547.悪を討ち滅ぼす者の在り方
『ホタルとかいう女、よくもデスアーマーをアッサリと』
一体でも規格外の奴を複数体出すために、デスアーマーはブラックエリアの外には出られないという縛りを設けたって言うのに。
『十ステージで一体、三十ステージで六体、四十ステージで十体、七十ステージで二十八体……私がクエストのボスキャラとして用意した本来の切り札』
ステージによってステータスのバランス調整が入っているとはいえ、アレは元々九十ステージから出て来る予定だった強キャラなのに!
『……まあ、良いわ』
隠れNPCシャドウ・グリード、その本体はデスアーマーを超える私の最大最強の切り札。
ユウダイ・コセは殺せずとも、奴の仲間の一人や二人は確実に葬れるはず。
『大きなリスクを負ってでも難易度を上げたのよ? 確実に成果を出さなければ!』
クエストに釣られて死んだバカ共が、何千人居ても関係ない。
なんとしてでも、神代文字の使い手を葬らなければ!!
●●●
「――“万悪穿ち”!!」
“万の巨悪を穿て”を万の槍と成し放ち、チョコ女共を大量に仕留める!
「“絶滅”――“逢魔剣術”、オミナススラッシュ!!」
数の暴威を減らすために、消えかけていた影を切り裂いた。
「……ダメか」
“絶滅の剣槍”の“絶滅”には同種のモンスターを強制的に仕留める効果があるんだが、コイツらには通じねぇらしい。
『侵入者には……死を』
「おわっと!?」
金棒を持った不気味な甲冑野郎の攻撃を、紙一重で回避!
「単純に強そうだな、コイツ」
“絶滅の剣槍”を背にしまい、戻ってきた黒の剣槍に六文字刻む。
「ザッカルさん!」
「ケルフェ、お前はコトリと一緒に周りの数を減らせ!」
俺らが敵を引き付けておきゃ、他の三パーティーがどうとでもすんだろう。
「上だ、ザッカル!」
アルーシャの声に前に跳んで、なんとか剣の一撃を回避!!
「もう一体来やがったか」
甲冑野郎が二体……まあ、どうとでもなっか。
「“超高速”」
“冥界王の真黒鎧”の能力で加速し、黒の剣槍で金棒野郎に切り付ける――が、普通に金棒で受けられた!!
こっちの動きに反応してきたばかりか、武器で受け止めやがっただと!?
「“太陽法術”――ソーラーレイ!!」
アルーシャが光線を放つも、すぐに後退して躱す甲冑野郎共。
「油断するな、ザッカル。アレは強いぞ」
「らしいな」
並ぶアルーシャが頼もしいぜ。
「だが、チンタラやってる暇はねぇ。一気に決める! ――“万悪穿ち”!!」
槍の黒雨を落とし、躱しきれずに動きが鈍った所で“超高速”を使って接近!!
――“レーザーソード”で胴をぶった切ろうとしたが、半ばまで斬り込んだ所で紅の金棒に防がれた挙げ句――奴の鋭い尻尾に脇腹を浅くブッ刺されたッ!!
「“砂漠魔法”――デザートウェーブ!!」
アルーシャの砂の波を“超高速”で避けると、金棒野郎の方は砂に埋もれる。
「――アルーシャ!!」
剣持ちが、アルーシャに斬り掛かった!!
「“砂泳ぎ”!」
アルーシャが、自分で作り出した砂に入って回避。
しかも――金棒に砂を吸わせて出てこようとしている黒甲冑の背後の砂から、飛び出した!?
「“砂漠武術”――デザートブレイク!!」
“薙ぎ潰しのモーニングスター”Aランクが、甲冑野郎の頭に直撃してヘルムがひしゃげた!
「私では決定打が足りない。ザッカル、お前が頼りだ」
「マジか」
生意気なアルーシャに頼られんのは、なんか嬉しいけれどよ!
“鳥獣戯画”を使った砂鮫女は、俺達にチョコ女共が近付かねぇように立ち回ってるし、援護は期待できねーな。
「猛禽恐竜!! “岩石王鎚”!」
走竜が剣持ちへと飛び掛かり――胸を貫かれた!!
「“砂漠武術”――デザートハンマー!!」
浮かぶ岩石の鎚が金棒持ちをぶっ飛ばし、剣持ちの方へと飛ばした?
