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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第13章 偽善に隠した悪意

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490.食糧庫と冷凍庫

「ここが食糧庫(パントリー)……」


 豚コックを殲滅してから奥に進んだ先にあったのは、バカみたいに巨大な食糧保管庫。


「無駄すぎじゃないかしら~」


 棚は二階分程の高さがあり、なんのためにこんなに広いのか理解できないわね。


「色々置いてあるな。酒とか肉とか……ここにある物は回収出来るそうだが、さっきの殺人コック共を見た後だと気が引けるな」

「特にお肉は、でぇすねー」


 メグミちゃんとクリスちゃんは、この場所の食べ物を回収するのは嫌みたい。


「まあ、これはゲーム的に用意された物なんだし、本物じゃないでしょ。それに、後でチョイスプレートを見て名前を確認すれば、それがヤバい物なのかは分かるじゃない」

「貴重なサブ職業が手に入るそうですし、さっさと済ませましょう」

「だな」

「はぁい」


 リンピョンちゃんの説得もあって、四人で棚の食糧を回収していく。



○“Lvアップの実”×6を手に入れました。

○“万能樹液”×12を手に入れました。

○“不浄な眼球”×4を手に入れました。

○“聖者の遺骨”×6を手に入れました。

○“硫黄”×7を手に入れました。

○“黒色火薬”×9を手に入れました。

            :

            :



「稀に良い物もあるみたいだな。不気味な物も多いが」

「そう言えば、調合の素材になる物が色々置いてあるって言ってたっけ」


 メグミちゃんの言葉に、メルシュちゃん達が話していた内容を思い出す。


「サトミ様、アレを」


 リンピョンちゃんが教えてくれた方向で光が輝きだし――私に向かって飛んできた!?


「もしかして、もう全部回収し終えたの?」


「上の方、リンピョンが頑張ってまぁしたよぉ」


「えへへ」


 クリスちゃんに褒められて、嬉しそうなリンピョンちゃん。


「確か、“猟師”と”漁師”に、“採取師”のサブ職業だったか」


 私の手の中にあるのは、三枚の青いメダル。


「どういう物ですかぁあ?」


「“猟師”は、陸上生物モンスター、飛行生物モンスターを倒した時に、素材入手率を百パーセントにしてくれる物よ」

「魚と書く方の“漁師”は、水棲モンスターに対して効果を発揮するんだったか」

「“採取師”は、植物系モンスターに対してでしたっけ」


 つまり、この三つのサブ職業は直接的な戦力アップには繋がらないのよね~。


「序盤は一番楽なルートとは聞いていたが、ここで大体三分の一だったか」

「じゃあ、ここからが本番でぇすね!」

「ええ、気合を入れて行くわよ!」


 四人で、食糧庫の奥の扉を潜――ッッ!!


「「「「寒ッ!!」」」」


 扉を超えた途端に一気に景色が変わり、冷気が吹き荒れる薄暗い場所に!?


「サトミ様、扉が!」


 勝手に閉じた挙げ句、内側のハンドルが回って凍結してしまう!


「閉じ込められてしまったみたいね」

「この寒さ、早くこの場所を抜けないと凍死しそうだ」


 いきなり空気が冷たくなったせいで一気に肺が凍えたようで、息苦しいし喉も痛い。


 呼吸を浅くし、肺の凍えが和らぐのを待つ。


「ここは……もしかしてぇ、冷凍庫?」


 フックで天井から吊された大量の巨大肉塊のせいで、奥が見渡せない。


「この肉塊、いったいどれだけ巨大な生物の物なんだか」


 長さ五、六メートルはありそうだけれど、形はバラバラ。不自然な程統一性が無いわね。


「私が先頭で進む。リンピョンは殿(しんがり)を頼む」

「了解」


 メグミちゃんを先頭に、私、クリスちゃん、リンピョンちゃんの順で肉塊同士の隙間を進むことに。


 クリスちゃんは、奇襲を警戒してか隠れNPCとして元々持っていた装備、“薔薇騎士の剣”と”薔薇騎士の盾”に持ち替えていた。


「……不気味な程静かね」


「前は私が確実に対処する。サトミとリンピョンは側面からの奇襲に気をつけてくれ」


 盾使いであるメグミちゃんは、こういうとき本当に頼りになるわね!


「――なにか居る!」


 私の後ろにいたクリスちゃんが、突如として警戒の声を上げた?


「……居なくなりまぁした」

「どんな奴だった?」

「黒い、不気味な人型でぇした」


 そう言えば、この冷凍庫に出没するモンスターについてメルシュちゃんから聞いていなかったような……。


「……気配が増えてきています。囲まれるのは時間の問題でしょう」

「仕方ない――囲まれる前に一気に駆け抜けるぞ!!


 メグミちゃんを筆頭に、四人で駆け出す!


「――ぁ」


 薄らと凍っていた床を思いっ切り踏んでしまったみたいで、前のめりに転倒――していく最中、“宮廷魔導師の帽子”をなにかが薙いだ?


「――”ウィクショナリー”です!!」


 クリスちゃんの切羽詰まった声にようやく、自分が間一髪助かったという事実に気付く。


「く!!」


 顔まで黒尽くめの人型モンスターによる斧の一撃を、私の代わりに盾で防いでくれるクリスちゃん。


「――“万変の霧”!!」


 背後からクリスちゃんを刺突剣で攻撃しようとした別の“ウィクショナリー”の攻撃を薄紫の霧で止め、続けて鞭のように振るわせて退けた!


「……囲まれちゃったか」


 メルシュちゃんもリンピョンちゃんも、前と後から仕掛けてきた黒尽くめに襲撃されている。


「なに!?」


 メルシュちゃんが驚いたかと思えば、私達の前から一斉に……黒尽くめ達が肉塊の影に姿を消した?


「まさか、ヒット&アウェイ狙いか?」

「ちょっと厄介ですね」


 それから数分間警戒を続けるも、仕掛けて来る気配は無し。


「焦らせまぁすね。三十ステージに入ってから、モンスターの行動が少し複雑化している気がしてまぁしたが」

「このまま留まっていても、寒さで体力を奪われる。とにかく注意して進むぞ」


 メグミちゃんの言うとおりだけれど……。


「このお肉が邪魔なんだけれど、確か壊せないんでしたよね?」


「ええ、そのはず…………」


 なんとなく、“紺碧の空は静寂を願いて”に三文字刻んでみる。


「サトミ、なにをするつもりだ?」

「ちょっとした思い付きよ」


 文字を刻んだ時の冴え渡るようなあの感覚を、もっと広範囲に広げられればってね。


「……なるほど」


 単なる思いつきだったけれど、集中すれば霧越しに気配を掴む事が出来そうかしら?


「リンピョンちゃん、私に“同調”を」

「ありがとうございます! ――”同調”!」


 何故かお礼を言われてしまったけれど……うん、良い感じ。


「私の合図に任せて。それじゃあ、進みましょうか」

「で、どうするつもりだ?」

「黒尽くめが出て来ても、メグミちゃんとクリスちゃんはその場から動かないでちょうだい」

「私達で捕まえてみせますから」


 “同調”により、私とリンピョンちゃんの感覚は共有されている。


「分かった」

「オー、楽しみでぇす」


 フフ、見てなさい。


「さっきのこけた借り、絶対に返してやるんだから!」


「……サトミがぁ、勝手にこけてまぁしたよね?」


 そんな事実はないわよ、クリスちゃん!


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