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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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541.救済される者とされぬ者

「よし!」


 異世界人エリアで、かつての仲間を生き返らせることに成功する。


「また……ケイコに会えるんだ」

「感傷に浸るには早いぞ、オゥロ」

「分かってるよ、マズダー」


 そう、私達が生き返らせたい仲間はもう一人居る。


「とはいえ、獣人エリアは異世界人エリアの真向かい。ちょうど反対側だ。どうする?」


 マズダーが言いたいのは、謎の黒エリアを通るかどうかだろう。


「まだ時間はある。下手にリスクを負う必要は無い。エルフエリアを経由する」


 ここから進むルートは三つ。時計回りのエルフエリアルートと反時計回りのフェアリーエリアルートに……真ん中の黒エリア。


 フェアリーエリアルートだと、獣人エリアに辿り着くまでにフェアリー、その他、ドワーフ、鳥人の四つを経由する必要がある。


 対し、エルフエリアルートならエルフ、人魚、ホーンエリアの三つで済む。


「よし、行こう」


 オゥロが率先して飛び立ち、エルフエリアの入り口を確認してくれる。


「向こうだ! 付いて来い!」

「気を付けろよ、オゥロ!」

 

 異世界人エリアに眠る死者の数は最多。その分、人も多い。


「あれ、イチカ達だ」


 私達の進行方向から道数本分ずれた場所で、墓を掘っている姿が。


「……なんでイチカに掘らせてるんだか」


 あのパーティーの最大戦力であり、唯一まともに戦える人間にスコップを持たせている意味が解らない。


 しかもイチカ一人に掘らせているし、二人はイチカが掘っているのを見ているばかりで周りへの警戒がまったくなっていない。


「イチカが不憫で仕方ないな」

「勿体ないよね、色々」


 とはいえ、構っている暇は無い。


 私達はあくまで、いざという時に互いのピンチを助け合い、余力があれば生き返らせるのを手伝う。というだけの協力関係に過ぎない。


「ホタル!」


 オゥロが高度を下げて来たと思ったら、目の前から犬モンスターが多数。


「ベルハウンドの群れか」


 コイツらには、喉からベルような音を出して仲間を呼び寄せるという能力設定があった。


 公式ネット販売限定設定資料集、イラスト多数掲載の2400円ブック(税別)、”ダンジョン・ザ・チョイスの裏側・第三巻”に書いてあったから間違いない!


「とっとと蹴散らして進む! “雷撃”!!」


 “ガリバーの眼”から雷を放ち、ベルハウンドを纏めて感電。三人の通常攻撃でとっとと葬った。



●●●



「……おい、まだか!」

「は、早くしなさいよ!」


 二人とも怯えるばかりで、全然周囲に意識が向いていない……急いで掘り終えないと。


 スコップの先端から、硬い感触。


「よし、どけ!」


 私を押しのけ、奪ったスコップで乱暴に……効率悪く掘り始めるシンゴさん。


 私に土が飛んで来るも、彼はまるで気付いていない。


「おい、何してる! サボんなよ!」


 やむなく穴から出ると、文句を言われてしまう。


 ――頭が逝かれてんのか、テメーは!!!


 などとはおくびにも出さず、スコップを返して欲しいと諭す。


 そうすると、ほとんど見えるようになっていた棺桶に向かってスコップを叩き付け、穴から出て来るシンゴさん。


 その行動に恐怖と呆れを感じながらも……形容しがたい疑問が込み上げてきた。


 無言に包まれた空気を余所に、私は引き続き土を除けていき、棺桶を露出させる。



『開始から一時間が経過。闇は深まり、更に強暴なモンスター達が冒涜者達を狙う』



「チ! 早く開けろよ!」

「そ、そうよ!」

「――お前もルッせんだよッ!!」

「ヒッ!! ご、ゴメン……シンゴくん」


 恐怖に囚われた二人は、軽蔑したくなるほどに見苦しい。


 蓋に手を掛け、反対側に押し出す。



○“命の砂時計“を使用しますか?



