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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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537.プレベールメイドのレミーシャ

「今日は張り切ってるな、コセ」


 リューナが、俺がご飯を作っている姿を見ながら呟く。


 現在三十七ステージに居る面子は、メルシュ達と合流してから攻略を開始することにしたため、暇らしい。


「最近は任せきりだったからさ。久し振りに、思いっ切り腕を振るってみたくなったんだ」


「なんか摘まもうかと思って来たんだが、まだ仕込みの段階か」


 ザッカルが神秘の館の厨房に顔を出す。


「夕食の仕込みだからな」


 クエストが終わるまで三十ステージから動けないザッカル達も、暇を持て余して居るのだろう。


「ちょっと待ってろ」


 塩、胡椒を利かせたマッシュポテトにホワイトソース、茹でて水気を取ったほうれん草、角切りにしたベーコンを混ぜ、二種類のチーズをトッピングしてオーブンへ。


 数分後にグラタン皿ごと取り出し、コルクの鍋敷きに置く。


「皿が熱いだろうから、気を付けてな」


 本当は、シメジとほうれん草をバターで炒めてから混ぜる予定だったけれど。


「お前、手際良すぎだろ」


 普通に料理できるリューナにそう言われると、褒められた気分になるな。


「クソ美味そう! これ、コトリ達に持っていっても良いか?」

「ああ、良いよ」

「へ……」


 残念そうなリューナ。


「なんだ、食べたかったのか?」

「そんな美味しそうな物を、愛しの旦那様が作ったんだぞ? 食べたくないはずがないだろ!」


 本当に嬉しい事を言ってくれる。


「夕食の時に出すつもりだったけれど、この料理は昼飯にしようか」


 そろそろ、発酵する機械からバケット生地を取り出すかな。オーブンも暖まってるし。


 この辺の調理器具は、サトミの自腹によっていつの間にか充実していた。


 燻製機やパンをこねる機械、ケバブやバームクーヘン用の調理器まであるのは畏れ入る。


「ギオジィ、クエストの連絡が来てる――ぅんまそぉぉ!!」


 クレーレが涎を垂らしそうな勢いで、目の前のグラタンもどきに目を奪われた。


「それで、連絡って?」

「チョイスプレートを開けば見られるはずだから、自分で見て!」

「おい、クレーレ。これは俺達の分だからな。食うなよ?」

「ええ、ザッカル姉とリューナ姉だけ狡いよ!!」

「いや、私の分はまだだから」


 このレギオンにクレーレが馴染んで居るようで、なんだか見てて安心する。


 一番仲が良いのが、クレーレの半分くらいの年のモモカと野生児バニラって言うのは、ちょっと不安だけれど。


 ……近いんかな、精神年齢。



○第二回・大規模突発クエストの受け付けは、12:00を持って終了しました。


○参加者各位には、クエストの更なる情報を提供。


○開催日時は、六月二十二日の04:11。


○以下は、クエストの舞台の地図となります。


挿絵(By みてみん)



 地図は、複数の四角と方角マークが書かれているだけの物。四角内に道などは特に描かれていない。


「黄色い囲いが異世界人、赤い囲いが獣人、青が人魚、緑がエルフ」


 茶色が鳥人、紫がホーン、銀がドワーフ、ピンクがフェアリー、金が……その他? なんだこれ。


「この枠内に、死んだ人間が種族ごとに居る……というわけか」


 黄色い枠が一番大きくて、次が赤……それだけ、異世界人と獣人の死んだ割合がずば抜けて多いのだろう。


 あくまで、人間による他殺以外の要因で死んだ人間だけだけれど。



○空は飛行できますが、一定以上高度を上げると見えない天井にぶつかります。


○枠はエリア分けであり、別のエリアに行くには決められた出入口、門からしか移動できません。



 四角のエリアは円状に並んでおり、重なり合っている部分に出入口らしき白い線が入れられているカ所が。


「うん?」


 円の中心に真っ黒な四角が浮かび上がり、そこからそれぞれのエリアへと繋がる通路のような物が伸びる。


「ここを経由すれば、ショートカットに使えそうだけれど……」


 十中八九、何かあるな。



○転移後は、地図上に現在位置が表示されます。


○それでは、開始時間までご緩りとお待ちください。



「朝の四時過ぎか……」


 今夜はさすがに、アッチ方面は控えて貰おう。


「……――あ!!」


「ど、どうしたの、ギオジィ?」

「バケット、発酵させ過ぎたかも!!」


 クープを入れるときに潰れちまう!!



             ★



「初めまして、旦那様。奥様。プレベール族のレミーシャと申します」


挿絵(By みてみん)




 気合の入った夕食準備に区切りを付けたのち、食堂でクオリアの使用人NPCに命を吹き込んだ。


 灰色の肌に、緑瞳を彩る長い睫毛。


 太股まで伸びた、赤紫の艶やかな鋭い髪。


 そのエキゾチックな雰囲気に、ハッキリ言って全然似合わない白フリルの侍女服は、肩から先の布が無く、スカートももの凄く短い。


「コセ……」


 リューナの真剣な眼差し。


「――ナイスだ」

「だと思ったよ」


 リューナは、美女なら全肯定するきらいがある。


「どれどれ…………コセ、この女……スパッツだぞ」

「屋台に顔出すみたいに、他人のミニスカートを捲らないでくれる?」


 屈んでスカートを持ち上げている妻の姿は、夫としてかなり恥ずかしい。


「なんて酷い仕打ちなんだ!! どんな度エロい下着を身に着けているのかと、楽しみにしていた私の純情を返せ!!」

「日本ではそれを不純、もしくは(よこしま)な感情と言う」


 俺が人生で初めて接するロシア人はアンタなんですよ、リューナさん。ロシア人に対して偏見を抱いちまうよ。


「――無礼者!!」

「ヘブ!?」


 綺麗なビンタの音は、レミーシャの手の平とリューナの頬から響いた物。


「大旦那様の奥方の一人といえど、このような無礼は許さない! 自分の主は、クオリア様なのだから!」


「性格は、プレベール族の基本的な人格という設定にしていたけれど……」


 クオリアは、伝説の種族がどのような者達だったのか知りたかったらしい。


 内緒で、絶対に主を裏切らないという設定だけは追加したけれど。


 プレベール族って言うのは、かなり硬っ苦しいタイプというか、忠義立てするタイプみいたいだ……俺の追加設定のせいじゃないよな?


「も、問答無用で私がぶたれるなんて……良い♡」


「ダメだ、アイツ」


 もしかしたら、スヴェトラーナ達にもうすぐ会えるかもという不安と期待に、リューナの情緒がおかしくなっているのかもしれないけれど。


「クオリア様。それとも、奥様とお呼びした方が?」

「く、くくくくクオリア様!? わ、わわわわ私を様付け!?」


 敬われる事に慣れていないクオリアが、かつてない程慌てている。


「く! 今更ながら、AIチップを手放したのが惜しくなってきた!」


 リューナが手に入れた分は、ザッカルに渡したからな。


「で、では、私の事はクオリアと」

「クオリア様ですね」

「い、いえ、呼び捨てで良いですから!」

「仕えるべき方を呼び捨てにするなど、許容出来かねます」


 レミーシャは、忠義はあっても従順ではなさそうだ。


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