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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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529.邪魔者の喚き

 出発からおよそ二時間超、ようやく山頂に辿り着く俺達。


「十五分の休憩。今のうちに軽く食事をした方が良いだろう」


 メルシュの話だと、ここからが厄介らしい。


「たった十五分!? テメー、殺す気かよ!!」

「勝手過ぎるでしょう!!」


 またあの二人か。


「明日の昼までに間に合わなくなるぞ?」

「お前らを待たずに昨日出発していれば、もっと時間に余裕があったんだよ!! それくらい分かれよ、バカがよ!!」


 コイツ、発言が俺の弟そっくりで余計にムカつく!


「すみません、シンゴさん。ですが、決めたのは私です。どうか、鬱憤は全て私にぶつけてください」


「……ああ、そうかよ」


 ――男の手がイチカの臀部に伸ばされた瞬間、ホタルの斧が顔面に突き付けられた。


「私の前でそういう、人の弱味に付け込むような真似はするな、シンゴ――思わず殺したくなるから」

「……じょ、冗談だよ。なにマジになってんだよ、お前」


 熱しやすく冷めやすいを絵に描いたような奴だな、まったく。


 いっそ、殺してしまえれば楽なのに。


 義務教育によって植え付けられた安い倫理観は、まるで、ああいうクズを守るためにあるような気がしてならない。


 善人ぶっているだけの人間に、いったい何が守れるって言うんだ。


「これくらいの行軍、自衛隊なら当たり前だ」


 ホタルさん?


「俺は自衛隊じゃねぇよ!」

「Lvのおかげで、私達は自衛官や軍人よりも遥かに優れた身体能力を手にしている。これくらいの行軍、耐えられない方がおかしいだろう。お前は男なんだし」

「あ、当たり前だ! 俺は、辛いなんて一言も言ってねーだろう。ただ……お前らに気を使っただけさ」

「シンゴくん、優しい♡」


 態度をコロコロと……あのカップルを見ていると、吐き気が込み上げてくる。


 というか、さっきから俺のストレスがマッハーなんだけれど。


「それにしても……」


「すみません、またご迷惑を」


 二人が離れると、イチカさんがホタルに向かって頭を下げた。


「次からは、もう少し雇い主を選べよ、イチカ」

「そこは気になさらないでください……私の主義ですから」


 彼女のあの献身ぶりは……罪悪感?