「決めろ、ザッカル! “砂漠魔法”、デザートロック!」
二体の足元に砂を移動させ、固めて身動きを封じただと!?
しかも、”岩石王鎚“を叩き付けて金棒野郎を完封しやがった!
「やるじゃねぇか――武器交換、“滅剣ハルマゲドン”」
“絶滅の大剣”から、刃の無い黒十字の大剣に持ち替え――神代文字の力を注ぎ込む。
「“跳躍”」
俺が落下を始めた瞬間、剣持ちに組み付いていた恐竜が光に変わりだした――マズい!!
無防備なこの状態で迎撃行動を取られたら――
「――“黄泉がえり”!」
アルーシャが自身のスキルで、消えかけていた猛禽恐竜を復活させやがった!
「いけ、ザッカル!!」
「おうよ――――“終末の一撃”!!」
バカみたいに頑丈な黒甲冑二体を……純粋な暴虐で吹き飛ばしてやったぜ。
「ザッカル!!」
アルーシャの悲痛な叫びが聞こえてきたと思ったら――そのアルーシャが俺を庇って……吹き飛んでいく?
「――ッ!!」
反応が遅れてしまったために、脆い“滅剣ハルマゲドン”で攻撃を受けちまう!!
「破損状態になっちまったか!」
黒十字の大剣が、勝手に消えちまう。
「無事か、アルーシャ!!」
鮫女がアルーシャに素早く寄り添うも、アルーシャは動かねー。
「テメー、よくも!!」
三体目の不気味な黒甲冑を見詰める。
両肩から、関節付きの黒い鉤爪を生やしたクソ野郎を!!
「テメーをぶち殺すッ!! ――“獣化”!!」
黒豹の人獣となって、“万の巨悪を穿て”と“レーザーソード”で畳み掛ける!!
『ガッ!!』
手数が違いすぎて、攻撃を去なされながら蹴りを入れられたッ!!
『舐めんなッッ!!』
突っ込んできた所を人獣の膂力で無理矢理薙ぎ払い、今度は俺から距離を詰める!!
『――“残虐の爪閃”』
『“超高速”!!』
闇を纏った鉤爪によるカウンターをすんでで回避――後ろに回り込んだ!!
『“逢魔剣術”――オミナ……』
尻尾が……鎧の隙間から……腹を貫いて……。
「“砂漠武術”――デザートブレイクッ!!」
黒甲冑が”岩石王鎚”によってぶっ飛ばされ、衝撃で尻尾も抜けた……。
『ハアー、ハアー』
“獣化”の再生能力が無かったら……死んでたな。
「世話が……焼ける」
『助かったぜ、アルーシャ』
立ち上がれもしねーくせに、助けてくれるとはよ。
「頭を冷やせ……バカ主」
『冷やさせる気あんのか、お前?」
穴が塞がったところで“獣化”を解いて、荒ぶった気を鎮める。
「スー……フーー」
チョコ女共は、黒甲冑の邪魔をしないためかこっちに来ねー。
なら、一対一に集中出来る。
“万の巨悪を穿て”に九文字刻み、“超高速”と“四連瞬足”で翻弄しながら――削っていく!!
コイツ、対応力が高くて決定打を繰り出す隙をくれない。
二刀流じゃ一撃の重みが足りず、かといって手数を減らせば追い詰められる――目の前の悪魔みたいなクソ野郎を倒すのに必要なのは、手数と重み!!!
――――かつてないほどの集中力に、自身の意識が青い奔流に解けていく。
「――ハァッ!!」
十二文字刻まれた新たな剣槍、“万の巨悪を討ち滅ぼせ”を、両手で思いっ切り叩き付けて後退させた。
「――“悪魔の光線槍剣”」
剣槍の柄が縮み、融合して柄頭となった“レーザーソード”の部分から光の剣槍が伸びる。
これが、俺の意志が導き出した一つの頂き。
「もうお前は、俺の敵じゃねぇ――――“神代の光剣槍”――“四連瞬足”」
光線の剣槍を神代の刃に変え、奴の四肢を切断――黒金の剣を胸へと突き刺した。
「“逢魔剣術”――――オミナスブレイク」
内側から黒の衝撃波を炸裂させ、黒甲冑野郎を四散させて葬る。
「ハアハア、手こずらせやが――」
《『――――ぁぁぁああああああああsh4jogj!!!!』》
――息つく暇もなく、背後で何かが産声を上げた気がした!!




