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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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549.剛直な魂と生き様

《『ギャアアァァァァfd4jvつ!!』》


 チョコの大蛇みたいな触手を無数に伸ばして、近くにいる私とケルフェを執拗に攻撃してくるチョコ女の化け物。


「アレが出て来てから、チョコ女の影は全然出て来なくなったけれど……まっずいな」


 使い所が限られる、一癖も二癖もあるスキルを好む傾向にある私のビルドは、ぶっちゃけ攻撃力に乏しい。


 火力はマリナとザッカルさんに任せていたから、余計にな~。


「“樹液弾”! “泥爆弾”!!」


 “泥爆弾の指輪”からの泥玉撃ちと合わせ、チョコの触手の動きを鈍らせていく。


 液状のチョコレートは水がちょっと入ると一気にダメになるって言うけれど……ツルツルだった液状のチョコに皺が生えたように黒くなって、見る見る鈍足になってくれる。


 泥は水と土の二属性らしいから、ゲーム的な理屈のおかげでこうなったのかな?


「“二重人格”」


 隠れNPC、ペルソナのサブ職業、“二重人格者”の固有スキルの一つを使用して、私の職業を一時的に戦士から魔法使いに変更!


 あらかじめ魔法使い用に構築しておいたビルドに強制変更され、装備も魔法使い用に。


「“二重魔法”、“氾濫魔法”――リバースプラッシュ!!」


挿絵(By みてみん)


 “栄光の杖”により生み出された二つの魔法陣より、二方向へと噴き出す水の奔流をぶっ掛ける!!


「よし!」


 一気に触手の動きが鈍くなった!


《『“邪悪猪古令糖魔法”――ウィケッドチョコレートスプラッシュぅぅぅdkbr!!!』》


 魔法名なが!!?


「“氾濫魔法”――リバーバイパー!!」


 汚いチョコの奔流に螺線を描くように纏わり付かせて、威力、速度を鈍らせる!


「――“万悪穿ち”!!」


 ザッカルさんによる万の黒槍が降り注いで、チョコレートの触手のほとんどがバラバラに砕けた! さっすが!


「……ありゃりゃ」


 あの膨れ上がった下半身から、あっという間に真新しい触手が。


「きりがない!」


 ケルフェの言うとおり、このままだと……。


「お前ら――どけ!!」


 ザッカルさんの方から――凄まじい力の圧力が!!



「――――“巨悪穿ち”!!!」



 黒い奔流の槍が、数多の触手を物ともせず――チョコの化け物女の膨れ上がった下半身を吹き飛ばした――――生えていた上半身にちゃんと足が付いた状態で、私を狙ってる!!


「――”連盾障壁”!!」


 連なる半透明な六角形の壁盾を作り出して、チョコレート腕の鞭を防いでくれるケルフェ!


「サンキュー」

「どう致しまして!」


 キツそうだな、ケルフェ。


 あの威力の攻撃、まともに受けたら……即死かな。


「……――ヤバ」


 神代文字が無いと、あっという間に意識を持ってかれそうに――――


「コトリ、ザッカルさんは疲労困憊です! 私達でなんとかしないと! ……コトリ?」


 父親に、身体を触られるのが嫌だった。


 狭いアパートに、精神的に不安定な両親との三人暮らし。


 二次成長を始めた私の身体を、アイツは舐め回すような目で――


「――イヤァァぁぁぁああああああッッ!!!」


 小さい頃から下世話な週刊誌や濡れ場が多いドラマを見ていた私には、その日、自分がなにをされるのか判った……解ってしまった。


 賢すぎた私は、自分が助かるためにはどうすれば良いのか……嫌悪と恐怖にまみれた思考に僅かに残った冷静な部分で……答えに至ってしまった。


 今ここで殺さなきゃ、私はいずれレイプされる。


 だって――この世に、私を助けてくれる人なんてどこにも居ないから。


 先生も、友達も、近所の人も、母親も。


 だから私は――少年院に入るしか無かったのにッ!!


「――コトリ!!」


 ケルフェの声と青白い無慈悲な輝きが、私を……今に引き戻してくれる。


「ケル……フェ――“二重人格”」


 職業ごと装備とスキルを戻して、黒棘の白金棒、“生を視ること死の如し”に六文字刻む。


「ああ、だいぶ楽になった」

「暢気か! 早く手伝え!」

「あいよ――」


 ケルフェを助けたいと自然体で思えた時、私の文字とケルフェの力が共鳴――それぞれの武具に九文字が刻まれる!


 ……誰かと繋がる感覚が、こんなにも心地良いなんて。


「へー、ケルフェって、私に嫉妬してたんだ。イッがーい」

「そういうコトリは、私をドスケベ馬とか思ってたのか!!」


 共鳴すると、お互いのこと結構筒抜けになっちゃうんだな~。


「お?」

「へ?」


 “生を視ること死の如し”が一回り大きくなって、四本の亀裂が先端から柄まで伸びた――“生き様を視ること死に様の如く”へ。


挿絵(By みてみん)


 ケルフェの刃の生えたバックラーは、“貫けぬもの魂のごとし”から、こちらも一回り大きくて手の甲側に短く、肘側には長い装甲刃が生えた――“貫けぬは剛直なる魂のごとく”へと変わった!


挿絵(By みてみん)


「“砂鉄盾術”――アイアンサンドバッシュ!!」


 “連盾障壁”に叩き付けられていた二本の腕が、障壁を対象に発動された砂鉄混じりの衝撃波によって跡形もなく吹き飛ぶ。


 でも、あの腕だって、代えがきく紛い物。


「この盾は、最強の盾であり最強の矛――“剛直なる矛盾”!! ――“魔眼”、“早駆け”!」


 額の第三の眼でチョコレートの鞭を全て見切り、不気味な女へと肉迫――無敵の金属塊となった“貫けぬは剛直なる魂のごとく”を、纏うエネルギーごと叩き込み――チョコレー(どろ)女を地面へと叩き付けた!!


《『ぅぅあ……』》


「“閃光の如き生き様”」


 “生き様を視ること死に様の如く”の亀裂から白い光を煩いくらいに発光させながら、超スピードで肉迫――連打で瘴気纏う影の身体を削っていく!!


 すると、女の身体の内側から赤い光が漏れ始めた!!


「“英雄が如き死に様”」


 黒の闇を亀裂から噴出させながら――大きく振りかぶる!!


「――――“殴打撃”!!」


 噴出する闇で強化された致命の一撃が、女の身体を原型が留めない程消し飛ばす!


「ハアハア――な!?」


 残った赤い結晶で出来た心臓のような物から触手が生えて、私を攻撃してきた!!



「――――“穿孔脚”!!!」



 私に迫る赤い触手の槍ごと、赤の心臓結晶を貫いたのは……ケルフェの脚甲、六文字刻まれた”蹴り飛ばせぬもの魂のごとし”のつま先部分。


 そこに私達の青白い光が入り込み――赤の心臓結晶は砕け散って……消えていった。



『シャドウ・グリードの本体、汚染されし隠れNPC、“バレンタイン”が――討伐されました』



 無機質な誰かの声が響くと、全てのシャドウ・グリードが消え……ブラックエリアは光へと包まれていく。


おまけ

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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