「イチカは、アイツ等と何かあったん? 仲間を間違って殺しちゃったとか?」


 クレーレが訊いてくれる。


「え? いえ、三日前に契約しただけの間柄です」


 本気で不思議そうに返すイチカさん。


 ……性分で片付けるには、何か歪な物を感じてしまうな。


「さてと……」


 遠くの、雲を突き抜ける岩山、“幻山”を見据える。


 あれの麓が、俺達が目指す場所。


 ……何事もなく辿り着ければ良いんだけれど。



            ★



 鬱蒼とした森を歩いて下っていると、雨が降ってきた。


「おい、雨宿りするぞ!」

「この程度なら大丈夫だ」


 ホタルが断言。


「そうだな、足を止める意味は無い」


 雨は小降り。風は無く、気候も暖かい。濡れてもそうそう体調を崩したりはしないだろう。


 危ないのは、濡れた草木で足を滑らせないかか。


 地味に、雨で視界が遮られるのも厄介。


 足元が危険なのもあり、目の見えないクオリアだけはケルベロスに乗って移動して貰っていた。


「おい!!」

「シンゴさん、このエリアは基本的にいつも雨が降っているようです。進むしかありません」


 イチカさんが、()()()()嘘をつく。


 このエリアの雨はランダム。頻度は半々らしい。


 その事については、昨日の時点でメルシュの口から伝えられているため、当然イチカさんは知っている。


 ……そういう対応も出来る人なんだ。


 だからこそ余計に、あの二人組に対する接し方に歪さを感じてしまう。


『シュルル』


 小さい蛇モンスターが無数に現れ、あっという間に囲まれる。


「お任せを――ヒュロローー」


 ナターシャが“蛇操りの笛”を使用し、退散させてくれた。


 あの笛が無いと、途轍もない数の蛇と交戦しなければならず、一気に攻略難易度が上がるらしい。


「助かった、ナターシャ」

「ありがたき幸せ」


 優雅に礼をするナターシャは、なんだか一人だけ楽しそうに見えてしまう。


「よし、進もう」


 ここいらに生えている植物は、あまり日本ぽくないな。


 二十八ステージの山はよく覚えているため、余計に違和感を感じる。


 それに、まるで剣のように聳える巨岩の数々は、この天気と相まって偉容な雰囲気を生み出していた。


「ご主人様、前から複数の気配が」


「総員、警戒!」


 ホタルが、気を利かせて全員に伝えてくれる。


 俺が言うより、あの男の神経を逆撫でせずに済みそうだ。


「スローターピッグだ!! 集団で現れる上に凶暴だぞ!!」


 いち早く敵の正体を言い当てたのは、またもホタル。


 これまでの言動で確信した。彼女は――十中八九オリジナルプレーヤーだ。


「――“大地讃頌”!!」


 十を超える集団で突っ込んできた、顔や前脚が黒ずんだ大豚たちを、扇状に広がる黄金の光を足元からぶつけて浮かせる。


「“飛剣術”――ハイパワースラッシャー!!」


 先頭の三頭くらいは切り裂けたけれど、コイツらの耐久力は見た目以上らしい。


 ”荒野の黄昏は英雄の慰め”より、“魔力弾丸”を撃ってくれるトゥスカ。


 そのガンブーメランには、現在“古代王の転剣”が合体している。


 “古代の力”により古代属性以外のスキル、武具効果による攻撃は全てダメージを五分の一に出来るため、基本的にはあの組み合わせで使用する事になりそうだ。


「“瘴気魔法”――ミアズマプラズマ」

「“煉獄魔法”――インフェルノ」


 近接戦で全滅させたのち、クオリアが放電する黒煙で、ナターシャが地獄の紫炎で第二陣の豚たちを焼き殺した。


「この世界に来てから日は浅いと聞いていたが、さすがの手際だ。Lvを聞いても?」


 教えておいた方が、ゲームに詳しいホタルへの牽制になるか。


「ちょっと待ってくれ」



○戦士.Lv69になりました。OP変換増強機能が解禁されました。



「ん?」


 どういう意味だ?


「どうした?」

「いや、Lvが69に上がってたんだけれど、特典がよく解らなくて」

「69……なんだったかな?」

「OP変換増強機能ってのなんだけれど……」

「ああ! なるほど。それは、簡単に言うと――OPをTPかMPに足す機能だ」


 どうやら、自分がオリジナルプレーヤーであることを隠す気は無いらしい。


「足す?」

「OPとして使用できなくなる分、MPかTPの絶対量を増大させられるんだ。たとえば、能力のポイント消費量が数値ではなく分数で決まる場合、ポイント総量が多ければ多いほど一撃の威力は増大するだろ?」

「なるほど」


 トゥスカの“魔力砲”や俺の“飛王剣”のようなスキルの威力を、強化出来るって事か。


「69……おい、お前ら! これ以上俺の経験値を盗むんじゃねぇよ!!」


 またバカな事を。


「今朝の時点で、私達は共有のティアーズの色を合わせてある」

「……あ」


 俺もホタルも、青い宝石の指輪を装備済み。


 色を変えるだけだと、鍛冶屋ですぐにやって貰えるらしい。


「そんなに自分で戦いたいならさ、お先にどうぞ」


 クレーレの嫌味混じりの言葉に、焦りだすシンゴ。


 コイツ、よくここまで生き残れたな。


「悪いけれど、情報を持ってる俺達が先頭を行かせて貰う。そういう取り決めだからな」


 昨夜、二人には了解を取っている。


「そ、そこまで言うなら仕方ないな! 任せてやるよ!」


 よくもまあ、そんな三下ムーブを次から次へと。


「とはいえ、一番負担となるポジションを任せっきりにするのは申し訳ないので、次の戦闘の際には私が対処致しましょう」


 本当、イチカさんは何を考えているのかよく解らないな。


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