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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第13章 偽善に隠した悪意

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493.展開される罠

「モンスターが消えていく……終わった?」


挿絵(By みてみん)


「ああ、吸血皇を倒したんだろうね」


 屋根の上から街の様子を見渡しながら呟いた一言に、アマゾネスのシレイアさんが答えてくれる。


「ハァーァ……ようやく寝られそう」


 日を跨ぐ前に終わってくれたみたい。


「さすがに攻略組が戻ってくるまで待ってなよ、マスター」

「うん。ユリカさん達と合流して、隠れてるかもしれないプレーヤーの奇襲に警戒……ボス部屋の扉が開いていく?」


 吸血皇の城のちょうど反対側にある、ここからでも見えるほど大きい不気味な扉が。


「あん? ……どうやら、先に進むのを優先した奴等が居るみたいだね」


 扉が閉まったのち、物の十数秒で光が消えた。


「……かなり強い人達みたい」

「この早さだと、よっぽど良い装備を持ってたんじゃないかね。幾らなんでも早過ぎる」

「なるほど……あれ?」


 今、祭壇の方角から……女が何人かこっちを覗ってた?



◇◇◇



『私の立てた計画案、正式に許可して頂けるでしょうか? オッペンハイマー様』


『素晴らしい発案だと思うよ、ピーター。だが、君が考えたクエストがクリアされた場合、彼等は大きな見返りを得ることになる』


 モニター越しに、観測者の一人と話す。


『じゅ、重々承知の上です。ですが、他にクエスト難易度を上げる方法が思いつかないのです! 早く、高周波の魂を持つ者を葬らなければ!』


 ヒステリック気味な彼、いや、彼女はだいぶ焦っているらしい。


 煽った身ではあるが、彼女からここまで積極的な意見が出るとは。


 低周波の人間は、脅さないと労働に対してやる気を出してくれないとはいえね。


『良いだろう。システムが許す限りは、君の好きなようにやりたまえ』


『あ、ありがとうございます! では、私はこれで』


 通信が切れる。


『ジェンダーか。クク! 誰よりも性に囚われた存在』


 男女両方を経験するのが、神の思し召しだというのに。己の欲のためにわざわざ逆らうなんて……憐れだねぇ。



●●●



「――コセ!! 起きなさい、コセ!!」


 メルシュ達が吸血皇を倒した次の日、自分の部屋でユイと()()()()と寝ていたら、ドアを強く叩く音が。


「なんだい、朝から煩いねー」

「この声……アヤナさん?」


 髪を下ろしたユイとシレイアが、上半身を起こす。


「なんか、前にもこんな事があったような……」


 眠気と揺れる頭に鞭打つようにベッドから降り、欠伸をしながらドアを開ける。


「昨日は皆遅かったんだから、もう少しゆっくり寝かせてくれよ」


挿絵(By みてみん)


 メルシュ達が特殊クエストを終えて戻ってくるのを待っていたから、参加していない俺も眠いのだ。


「そんなことより、チョイスプレートに送られてきた通知を……――キャアアアアアアアアアアア!!!」


挿絵(By みてみん)


 いきなり黙ったと思ったら、叫びながら走って逃げていくアヤナ?


「なんなんだ、いったい?」

「コセ、昨夜アタシらとたっぷり楽しんだのを忘れたのかい?」

「……あ」


 自分が裸だってこと、完全に忘れてた。



            ★




○第二回大規模突発クエスト開催のお知らせ。


○開催地は、十の倍数のステージ全てであり、開催地ごとに参加選手は区分される。


○参加手続きが出来るのは六月二十一日の十二時まで。


○クエストの開始日時と詳細は、会場となるステージに設けられた特設テントにて、手続きを行った者にのみ明かされます。



 アヤナに叩き起こされたのち、朝食を食べる前に主だったメンバーと三十六ステージに居るメンバーの大半で食堂に集まり、この件について話し合う事に。


「お願い――大規模突発クエストに参加してちょうだい!!」


 恥も外聞もなく、頭を下げるアヤナ。


「理由は……これか」



○クエスト最大の景品は、死者を蘇らせられること。


○ただし、生き返らせられるのはプレーヤーに殺されていない人間のみ。



「俺達の知り合いで、この条件が当てはまるのは……アオイだけか」


 ウララさんの弟は獣人の男に殺されてしまっているため、今回の蘇生条件に当てはまらない。


「解ってるの、アオイ? これは、明らかに私達に対する罠よ」


 メルシュの声音は、いつになく厳しめ。


「このクエストに参加出来るのは、三十六ステージに居るメンバーがギリギリ。三十四に居る私達は、間違いなく間に合わない」

「俺達が今すぐ動けばなんとかなるだろうけれど、その場合、メルシュ達との合流が遅れる」


 このタイミングと参加条件、明らかに俺達を合流させないための物だ。


「薄々、気付いてた。けれど……」


「人を生き返らせるなんて景品が用意されたクエスト、いったいどれだけ理不尽な内容に設定されているか判らないんだよ?」


 メルシュの声が、更に冷たさを帯びる。


「なんでもする……なんでもするから――アオイを助けて! 助けてください!!」


 鈍い音が響くほど強くオデコを床に打ち付けながらお願いするアヤナは、あまりにも痛々しい。


「私からも――頼む!」


 ルイーサまで、アヤナの横で土下座し始めた!!


「……コセさん。私達なら、いつでも出発オーケーですよ」


 この件にもっとも異議を唱える権利があるウララさんから、真っ先に肯定的な意見が!?


「残り四日と数時間で、四ステージを踏破しなければならないんですよ?」


 一日一ステージのペースで順当にクリア出来たとしても、辿り着く頃には相当消耗しているはず。


「なら、早く出発準備を済ませなければなりませんね!」


 ウララさんの気持ちを推し測れないな……念のため注視しておこう。


「……そうですね」


 取り戻せる可能性があるのなら、取り戻してやりたいというのが正直な気持ち。


「コセ……」


「メルシュ。アオイを生き返らせられるのは本当か?」

「……それは確実。プレーヤーに殺されていない場合、その人間の構成データはそのまま保存されているはずだから」


 データ……ね。


 メシュと行動しているときに一度思った事だけれど、この世界に居る俺達が本物なのか……いよいよ疑わしくなって来たな。


 まあ、俺や皆がコピーだろうがなんだろうが、やることは変わらない。


「クエストに挑む気? どんな悪辣な罠が仕掛けられているのか分からないんだよ?」


 メルシュの声は尚も厳しい。


 だからこそ、自分がちゃんと生きている存在だとも思えた。


「そんなの、今に始まった事じゃないさ」


 むしろ、事前に開始タイミングがある程度判っているだけマシと言える。



「挑むぞ、第二大規模突発クエストに」



「……ありがとう、ありがとう――コセ!」


 立ち上がったアヤナが、泣きじゃくりながら抱き付いてきた!?


「おい……」

「ありがとう、ありがとう……」


 まだアオイを生き返らせられたわけじゃないのに、この喜びようか。


「私からも礼を言うよ、コセ……でも、くれぐれも気を付けるんだぞ」

「……ああ」


 ルイーサの不安そうな顔には、どこか罪悪感が滲んでいるようにも見えた。


「悪いな、メルシュ」

「マスターが決めたなら、まあ仕方ないよ」


 先程までと打って変わり、あっけらかんとした態度のメルシュ。


 俺と言うより、アヤナを試したのだろうか?


「それじゃあ、三十六ステージに居るメンバーは全員、九時までに攻略準備を整えるように。この場に居ないメンバーにも伝えてくれ」


 こうして、俺達の正式な再会は……また遅れることとなった。


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