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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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536.明けの鬼京

「イメージに近いのは、平安京かな」


 建物の雰囲気もそうだけれど、都市が四角い塀の中に造られている。


「朱色の建物が目立ちますね。独特な雰囲気と言いますか、少し不気味です」


 トゥスカの率直な意見……まあ、俺も似たような感覚だけれど。


 そう言えば、俺は京都に行ったことが無いな。


「おい、さっさと行くぞ! お前達のせいで、今日にずれこんだんだからな!!」


 もはやそういう芸なのかと疑いたくなるほど、全てにおいて一言多いシンゴくん。


 間違いなく向こうの方が年上なんだけれど、言動が実弟に似ているのもあって、出来の悪いクソガキに見えてきた。


 モモカやバニラみたいな良い子に接するように対応したら、間違いなくつけ上がるタイプ。


「ああ、悪い」

「なんだ、随分素直じゃないか。最初からそういう態度でいれば良いんだ」


 相手にされないほど見下されているとは気付けないのだろうか、このガキは。


 アイツの彼女以外の女性メンバーから向けられる嫌悪感にも気付かず、意気揚々と祭壇を下りていくシンゴくん。


 祭壇は都の中心地に位置しており、階段は北側を向いているようだ。


「あれは……」


 灯台下暗しと言うべきか、下り始めてようやく、都市の雰囲気に場違いな白い設営テントを発見。


「ザッカル様が仰っておられた、大規模突発クエストの受付所かと」


 祭壇前の広い空間は、本来存在しないものを設置するのに持って来いか。


「よし、間に合ったぞ!」

「あ、待ってください!」

「置いてかないでよ、シンゴくーん♡」


 勝手に駆け降りていくシンゴを、慌てて追い掛けていくイチカさん……普通に可哀想だ。


 テント前には、看護師のような格好の女性NPCが。


「第二回大規模突発クエストの参加受け付けは、こちらとなっております」


 中に入ると、分かりやすくカウンターが置いてあり、シンゴ達が参加申し込みをしているようだった。


 空いているカウンターのNPCの前に移動する。


「参加申し込みの方ですか? まずはこちらをどうぞ」


 ザッカルに見せて貰った、例のリストが表示される。


「こちらが、復活対象に出来る死亡者リストとなります」


 和やかな声で、ハキハキと不気味な事を口にする受け付け嬢。


「こちらのリストは、今回のクエスト終了まで、チョイスプレートからいつでも確認可能です」


「参加手続きをお願いします」

「こちらに手の平を置いてください」


 レーダーサイトのようなチョイスプレートが出現。


「参加は個人個人で行うんだったか」


 クエスト開始までは、パーティーは自由に変えられるらしい。


 右手の平を置くと、レーダーサイトの周りをラインが走って、一周しようとしている?


「奴隷の方は強制的に参加扱いとなりますので、お気をつけください」

「いや、もっと早く言えよ」


 地味に大事な事だろ……別に問題無いはずだけれど。


 ラインが一周する。



○以下の人物の第二回大規模突発クエストの参加手続きを完了しました。


     異世界人 ユウダイ・コセ

      犬獣人 トゥスカ

ヴァンパイアロード エルザ

   バトルメイド ナターシャ



 俺はフルネームなのに、トゥスカ達は名前だけ……やっぱり、この世界の人間には名字、またはそれに類する言葉が無いのか。


「こちら、ルールと開催日時が記された物です。お受け取りください」


 前にザッカル達から見せて貰った、例の紙を受け取った。


「……明日の早朝か」


 丸一日あるとは言え、あまりゆっくりしている時間は無さそうだ。


 順当にクオリア、クレーレの手続きが完了したのち、ホタル達とは別れ、俺達は魔法の家へと戻ることにした。



●●●



「…………やっちまった」


 床に手を付いて落ち込んでいるコセ。


「参加受け付けしたことで、クエスト終了まで隠れNPCのトレードが出来なくなるなんてな」


 私の言葉に、ますます身体を小さくしてしまうコセ。


「メルシュから情報が入らないとはいえ、クエスト自体に支障は……な、無いわよね?」


 可愛らしく仁王立ちを決めているメルシュに尋ねるアヤナ。


「まあね。四十ステージの情報が入らないってだけで、元々クエストの情報は、私も出回っている以上の物は知らないし。エルザの代わりに私が出られるなら、また違ったかもしれないけれど」


 落ち込む必要が無いと解ってか、少し丸めた背中の位置が高くなるコセ……なんか可愛い。


「それじゃあ、私達はそろそろ三十七ステージに向けて出発するけれど、他に共有する情報とかはある?」


「ああ、“魔除けの夜叉像”は手に入れたぞ」

「それなら、ヤクシーと契約出来るね。場所は、西区にある鬼京城の最上階だよ」


 ジュリーが契約場所を教える。


「と言っても、今は契約可能な人間が居ないから保留だな」


 隠れNPCと契約出来るのは、基本的に異世界人だけ。


 スゥーシャがスライムの隠れNPCと契約している状態だから、つい忘れていた。


「サブ職業だけ手に入れるって手もあるけれど、鬼属性中心のビルドにしないとイマイチだからね」


 メルシュとしては、隠れNPCその物を手に入れた方がメリットが大きいと考えているらしい。


「おい、そろそろ行かないと待ち合わせ時間に遅れるぞ」


 私の隠れNPC、フェルナンダが教えてくれる。


「今から、アテル達と攻略か」


 コセの呟き。


 昨日、私達はとうとう《日高見のケンシ》に追い付かれてしまったのだ。


「ルイーサ……大丈夫か?」


「ん? ……ああ、問題ない」


 無いこともないけれど……自分でも、コセにどう伝えたら良いのか分からない。


 出口があるのか無いのかも判らない、捉えどころのない迷宮に入り込んでしまっているようなこの感覚は。



◇◇◇



『フー……三十七ステージで突発クエストを起こされた時はどうなるかと思ったけれど、間に合ってくれたようね、ユウダイ・コセ』


 しかも、たった六人で来てくれるとは。


『厄介な女達と一応の協力関係を築いたようだけれど、正規メンバーでなければ協力関係は打算まみれのはず』


 追い詰められれば、簡単に裏切るのが世の常。


『さて……せっかく手に入れた()()()、どんな風に今回のクエストに生かそうかしらね』


 SSランクと神代文字を使用した奴等を追い詰めた、この()()()()の欠損データは。


『ん? 緊急連絡事項?』


 送られてきたメールを読む。


『第八ステージにて、SSランクアイテム所持者が…………死亡? やったのは、一人の異世界人プレーヤー』


 つまり、強力なSSランクがまた、我々の意図しない人間に渡ったということ。


『“エロスハート”は他のSSランクに比べてシンプルだから、序盤の人間に与えてプレーヤーへの被害を狙ったのでしょうけれど、しくじったわね』


 デルタ側の失態が目立っている今に私が結果を出せば、次のダンジョン・ザ・チョイスの総括責任者になれる可能性が高くなる!


『良いわ。リスク覚悟で貴女を、難易度上げの起爆剤に使ってあげる』


 黒の異形。貴女こそが、私の最強最悪の切り札となるのよ。


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