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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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538.第二回大規模突発クエスト・死者の墓を曝け

「うー、お腹空いた~」

「飲み物だけにしておけ。それと、飲み過ぎるなよ。動けなくなるから」


 クレーレにあったかいスープを差し出す。


 胃が痛くならないよう、具がほぼ無しのコンソメスープ。


 もうすぐ、クエスト開始時刻。


 四十ステージから大規模突発クエストに出る《龍意のケンシ》メンバーで、食堂に集まっていた。


「おはよう」


 食堂に入ってきたのは、眠そうな顔のアヤナ。


「わざわざ見送りに?」

「私がお願いしたんだし、当然でしょ」


挿絵(By みてみん)


 意外と義理堅い……意外でもないか。


「……全員、生きて帰ってくんのよ」

「人間以外なら、一応生き返れるけれどな」


 隠れNPC、ヘケトの固有スキルがあれば。


「怒るわよ、コセ」

「解ってる。俺も、わざわざ試すつもりも、試させるつもりも無い」


 復活したとして、それが本当に今の俺である保証なんてないわけだし。


 そしてそれは……今回生き返らせようとしているアオイにも言えること。


 死んだアオイを再現した、まったく同じ別の何かではないと……断言は出来ない。


 大切な物が壊れ、まったく同じ物を買い直したとしても、かつてのような愛着を抱けないように。


「四時十分です、ご主人様」

「よし、気合い入れろよ!」


 急に緊張してきた。


「コセ」


 急に頭を掴まれて――唇を奪われる。


「……待ってるから」

「……ああ」


 アヤナとルイーサのために、絶対にアオイを連れて帰ろう。



            ★



 身体が光に変わりだしたと思った次の瞬間、俺達は霧深い闇夜の墓所に居た。


 身体はほとんど動かせず、近くにはパーティーメンバーであるトゥスカ、エルザ、ナターシャのみ。


 ……離れた位置に、知らないプレーヤーの一団が三つ。


 クオリアどころか、ホタルもイチカさんも見当たらない。


『ようこそ、第二回大規模突発クエスト・死者の墓を曝けへ』


 女のような喋り方の男の声が、虚空に響く。


『簡単なルール説明をしておくわ。まず、制限時間は開始宣言から三時間。生き返らせるのに必要なアイテム、“命の砂時計”はNPC以外のプレーヤー全員に一つずつ与えられている』


 チョイスプレートを出し、確認。


『もう一つ。全ての参加者のチョイスプレートには、“冒涜者のスコップ”が配布されているわ。貴方達は、そのスコップを使ってお墓前の土を掘り、棺桶を開けて“命の砂時計”を使用する。生き返らせた奴隷は、クエスト終了後に貴方達の物。特別大サービスで、復活者には“隷属の印”というスキルが与えられている』


 “隷属の印”?


『この印を持つ者は、生涯奴隷。主の命令には絶対服従であり、他者には奴隷として譲る事も可能』


 ――胸糞悪いルールを。


『“境界の墓所”たるそのフィールドには強力なモンスターが跋扈し、お前達を襲う』


 スコップと“隷属の印”以外は、ある程度知っている情報。


『最後に、特別なルールを教えるわ。既に誰かを生き返らせた人間を殺せば、“命の砂時計”を使われていた死者をリセットすることが出来るわ』


 ここに来て、プレーヤー同士の争いを誘発させる要素を。


 観測者は当然、俺達がヘケトのサブ職業、“蛙の女神”を持っているのを知っているだろう。


 俺達を潰したい奴等が、プレーヤー同士で敵対する要素を入れてこないはずがなかった。


『ちなみに、“命の砂時計”はクエスト限定アイテムではあるけれど、殺して奪うことも可能よ。殺した相手の使用済み分も含めてね』


 一気に諍いの種を増やしやがる。


『時間も頃合い――第二回大規模突発クエスト・死者の墓を曝け! スタート!!』


 開始の合図が出た途端、地中から白骨のモンスター、スケルトンが無数に飛び出してくる。


「“鎮魂歌”――ァァァアアアアア!!」


 すぐさま対処してくれるナターシャ。


 弱いモンスターとはいえ、“鎮魂歌”が無ければ怪我の一つや二つは負っていたかもしれないくらい急な襲撃だった。


「ありがとう、ナターシャ」

「これくらい、当然ですよ」


 一線を越えてからというもの、ナターシャはどんどん表情豊かになっていく。


「おい、現在位置はどうやら、エルフのエリアの真ん中みたいだぞ」


 エルザが、チョイスプレートを見ながら教えてくれる。


 よりによって、一番用が無いエリアか。


「すぐに異世界人エリアに移動する!」


 俺達の第一目的はアオイ。それ以外は二の次だ!



●●●



「私達が居るのは、鳥人エリアみたい」


 地図で現在地を確認。


「では、移動しましょう――地獄の番犬」


 三首の巨犬を呼び出し、乗り込むクオリア姉。


 クオリア姉の凄さを目の当たりにしてきた事で、クオっちからクオリア姉に改める事にしたんだよね~。


「それで、どちらに向かうのだ?」


 プレベールのレミっちに尋ねられる。


「すぐ隣が獣人エリアだから、そっちに行こう」


 異世界人エリアはちょうど反対側だし、良くも悪くもギオジィ達と合流出来るかも。


 まあ、どこに居ても、まずは異世界人エリアに向かっただろうけれど。


「では、私が先行しましょう」


 格好いい系の美女の脚が陸上動物の後ろ脚のようになり、高速で駆けていく……スパッツ丸見えだよ。


「“獣化”」


 雪豹の人獣となって、レミっちを追い掛ける。


「お、女じゃん!」

「チ、見逃してやるか」


 下卑た感じの男四人組とニアミスしたけれど、向こうには向こうの目的があったみたい。


 このクエストに参加している人達は、基本的に誰かを生き返らせる事が目的のはずだから、人間同士の潰し合いに発展するのは後半からかな。


 “命の砂時計”を奪えるって知ったのは、開始直前。


 つまり、奪えない前提でクエストに参加しているはず。


『アレが、エリアを繋ぐ門?』


 黒い靄の空間に、ぼんやりと発光する白い枠。


 “獣化”状態の私でも、余裕で通れるくらいの大きさ。


「行きます」


 スピードを上げたレミっちが門を潜った――瞬間、爆発と共に吹っ飛ばされてきた!?


「レミちゃんッ!!」


 クオリア姉の心配げな叫び。


「……問題ありません、クオリア様」


 両腕を盾のように変形させ、直撃を避けていたレミっち。


「念のため、距離を開けて先行して正解でした」


 レミっちが睨みつける先、門から二人組の男が出て来た。


「へー、三人も居たのか」

「“獣化”持ちの獣人。ちょっと面倒かな」


 一人は粗暴そうで、もう一人は大人しそうな眼鏡。


「“命の砂時計”を寄越せ。そうしたら見逃してやるよ」


 粗暴な方が、下舐め釣りしながらふざけた事を口にする。


「クオリア様、クレーレ様、少々自分にお時間を」


 レミっちの両腕が、大刀のように鋭くなる。


挿絵(By みてみん)


「――すぐに片付けますので」


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