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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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513.突発クエスト・大樹の逆襲

 突発クエストの説明終了後、キクルさん達五人と合流する私達。


『聴いていた通り、大樹村は三層に別れている。効率を考えて、三手に別れて球根を破壊しに行くぞ』


 オリジナルを経験済みのキクルさんは、こういうとき本当に頼りになります。


『俺はグダラ、ミレオと共に上へ行く。この中層はレイナ達。ラフォル、ディアは下層だ』


「下層は二人だけで良いんですか?」

『下層は見晴らしが良い場所ばかりだ。中層が一番死角が多い。それと、下層の出入り口はちょうどここから反対の位置にある――下層組と上層組はすぐに行動を開始するぞ!』

「「はい!」」

「「「おう」」よ!」


 キクルさんは指輪でヴェノムストライカーを呼び出し、ミレオさん達をサイドカーに乗せて奥――階段へと向かって走り去っていく。


「私達も急ごう、ディア!」

「はい。皆様、ご武運を」


 私達に挨拶し、ラフォルさんとディアさんは下層への入り口を目指して走り出す。


 数分後、キクルさん達がバイクで、大樹側面の階段をかっ飛ばして上へと向かっているのが目に入った。


「……気をつけて、キクルさん」


挿絵(By みてみん)


「おうおう。我等のリーダーが、恋する乙女の顔になってるっすね~」

「グダラが常に傍に居るから、レイナが気が気じゃないのは解るけれど」


「なんの話ですか! まったく……」


 こんな状況で嫉妬なんて……ちょっとしかしてないもん!


「……人が多いですね、このステージ」


 やけに子供が目に付く……たぶん、NPCじゃない。


「まさかとは思うけれど、私らがこのステージに来たせいで巻き込んだ……なんてことねぇっすよね?」


 ――ハヌマーの言葉に、ハッとさせられる!


「デルタ共の考えなんて、幾ら考えても意味が無いわ。今は、目の前の事に集中するのみよ」


「……そうですね」


 たとえ私達のせいだったとして、このクエストは……もう止められないのだから。



●●●



『間もなく十五分が経過――“悪性の球根”の発芽が始まるよ』


「絶対に、言葉の使い方を間違っている」


 ディアと共に下層へと向かって階段を下りている途中で聞こえてきた声に、思わずツッコミを入れてしまう。


「アレが“悪性の球根”ですか」


 樹の滑らかな壁から、腐った大きな蕾のような物が生えて来た!


「……ダメか」


 素早く構えて矢を射るも、“悪性の球根”は光にならない。


「“紅蓮矢”」


 紅の炎纏う二射目を放ち、燃えだして数秒で光へと還る。


「そこそこの耐久力はあるようですね」

「けれど、球根自体が反撃してくるわけでもないし……これまでの突発クエストに比べて簡単すぎる気が」


 中層と同規模の領域が三つと考えると、百個見付けて駆除するだけでも大変でしょうが。


「ラフォル様、あれを」

「このステージには、こんなにも人が……」


 女性達が子供達を庇いながら、巨大十字路や樹の壁に生えた球根を次々と駆除していた。


「モンスターは……居ない」


 球根が反撃している様子も無いし、このクエストはあまりにも簡単。


「まずいですよ、ラフォル様」

「へ!?」


 私が、なにか見落としを!?


「このままでは、私達が球根からアイテムを手に入れられなくなってしまいます!」

「ああ……そうね」


 確かに、有用なアイテムは一つでも多い方が良い。


 ディアと共に球根駆除をしながら思う。


「この階層に……男が居なくて良かった」



●●●



『“悪性の球根”の数、残り七十』


 上層で球根を刈っていると、そんなアナウンスが聞こえてきた。


『花粉ゲージは……まだゼロか』


 段々と目に見えて黄色い花粉が漂い始めたが、俺のゲージはまったく上がっていない。


 既に開始から十五分……なにかおかしい。


『ミレオ、お前の花粉ゲージは?』


 隠れNPCであるバロンの特性上、攻撃能力皆無の相棒は、球根を探すことに集中してくれていた。


 グダラには樹木のホテルの壁、及び屋上を見て回って貰っている。


「4%だけれど?」

『なに?』


 ……もしや俺の白面、“殺戮者のマスク”には花粉を防ぐ機能がある?


 仮面を外し、わざと大きく息を吸う。


「ゲホ! ゲホッ、ゲホ」


「あんまり吸うと、咳とかが止まらなくなるよ。私は隠れNPCだから問題ないけれどさ」


「お前、早く言えよ!』


 ゲージは、すでに1%になっていた。


『この仮面のおかげで確定だな』


 この上層は、睨んでいた通り人が少ない。


「マスター、そこの木彫り像の隅!」

『了解だ!』


 “大斧術”で、六つ目の球根を切り裂く。


 最悪、グダラは下に逃がして俺とミレオだけで――


『球根の数が六十を切った。危険を察知した“悪性の球根”は急成長し――“悪性の茎人(くきびと)”となる!』


『茎人?』

「マスター、あれ!」


 ――数十メートル離れた建物の影から、腐ったような植物人間が姿を現す。


『モンスターの一体も居ないのはオカシイと思っていたが……もう一体か』

『ギチチ……』


 背後から現れた個体は、明らかにこちらに敵意を向けていた。


『強化された分、球根から手に入るアイテムのレア度も上がっている。精々頑張りな』


『フッ! 向こうから仕掛けてくれるなら、探す手間が省けるってもんだ』


 むしろ、グダラと手分けしたのは悪手だったか。


『ミレオ』

「なに?」



『お前、上層を駆け回ってコイツらを引き付けてこい』


 その方が効率が良い。


「……このマスター、やっぱ鬼だ」



●●●



『ギチチ!!』


 壁に張り付きながら、種のような物を飛ばしてくる“悪性の茎人”。


 だが、“遊泳”で空を泳げる私には当たらぬ!


「“真空魔法”――バキュームレイドサイクル!!」


 真空刃の渦巻きを放ち、その茎の集合体をズタズタに引き裂いて蹴散らす。


「強さ以上に、厄介なのは花粉か」


 茎人になってから花粉の放出量が増えたことで、既にゲージは13%。


 花粉のせいで視界も悪くなり、明らかに下の方に溜まって行っている。


「上の悪性共を、とっとと始末しなければ」


 これは、明らかに時間との戦いだ。


「うん? ――なに!?」


 新たに植物人間を発見したと思ったら、ソイツの身体から球根が五、六個生えてきた!!


 同時に、花粉の放出量も激増する!


「クソったれめ! ――“荷電粒子砲”!!」


 MPを半分使用し、緑雷の砲撃を遠くから浴びせて破壊!


 すぐに“ソーマ”を口にし、MPの回復を図る。


「この状況……おそらく、私達の想定以上にまずいぞ、キクル」


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