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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第14章 随意なる黄昏は英雄と共に

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512.神代の直情

「ヒュー!! ハッヤーい!」


 俺のストリームバイクの後ろで、はしゃいでいるクレーレ。


 背後には、“怪物の牛の番犬”、オルトロスに乗るトゥスカと、“地獄の番犬”、ケルベロスに乗るクオリアとナターシャ。


 エルザは予定通り紅の竜となって、少し先行気味に上空を飛行してくれている。


「……ふむ」

「どうかしたの、ギオジィ?」

「いや、今更ながら、バイクに乗りながらの戦闘は難しそうだなと」


 ハンドルを回す分、生物に跨がって戦うよりも意識を割く事、戦術を制限する要素が多い。


 自分で直接動かしている分、臨機応変な対応はしやすいけれど。


「だい――じょーぶ! 敵が出て来たら、私が全部倒しちゃうから!」

「頼りにしてるぞ、クレーレ」


 なにかあったらすぐにカバーに入れるよう、心構えだけはしておこう。


 ――前方にて、強大な衝撃が起こる!!


「今の、エルザの攻撃か?」

「ギオジィ、来たみたい」


 左崖の上に狼、いや、黒斑の犬モンスターが大量に現れた!


「マッドハウンドです!」


 すかさず教えてくれるナターシャ。


「数が多いな」


 ――マッドハウンドが、一斉に崖を飛び降りて来た!!


「“二重魔法”、“悪夢魔法”――ナイトメアバットズ!!」


 大量の黒コウモリが犬達に纏わり付き、動きを封じてくれる!


「クオリアか」

「ご主人様、海からも来ます!」


 右側の水面から飛び出して来たのは、吸血皇の城で戦った黒い魚人、ブラックギルマン。


 しかも、あの時とは比べ物にならない数!


「装備セット3――“二重武術”、ハイパワーブーメラン!!」


 “荒野の黄昏は大いなる導”と“古代王の転剣”を繰り出し、機先を制するトゥスカ。


「さすがトゥスカ姉! 私も負けてられない!」


 神代文字を、トゥスカから譲り受けた青緑の投げ斧――“雄大なる大地の風”に刻むクレーレ。


「“氷砕武術”――アイスクラッシュトマホーク!! ――ベクトルコントロール!!」


 軌道を操り、効率的にブラックギルマンを葬っていく。


「やるな、クレーレ」

「えっへん!」


 前方では、未だにエルザがなにかに攻撃を続けていた。


「“光線魔法”――アトミックシャワー!!」


 何故か後方に攻撃している様子のナターシャ。


「前だけじゃなく、後ろからも来ているのか……容赦ないな」


 まさかとは思うけれど、俺達が乗り物に乗って高速で進むことで、余計に大量のモンスターを呼び寄せているわけじゃないよな?


 ここがゲームを再現した世界だと考えると、意外とありそうなのが……。


「ギオジィ、上!!」


 天井の岩が割れ、白い巨大ワームが――歯がビッシリと生え揃った赤い口を開けて墜ちてくる!!


「“魔力砲”!!」

「「“光線魔法”――アトミックレーザー!!」」


 トゥスカ、クレーレ、ナターシャの放った光がワームに直撃するも――止められないッ!!



「“悪夢魔法”――――“神代の直情”」



挿絵(By みてみん)


 放たれた青白い光が三人の光を呑み込み混ざり――墜落する前に白ワームの巨体を……蒸発……させてしまった……。


「……危なかった」


 俺とクレーレだけなら速度を上げて回避も出来たけれど、その場合、三人のうちの誰かは死んでいたかもしれない。


「今のって、クオっち?」

「ああ、たぶんな」


 あんな能力は初めて見たけれど。


「ギオジィの女って……凄い人、多すぎぃ!」


「女じゃなくて妻って言いなさい」


 人聞きが悪いから!



