」


 装備を外し、ソファーに腰掛ける。


 さっきまで抱いていた希望が、一気に地に落ちていくような感覚を覚える。


「お帰りなさいませ、イチカ様」


挿絵(By みてみん)


 使用人NPCである猫獣人メイド、ニャモが姿を現す。


「お風呂の準備が出来ておりますが?」

「ごめんなさい……今は、そういう気分になれなくて」


 重苦しい虚脱感に、気力が微塵も湧かない。


 これでも、()()()()()を知ったあの頃に比べたらだいぶまし。


 あの頃は何も喉を通らなくなって……三日後に空腹の限界が来て、泣きながら食べたっけ。


 あのまま衰弱死できたら、どれだけ楽だっただろう。


「……」


 何の気なしに、チョイスプレートを開く。


「フミノ……」


 シンゴさんが復讐目的で生き返らせようとし、私が横取りした女性。


「そうだ、この人……私の奴隷になるんだ」


 搾取する側で居るのが嫌で、傭兵なんて始めたのに……。


「ハァー…………へ?」



○以下から一つを選択出来ます。


★ヘルシングをパーティーに加える。

★退治屋のサブ職業を手に入れる

★怪物狩りのスキルカード・支援のスキルカードを手に入れる。



「そう言えば、本体を倒した人間は契約出来るって……」


 頑張ったのはコセさんなのに……これじゃあ、まるで私が掠め取ったみたいに……。


「本当に最低だな……私」


 隠れNPC……エルザさんみたいに、主の事を肯定し、サポートしてくれる人間なら……。


 私は、隠れNPCヘルシングと契約し、成り行きで奴隷としてしまった彼女、フミノさんを実体化させる事にした。


「…………建物の中?」


 長い青味を帯びた黒髪と白いカチューシャが印象的な女性は、上が白で下が紺色の……まるで剣道着のような格好をしていた。


挿絵(By みてみん)


「私は、死んだと思っていたのに……」

「……お母さ…………あれ?」


挿絵(By みてみん)


 一緒に実体化した隠れNPC、ヘルシングさんは少し小柄で……腰までの黒い髪を乱雑にバックにしていて……不良みたいで怖い。


 でも、隠れNPCだから私に乱暴な事しないよね?


 その隠れNPCの割に、なんだか様子がおかしい気もするけれど。


「えと……初めまして、私の名前はイチカと言います」


「私はフミノです……それで、ここはどこなのでしょう? 私は確か、三十七ステージで巨大な化け物に食い殺された気がしたのですが?」


 自分の事なのに、凄い他人事みたいに……。


「貴女が、ついさっきまで死んでいたのは確かです」


 フミノさんに、第二回大規模突発クエストの詳細を語っていく。


「シンゴ達が、ふしだらな理由で私を……か。イチカさんには感謝しなければなりませんね」

「いえ……気にしないでください」


 私は、感謝されるのが苦手だ……罪悪感を煽られるから。


「“隷属の印”……ですか。生涯奴隷ということは、貴女と私は一蓮托生という事ですね!」


 どことなく嬉しそうなのは気のせいでしょうか?


「それにしても、隠れNPCですか。マズダーさんとサカナさん以外の隠れNPCは、初めて見たかもしれません」


 ヘルシングの方に視線が向かうと、そこにはなにやら不機嫌そうな不良少女が。


「……私は、隠れNPCじゃねぇ」


「そうなの?」

「いえ、そんなはずは……」


「私はレン! ――プレーヤーだ!!」


「プレーヤー?」

「もしかして……死んだ人間の意識を隠れNPCに?」

「そういうモンスターとは、これまでに何度か戦った事がありますね」


 フミノさんも、いわゆるプレーヤーモンスターとの交戦経験があったもよう。


「ていうかお前……なんか見覚えがあんだよな……どっかで会ったか?」

「いえ、無いと思いますけど?」


 こんな不良少女、一度会ったら怖くてなかなか忘れられないはず。


「……そういや私、元の姿と全然違うじゃん。身長、百八十センチ以上あったはずなのに!」


「女性で百八十センチは大きいですねー」


 フミノさんは、なんだか暢気ですね。


「つうかさ、私はまだ自分が死んだって信じられねぇんだけど。全然、死んだときの記憶ねぇし」

「最後に憶えていることは?」

「ああ……大規模アップデートの時に揉め事が起きて……黒い靄に落ちて…………そっからはよく憶えてねぇな」


 小柄なせいか、だんだん可愛く見えてきた……かもしれない。


「そうなんですか……ッ!」

「お、おい、どうした!?」

「イチカさん、しっかり!」


 フミノさんが、蹌踉めく私を支えてくれる。


「すみません……クエストで疲れてて」


 思っていたよりも、疲労が凄いのかも……。


「無理しない方が良いですよ」

「はい……私はそろそろ休ませて貰います。ニャモ、二人のお世話をお願い」

「畏まりました」

「二人とも、分からない事があったらニャモに聞いてください……」


 それだけ言い、フラつく身体を押して……私は二階のベットで深い眠りに落ちたのだった。


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