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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第13章 偽善に隠した悪意

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505.突発クエスト・復旧まで耐え凌げるか

「ご利用、あぁりがとうございまーす」


「ここが、悪魔の神殿跡地か」


 赤レンガの駅を出ると、遠くに構造物を発見。


 俺とナターシャ、クレーレ、クオリアの四人で神殿前まで移動する。


「……不気味だな」


 灰色の石灰石で造られたような神殿はうねるような意匠をしており、この大空洞を侵蝕しようとしているかのようだ。


「ここで、皆さんを待つんでしたね」


「ああ」


 目が見えないクオリアに負担を掛けまいと、式を終えてから“神秘の館”に迎えに行き、一足先にこの場所で待つことにしていた俺達。


「本当は別れて行動しない方が良いんだろうけれど……トロッコが五分ごとに一本しか無くて、定員が十二名までだからな」


 四人乗りトロッコが三つ繋がっている状態のため、最大十二人しか乗り込めないようになっている。


 俺達が一足先に来たのも、トロッコによる移動ロスを少しでも減らすため。


「私も、採掘ってのをやってみたかったな~」


 エア鶴嘴を振るクレーレ……子供みたいで可愛いな。


 その手にある“低級の婚姻の指輪”が、申し訳なく思う程に。


「あれは……」


 呟くナターシャの視線の先を追うと、駅より向こうに……巨大な岩が浮いた状態で出現し始めた?


 それが突然落下し――激しい揺れが俺達を襲う!!


「こんな話、メルシュからは聞いていない……だとすると」



『これより突発クエスト、復旧まで耐え凌げるかを始める!』



「やっぱりか」


 仕掛けたクソ野郎に、歯軋りするほどの怒りが込み上げる。


『線路への落石によって、モンスター除けの機能が麻痺した地下鉄都市全域に、これより様々なモンスターが雪崩れ込む。それらの襲撃に耐えながら、駅員の指示に従って全ての線路を復旧しろ』


 時間制限の無い、モンスターの無限アタックか!


 急いでいる俺達にとって、最悪と言って良いタイプのルール!


『ただし、生活区画の北駅から伸びる線路に関しては、落石箇所から悪魔の神殿前までモンスターが現れない。更に、徒歩で悪魔の神殿前まで辿り着けた者達は、クエストがクリア扱いとなる。その場合、突発クエスト事態は終わらないが、地下鉄都市を脱出することは可能だ。クリア特典として、“オールランクアップジュエル”を進呈する!』


「ギオジィ、それって私達は……」

「クリア扱いか、そもそもクエストには……」


 俺達が……俺が突発クエストに参加できないタイミングを狙った? それも、レギオンメンバーがバラバラに行動している時に!?


『クエストは、線路の復旧が完全に終わるか、都市内のプレーヤーが全滅するまで終わらない。復旧が完了した場合、その時点で街にいた者達全員に豪華賞品をプレゼントだ!』


 復旧に尽力するか、この場所まで逃げてくるかの二択……逃げるを選択した人数が多ければ多いほど、復旧は困難になる……嫌らしい選択肢だ。


『五分後、一気にモンスター達が雪崩れ込む! それでは、突発クエスト・復旧まで耐え凌げるか――開始だ!』


 すぐにチョイスプレートを開き、“オールランクアップジュエル”が手に入っているか確かめる。


「やっぱり、ここに居る俺達は参加扱いになっていないのか……」


「ユウダイ様!」


 駅の方から神殿前まで淡い光が出始め――安全エリアへと変わっていく!


「クソ!」


 すぐに駆け出すも、見えない壁にぶつかり、駅手前の安全エリアより向こうに進むことが出来なくなってしまった!


 このクエスト中、俺に出来ることは……なにも無い。



●●●



「クククク! 面白い事になってきたな~!」


 トキコが喜んでいる。


「そろそろ切り上げようと思ってた所で……」


 この場で借りたツルハシを元の場所に返し、戦闘準備を整えていく。


「どうしますか、トゥスカ姉様?」


 ノーザンに尋ねられる。


「まずは、駅員から復旧に関する情報を」


 発掘区画から駅へと戻ると、数人の駅員が慌ただしくしていた。


「すみません」


 カプアが駅員に声を掛ける。


「現在、四つの線路全てに落石が確認されており、復旧するまでトロッコは走れません。お客様には申し訳ありませんが、ご理解ください」


「我々に出来ることはありませんか?」


「線路を塞いでる岩が巨大でして、破壊に協力して頂けると助かります!」


「だそうですが、どうします?」

「まずは生活区画へと続く線路を復旧。クエストの説明だと人が通れそうな幅はありそうだから、移動速度に優れたメンバーは先行し、南駅の岩を破壊しにいく……というのはどうかな?」


 ウララさん、この短時間でそこまで。


「別れるかどうかは現れるモンスターの数次第だろうな。それより、あと一分と少しでモンスターが出て来るぞ」


 バルバの指摘。


「妨害される前に、少しでも進みましょう!」

「ケツは私が持ってやるよ!」


 トキコを最後部に据え、私達は線路の脇を駆け出した。



●●●



「街に大穴が……」


 商業区を駆けて駅へと向かっていると、大通りにバカでかい穴が空いていた。


「“吹雪魔法”――ブリザードバーン!!」


 大穴を凍らせて塞いでおく。


「リューナさん?」

「中から気配がした。たぶんモンスターだろう」

「あそこが侵入地点の一つだったのは間違いないでしょう。どれだけ時間稼ぎになるかは判りませんが」


 ヘラーシャの冷静な判断。


「とにかく、駅員に接触するのが最優先だ!」


 ひたすら駆けて、赤レンガで出来た建物が見えて――


「うげ!!」


 駅の方から、巨大なダンゴ虫みたいなモンスターが集団で出て来た!!


「今回は虫タイプか!」


「お任せを――食らいなさい!」


 “薬液ガトリング”で、連続掃射を見舞うヘラーシャ……薬品とはいえ、エルフが銃をぶっ放している事に、今更ながら違和感を覚える。


「“殺虫液”でイチコロみたいですね」


 チトセの言うとおり、浴びた奴から苦しんで丸まっていき、あっという間に絶命していく。


「“殺虫液”はどれだけある?」

「この数日暇だったので、大量に用意してありますよ。ヘラーシャ」

「全ての種類を、最低三百本以上作製してあります。大旦那様に褒められたくて! グヘへへへ!」


 ヘラーシャの奴、主人であるチトセよりも、コセに執着している気がするのは気のせいか?


「おい、後ろからモグラ系のモンスターが複数迫ってくるぞ!」


 エルザの言うとおり、地を駆けながら近付いてくる大小様々なモグラ達!


「穴の中に居たのはアイツらか」


 しかも、洒落にならない数!


「エルザ、“倍増薬液ランチャー”で“溶解液”をばら撒いて、モグラ共を牽制しろ! サカナは、上空からモンスターの動きを探りながら、エルザの援護だ! チトセとヘラーシャは、ダンゴ虫共を蹴散らせ! 私も援護する!」


「「「「了解!」」」」


 こんな突発クエスト、私達でとっとと終わらせてやる!


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