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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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517.大樹の騒乱がもたらしたもの

『“悪性の球根”の駆除、成功報酬として……魔法使いには、二属性魔法のスキルカード全種類を一枚ずつ、戦士には、属性強化スキルカードを同じく全種類一枚ずつ送られる。尚、報酬の対象となるのは球根を一つ以上駆除した人間のみ』


「このステージの人間全員を巻き込んでおいて、ケチくさい女だ」


 息苦しさが無くなって来た……花粉はすでに取り除かれたらしい。ゲージも表示されなくなっている。


『それとは別に、参加者全員に8000000(八百万)Gの報酬が支払われる。ああ、それと――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まあ、慰謝料かなにかだと思ってちょうだい』


「……悪趣味な」


 反省などしていなさそうな声で。



○“悪性の逆襲者”を討伐した報酬として、“再生の胚珠”を手に入れました。

○“悪性の大輪”を討伐した報酬として、”溶解弾の指輪”を手に入れました。

○“悪性の大輪”を討伐した報酬として、“不意打ち無効のイヤリング”を手に入れました。

○“悪性の大輪”を討伐した報酬として、“超怪力の指輪”を手に入れました。

           :

           :



『……早くレイナ達と合流しよう、キクル』

「ああ。さすがに、今日はもう休みた……」


 黒髪をポニーテールにした女性が、こっちへ歩いてくる。


 手には弓を持っており、薬液に関係する装備を多数身につけていた。


挿絵(By みてみん)


「少し……お話しさせていただけませんか?」



●●●



「掴まってろ、クレーレ! ――“猪突猛進”!!」


 ストリームバイクの前面にエネルギーの膜を張り、巨大な蜘蛛モンスターを正面から挽き潰す!


「フー、ようやくボス部屋か」


 海水の横の洞窟路をひた走ること数時間。三つ目の安全エリアとポータルを発見。


「どうする? 少し休んでからボス戦に挑むか?」


 人間体に戻ったエルザに尋ねられる。


「……ああ。今日中に、三十八ステージには辿り着きたい」


 三十八ステージに到達してからメルシュとエルザを再トレードすれば、三十八ステージの情報が手に入るため、より効率的に動けるはず。


「トゥスカは特に疲れているだろうけど、全員、もう一踏ん張り頼む」

「ボス戦くらい、どうとでもなりますよ」

「私ならば、なんの問題もありません」

「まだまだ私は元気だよ、ギオジィ!」


 トゥスカ、クオリア、クレーレが平気そうな返事をくれる。


 既に19時を過ぎた。早く三人を休ませてやりたい。


「万が一にも、突発クエストを仕掛けられる可能性もある。ボス戦は私とナターシャに任せるが良い」

「はい。皆さんは体力を温存しつつ、後方からの援護に徹してください」


 やっぱりこういう時、疲れ知らずのNPCの存在はありがたいな。



●●●



「私の名前は、ホナミと言います」


 大樹村の中層でレイナ達と合流し、全員の無事の確認後、さっき会ったばかりの彼女が挨拶をした。


「貴方達は、このゲームをクリアするつもりだと聞きました。私も、仲間に入れてください」


「……解ってるかもしれねーが、危険だぞ? 覚悟はあんだろうな」


 ザッカルが試すような物言いを。


「ついさっき――我が子を喪いました。生まれて……生まれて、まだ二歳だったのにッ……」


 沈黙が流れる。


「強い意志や覚悟なんて、私にはありません。クリアを諦めて、所帯を持って、夫に捨てられた憐れな女です。ただ……――一刻も早く、この村から居なくなりたいッッ!!」


 ここには、我が子との思い出があるから……か。


「……キクル。お前らがケツを持つなら、俺は構わねぇぞ。コセ達には俺から言っておく」

「それは……」


 連れて行くには、なんとも微妙な存在。


 攻略の意思は無く、精神的に不安定……同情はするが、連れて行くことでグダラやレイナ達を危険に晒してしまうかもしれない。


 なにより……。


「……私のパーティーに入って貰っても構いませんか?」


「……い、良いんですか?」


 レイナの提案に、ホナミと名乗った女の方が驚いている始末。


「はい。ちょうど、私のパーティーには弓使いが居ませんし」

「確かに、魔法以外の遠距離要員はいないっすね」

「……まあ、確かに」

「レイナが言うなら……」


 相変わらず、ハマヌーとマリンはレイナに甘い。


 またミドリのような厄介な人間の面倒を見ようとするとは……物好きなやつ。


「決定だな……ところで、なんでお前はいつもの仮面をグダラに付けさせてんだ?」


「あ!?」


 ザッカルに指摘されるまで、自分が仮面を付けていない事をすっかり忘れていた!!


「ぐ、グダラ! すぐに返してくれ!」

『ああ……うん、はい」


 なんで惜しんでる感じなんだよ!


「キクルさん……」


 レイナの……同情的な視線。


「言った通り、酷い顔だったろ?』


 左半分が爛れ、瞳の色は白くくすんでいる。


『これでも、大分良くなった方なんだ』


 火傷したのは、四歳の時だからな。


「魔法で治療は……」

『試したがダメだった。そんな事より、今日はさっさと休――』



「――私と結婚してください、キクルさん」



『……へ?』


「レイナ?」

「ど、どうしたの、急に?」


 ハヌマーとマリンまで慌てていた。


「また、目の前で死んでいく人を――救えなかった」


『レイナ……』


「私に……少しでも力を!」


 レイナの目は……本気だった。


「……あの、盛り上がっているところ悪いんだけれどさ……ホナミの赤ちゃんがプレーヤーに殺されたんじゃなければ……大規模突発クエストで生き返らせられるんじゃね?」


「「「……あ」」」


 コトリの言葉に、呆然としてしまう俺達。


 生き返らせたい対象が居なかったから、完全に参加しないつもりでいた。


 なによりも、俺達はコセ達との合流を優先するつもりだったからな。


「では、ルールは私達が確認しておきましょう。皆様は先にお休みを」


 ザッカルの使用人NPC、アルーシャに提案される。


「い、いえ、どうか同行させてください! 場所も大体知っていますので!!」


 ホナミが申し出る。


『全員で、さっさと確認しよう』


 さて、どうなる事やら。



●●●



「第二大規模突発クエスト……か。今回は参加出来ないな」


 僕の持ち家である“和風旅館”の窓より、風情のある中庭を見詰めながら呟く。


「今更ですか?」


 そう答えたのは、僕と同じ黒っぽい浴衣を着た女性、ワロース。


挿絵(By みてみん)


 三十二ステージの流刑の孤島にて出会った、トゲトゲしい茶髪ロングの(つばめ)鳥人。


「まあね。“ブラッディーコレクション”を追わなければ、この三十四ステージまで到達しては居なかっただろうし」


「けれど、それだと……今も私は、貴男と出会えていなかったことになります」


 顎を掴まれて、強制的に……唇を奪われる。


「こっちの世界に連れて来られてすぐに貴男に出会い、買われたこと……私は運命だと思っているのに」

「……それは僕も――ッ!?」


 ワロースは、()()()()は積極的だ。


「では、今すぐ証明を」


 今度は僕から彼女の唇を塞ぎながら、浴衣を肩が見えるくらいまでずらし――近場の和室へと連れ込んだ。


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