おまけ補足 巡る遺品
「メルシュ、これを渡しておく」
リューナが送ったのはおそらくぅ、昨夜話していた破損武器ですねぇ。
「お、じゃあ、さっそく配っちゃおうかな」
突発クエストに巻き込まれた事で先行組が疲弊したため、消耗していないコセ達がワンパーティーだけで四十ステージを目指す事が決まった直後のこと。
「メルシュ、これも頼む」
コセが、どこか申し訳なさそうにアイテムを送った?
「ああ……リョウが持ってた奴か。そっか、リョウの仲間を殺した女をリョウが自分で殺しているから、彼女達の装備もあるんだ」
今思い出しても、嫌になる話でぇすね。
銃の乱射や人種に起因する事件は、いつ聞いてもやりきれない気持ちにさせられる。
日本に来てからは、ほとんど耳にする事なんてなくなりまぁしたが。
「コセ……大丈夫でぇすか?」
「へ? ああ、普通に元気だよ」
やっぱり、いつものような自然体の覇気が感じられない。
私はアヤ以外とほとんど関わり無かったからぁ、リョウ組の死にそこまでショックじゃありませぇんでしたが……自分で手に掛けたコセは、どういう気分だったのかぁ……。
「“極寒の暴虐狂い”はノーザン、”氷炎の競演を観よ”は……やっぱ、ナオだよね」
「同じのがもう一つか……まあ、良いかもね」
なにか考えがありそうな笑みを浮かべるナオ。
「“霧散のクリアシールド”は……取り敢えずメグミかな。“精霊のファルシオン”は、前々から欲しがっていたフェルナンダに」
「何気に、Sランクの盾を使うのは初めてだな」
「まさか、こんな形で私の手に来るとは」
死んだ仲間の装備が二人の手に渡るのを見ていると、まるで私達の方が追い剥ぎをしたみたいな気分でぇす。
「“獅子皇帝の盾”……これはどうするか」
「メルシュ、良ければ私に」
強請ったのは、ジュリー。
「うん、良いよ」
あっさりと渡され、喜んでいるジュリーを見てると……。
「クリスにはこれ」
私がメルシュに手渡されたのはぁ、赤いラインが入った銀の大型リボルバー。
あまりの大口径で、ハンドガンと言うよりもグレネードランチャーのよう。
「おう……二つもでぇすか?」
更には、“甘い花弁の刹那”が赤ピンクに塗られたような銃細剣まで。
「“ドラグ・ガンブレイド”に“熱い花弁の疼き”だよ。後者はクリスの“甘い蕾の中の逢瀬”と同系統扱いだから、同時に装備するだけでもお得だよ」
「“熱い花弁の疼き”……日本語は、やっぱり難しいでぇす」
“甘い花弁の刹那”も、私には意味がよくわかりませぇんでした。
訊いても、誰も教えてくれませぇんし。
「それで、前者の方には特殊な機構があって、剣に分類される装備と合体出来るんだよね」
「合体? メグミのアーマーみたいにでぇすか?」
「まずは、“ドラグ・ガンブレイド”を装備してみて」
そう言えば、ガンブレイドなのに刃物が付いて無いでぇすね。
「わかりまぁした」
装備して、すぐに実体化しまぁす。
「そこから、チョイスプレートの“ドラグ・ガンブレイド”になにか剣を重ねてみて」
“薔薇騎士の剣”、Sランクを重ねる……“ドラグ・ガンブレイド”のすぐ下に剣の名前が表示され――銃の砲身の下に、薔薇柄の短刀のような刃が下向きに生成されたぁ!?
「これは……シックルみたいな銃剣タイプですか」
「引き金を長押しで、切っ先を前に向けられるよ」
やってみると、よくある刺突用の銃剣タイプへ。
「グリップ下側のスイッチを押すと、大剣になる」
「ホウ?」
少し大きめの固いスイッチを頑張って押すと、持ち手から引き金が消え――スロットは残しつつ、砲身を巨大な刃が覆う。
「オオー……格好良いでぇーす」
刀身だけで、軽く二メートルを超えてまぁーす。
しかも、薔薇柄でぇすか。
「合体させた剣の属性や武具効果、特殊効果も大半は使用可能だから、他の剣と組み合わせてみるのも面白いかもね」
「なるほどぉー」
「他にも色々ギミックがあるから、あとはライブラリでチェックしておいて」
ややこしやな部分は、説明を終えたみたいでぇすね。
「ところで……ユイ、“ブラッディーコレクション”を使ってみる気はある?」
血の日本刀がメルシュの前で実体化し、ユイの前へ。
「…………要らないかな。この武器は、腕とか色々な物を腐らせる……そんな気がする」
武道に通ずる者の直感……という奴ですか。格好いいでぇす!
「やっぱり、ユイには合わないか。他に使ってみたい人って居る?」
「「「…………」」」
重い空気……みんな、なんだかんだで彼女達の死に思うところはあったみたいでぇす。
大半は態度に出して居なかったけれど、それは……前を見て進むしかないと……理解していたからなのでしょう。
「……私は遠慮しとく」
「私も」
「私もです」
「僕も」
いくら強力な武具でも、仲間の命を大量に奪った武器を使うのは躊躇われるみたいでぇす。
「……」
彼女達に仲間と認めて貰えている事が……私は誇らしいでぇす。
「じゃあ、どうしよっかな」
「メルシュ、俺に考えがあるんだけれど……」
「ん?」
コセの案とその理由を聞いた私達は、誰も反対せず、むしろその案を支持しまぁした。