「よし!!」


 シンゴさんが歓喜の声を張り上げた瞬間――私は反射的にチョイスプレートを操作し、“命の砂時計”を使用していた。


「……は?」


 自分で……自分の行動が理解出来なかった。


「おい、どういう事だ? なあ?」

「……クエスト終了後に、彼女は奴隷から解放しますので」


 いえ、“隷属の印”がある以上、奴隷から解放するのはおそらく――



「――ふざけんなッッ!!」



 自分の行動への動揺と相まって、シンゴさんの激怒に身体が萎縮するッ!!


「ようやくあのクソ女に仕返ししてやれんのに、奴隷から解放なんてされてたまるかッッ!!」


「……彼女は、二人の仲間では……」

「いつそんなこと言ったよ? テメーが勝手にそう思ってただけだろうが!!」


 振るわれた剣は私の頭飾り、“主の恩恵の冠”に当たって逸れる。


 ……少しズレていたら……私は死んでいた。


「クッソ!! どいつもコイッ――ツもよぉぉぉぉ――――」

「シンゴ……くん?」


 彼の胸から飛び出していたのは……なんらかの刃物。


 それは波打った赤い刀身をしており、すぐに胸から抜かれ――女性の絶叫が……また一つ。


「よくも……――私の依頼者を!!」


 穴から飛び出すと、そこには一つ目甲冑の巨漢が佇んでいた。


 さっきの剣以外にも、鎖鉄球を手にしている。


「装備セット1――“鞭化”」


 コセさんから譲り受けた“ヴァンパイアキラー”上部を、鋭利な鞭とする!!


「――“殴打撃”!! ――“大斧化”」


 鎧の上から強烈なのを打ち込んで体勢を崩し――掴んでいる下部分が伸びて、両端の突起部分が両刃の斧へ!!



「“聖炎水斧術”――バーンセイントスラッシュッ!!」



 一つ目の巨漢を斬り伏せ、倒しきった。


 ……けれど、依頼人の二人の姿は既に無くなっている。


「…………これで、依頼失敗は三度目」


 どうして、こうも上手くいかないのだろう……。



「私はただ……償いたいだけなのに」




●●●



 “命の砂時計”を使用し、ようやくアオイの人権を確保した。


「モンスターの襲撃がしつこいのには驚かされたけれど……間に合って良かった」


 アオイの墓にたどり着くまでに幾つか墓が消えるのを目の当たりにしたときは、さすがに肝を冷やした。


「これで一安心ですね」

「ああ」


 アヤナを悲しませずに済みそうだ。


「よし、残り一人だ」


 《ザ・フェミニスターズ》から、生き返らせて欲しいとお願いされたのは二人。


 一人は獣人で、もう一人は……あの十手使いの女、ミキコ。


「どうかしましたか?」


 トゥスカに尋ねられる。


「いや」


 妙な因縁がある相手なんだけれど……まあ、今は関係ないか。


「タマコから依頼された二人、どっちもアイテムをまったく持って居ないなと」


 元から気にはなっていたけれど、話を逸らすためのネタにしてしまった。


「遺言機能だろう。そうでなければ、モンスターに殺されたか事故死した人間が、なんのアイテムも持っていないなどあり得ない」


 エルザの予想は、おそらく当たっている。


「てことは、元の装備は全部タマコが持ってそうだな」


 遺言機能の対象にしているなら、相当な仲間意識があるのだろう。


 男の俺がリーダーやってるレギオンに、男差別の権化のような女が、仲間を生き返らせて欲しいとお願いしてきたわけだし。


「ユウダイ様、アレを」

「へ?」


 ナターシャの視線の先に居たのは、フラフラと歩いている……――イチカさん!?


「あのバカップルが居ない……」


 取り敢えず、彼女を保護しよう!


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