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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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530.聖炎水の戦士イチカ

「“聖炎水魔法”――セイントバーン!!」


 白い水が飛び出したと思ったら、白い大火となってスローターピッグ達を焼き殺していく。


「“鞭化”――“聖炎水鞭術”、バーンセイントラッシュヒット!!」


 殺しきれなかった豚たちを、(しな)り伸びる銀の剣で打ち刻み、トドメを刺していくイチカさん。


 なんというか……普段の言動に反して、戦い方に容赦が無い。


「お待たせしました。参りましょう」


 共に歩いて進んでいく。


「今のは、ユニークスキルですか?」


 答えて貰えるかは期待せずに尋ねた。


「はい、“聖炎水の卓越者”というサブ職業になります」

「……なるほど」


 “星屑魔法”や“悪夢魔法”と違って、魔法だけでなく武術としても使用出来たのは、サブ職業の名前が魔法使いではなく卓越者だからか。


 ……それにしても、あっさり手の内を明かしてくれるとは。色々心配になってくる。


 もしシンゴがイチカさんの貞操を求めてきたら、そのまま差し出してしまうのだろうか……こんな時に何を考えているんだか、俺は。


「そう言えば……イチカさん達は、黒髪おかっぱの女魔法使いには遭遇していませんか?」


 トゥスカからの質問。


 “ブラッディーコレクション”を持っていた女の印象が強すぎて、すっかり失念していた。


「私は知りませんね」

「私もだ。オゥロとマズダーは?」

「見てないね」

「……見たかもしれない」


ダウナーっぽいオゥロからの情報。


「一人の男とだけ喋って、色んな種族を兵隊みたいに操ってた……合ってる?」

「銀の大きな杖は?」

「大切そうに持ってた」

「決まりだな」


 イズミとかいうSSランク使いは、既に三十九ステージへと到達していた。


「彼女達は、今も三十九ステージに?」

「三日くらい前に、この山に向かうのを見た」


 四十ステージで、大規模突発クエストに参加する気かもしれない。


「となると、四十ステージで遭遇する可能性があるか」


 けれど、これでメルシュやリューナ達が、俺のいない所であの女と接触する可能性は消えた。


「その女がどうかしたのか?」

「ご主人様」

「共有しておいた方が良いだろう。説明を頼む」

「分かりました」


 実際に戦ったトゥスカに任せる。


「彼女は、“エンバーミング・クライシス”というSSランク武器を持っています」


「SSランク……まだ実物を目にしたことは無いな」

「死体恐慌。随分と物騒な名前ですね」


「イチカさんの言うとおり、使い手も含めて恐ろしい相手です。なにせ、その杖の力で――殺した人間を無制限に操るのですから」


「殺した人間を……」

「無制限に?」


 さすがに、嫌悪感を隠せないらしい。


「人間だけでなく、その力はモンスターや一部のNPCにまで及びます。現に、バーサーカーの隠れNPCを操っていました」

 

「SSランク……他の武具も、デタラメな力を有していそうだね。ハッキリ言って、ゲームバランスが滅茶苦茶だ」


 ゲーマーが言いそうな言葉を口にするホタル。


 俺達は既に三つ保有しているけれど、今は黙ってよう。


「……何か居る」


 いち早く気付いたのは、クオリア。


 ――音もなく現れた黒い異形の尻尾が、シンゴ達を狙う!


「――“瞬足”」


 先端が爪のような尻尾がイチカの剣を折り、二人を庇った彼女の肩に――突き刺さってしまう!!


 そのまま乱暴に振り捨てられ、地面に叩き付けられるイチカ!!


「――“超噴射”!!」


 “古代の叡智の盾”先端を突撃しながら叩き付け、黒の異形を森の中へと突き飛ばす!!


「おい、すぐにイチカを治療しろ!」


 命令する形となったため、また何かごねるかと思いきや……二人はただ、呆然と怯えるばかり。


 ――使えない。


「頼む、ナターシャ!」

「お任せを!」


 すぐに魔法で治療を始めてくれるナターシャ。


「エルザ、敵の特徴を教えてくれ!!」


 メルシュからは、あんな厄介なのが出て来るなんて聞いてない!


「……解らない。少なくとも、ライブラリに存在していない」


 あれは、モンスターじゃないのか?


「使っているスキルや装備は!」

「ダメだ、なにも出て来ない!」


 完全なアンノーンに襲われてるとでも言うのか!!


「――クレーレ!!」


 この短時間で、吹っ飛ばした方とは逆の方向に回り込んだだと!?


「――“獣化”ッ!!」


 一番反対側にいたクレーレの胸が貫かれる瞬間、常軌を逸した再生能力を持つ雪豹の人獣形態へ!!


『グッ!! ――掴まえたよッ!!』


 胸を貫いた尻尾を掴み、逃げられないようにするクレーレ!! ――なんて無茶を!!


「“悪夢魔法”――“直情の激発”!!」


 神代文字を流し込んだクオリアの一撃が決まり、異形の左半身が大きく吹き飛ぶ!!


「もう離せ、クレーレ!!」

『ごめん……ちょっと休む』


 クレーレが手を離すと、尻尾を抜いて逃げようとする黒の異形。


「――――“神代の天竜”」


 青白き竜を纏い、動きが鈍った異形に掴みかかり――森を抜けた場所まで突撃――土の地面の下敷きにする形で墜落した!!


「お前は……許さない」


 ホタル達の手前、神代文字は極力使わない事にしていたけれど――コイツ相手には手を抜けない。


 鎧にも“サムシンググレートソード”にも十二文字刻み、奴の一挙手一投足を観察。


『ガァ……ぁ』


「……まさか、コイツもか」


 黒い影のような物を纏う内側で、人間の血肉のような物が蠢いて再生していく。


 俺達が離れ離れになる切っ掛けを作った、靄から現れた異形の男と同じ……壊れたプレーヤー。


『“時空魔法”gk4っp――ムーブメント』


 気配が一瞬で消えて、後ろ側の頭上に突然現れた!!


 ほとんど反射的に振るった剣で、さっきまでよりも凶悪なフォルムとなった異形の爪を弾く!


 十二文字刻んだ時の反射神経でも、対応が厳しい。


「長引くだけ不利か――なら!!」


 鎧と剣の文字を十五文字まで上げ、一気に終わらせることにした!!


「“偉大なる英雄の黄金翼”――“神代の剣”――“飛翔”!!」


 “飛翔”の推力を突進力として利用し、青白い刀身を纏わせた剣を突き刺す――鋭くなった両手の爪で止められているだと!!?


「――このッ!!」


 連続で剣を振るうも、赤黒いオーラを纏い始めた異形の爪は俺の攻撃に耐え続けている!?


 振るう度に粉塵が舞い、地形を変えていくほどの剣撃を、只の爪で受け続けられるなんて!!


「――しま!!」


 剣の横っ腹を蹴られ、完全にバランスを崩されてしまった!!



「――“神代の戦略砲”!!!」



 奴が背後に気を取られた瞬間、俺は翼の推力を利用し――必死に青白い砲撃を避けるッッ!!


 爆音と衝撃波に包まれながら派手に吹き飛ばされ、地面を転がった先で見たのは……“ガリバーの眼”とは違う、機械斧に十二文字を刻んだ……ホタルの姿だった。


挿絵(By みてみん)



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