●●●



『フー……凄い場所だな、ここは』


挿絵(By みてみん)


 大樹村へと到達した俺達が巨大な枝の通路を通って見た物は、大樹の中に築かれた圧巻の光景。


「樹の中に町……あまりにも異様な」

『グダラには、あまり好ましくない光景か?』


 オリジナルプレーヤーの俺としては、映像の中の世界に入り込んだ故の感動があるんだが。


「海や島で生きてきた私には、あまりにも馴染みが無い空気感というか……別に、嫌いではないけれど」


 大半の人魚の住み家は、本来は海中だったか。


「良かったの? レイナやザッカル達を待たずに来ちゃって」


 バロンの隠れNPC、ミレオに訊かれる。


『まあ、よくはないだろうな……好奇心を抑えられなかった』


 一応、枝の道を固まって動いて居るときにプレーヤーに襲われるのは危険だろうという判断でもあったが。


「マスターってさ、結構子供っぽいよね」

「だな」


挿絵(By みてみん)


 ミレオの言葉に、割と付き合いの長いグダラが同意してしまう!?


『そ、そうか?』


 まあ、ダンジョン・ザ・チョイス絡みになると、童心を抑えられない時は確かにあるが。


「もう日が暮れますし、さすがにここで待ちましょう。キクルさん」

『そうだな』


 エルフ族のラフォルの提案を受け入れる。


「レイナ様達が、祭壇を下り終わったようです」


 頭の左右から白い角を生やした、使用人NPCであるディアが教えてくれた。


 ホーン族……オリジナルには居なかったはずの、有角の種族。


 この異世界に居る特有の種族を、輸入してきたってところだろうか。


 使用人NPCの種族を決める際に偶然見付けたため、好奇心を抑えられず選んでしまった。


 他にも色んな種族が居るようだし、不謹慎ながら、奴隷売買が行われているステージに行くのはちょっと楽しみだ。



 ――暗い半透明なカーテンのような物が、上から大樹の外を覆っていく!?



「キクル、これって!」

『まさか、また仕掛けてきたのか!!』


 レイナ達は――カーテンの外側に、悪魔召喚士のミドリと忍者の隠れNPCであるサザンカが取り残されている!


「ミドリちゃん! サザンカ!」

「クソ! なんだよ、これ!?」

「ヒラヒラしているようで硬い!?」


 猿獣人のハヌマーと赤人魚のマリンが武器で攻撃しているようだが、当然のごとく効果が無いらしい。


『……今日は、まだ休めそうにないな』



『これより突発クエスト――“大樹の逆襲”の説明を始める!』



 生意気そうな女の声。


「やはりですか」

「デルタの奴等め、性懲りもなく!」

 

 怒りを顕わにするラフォルとグダラ。


『今は、黙ってルールを聴け』


 情報一つ聞き逃せば、命取りになりかねない。


『大樹は、勝手に住み着き、己の身体をほじくり回した人間達に大層お怒りになられている』


 もっともらしいことを。


『説明終了から十五分後、大樹内の上層から下層までのどこかに“悪性の球根”を百、植え付ける』


 球根?


『それらは花粉を飛ばし、時間と共に花粉の放出量は増えていく』


 なんで球根から花粉なんだよ! バカなのか!?


『花粉を吸い込めば吸い込むほど花粉ゲージが溜まり、吸入率百パーセントになると――その時点でゲームオーバー』


『呼吸器官を狙って来るとはな』


 防ぎようが無い。


『貴方達の勝利条件は、ゲームオーバー前に全ての球根を破壊してしまうこと。尚、特別大サービスでヒント。球根は全て、建物の外に付いているから』


 中までとなると、さすがに探すのに時間が掛かりすぎて、ゲームバランスが崩れるか。


『もう一つ、良い事を教えようかしら。花粉ゲージはチョイスプレートから確認できるようになっているのだけれど、身体が大きい人ほどゲージの上昇率は低いわ』


 薬なんかの分量は本来身体の体積で計算されるが、分かりやすいようにという名目で年齢で表示されている。


 人によって、年齢による体格なんて千差万別にも関わらず。


『それじゃあ、説明はここまで……ああ、そうそう。球根は破壊するたびに、ランダムにアイテムが手に入るから。頑張ってね~♡』


 その言葉を最後に、いけ好かない女の声は途絶えた。


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