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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第13章 偽善に隠した悪意

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483.変異種の正体

「どうだった、コトリ?」


 キャロルさんの物だったスキル、武装白馬である”戦乙女の天馬”で空から偵察していたコトリに、ザッカルさんが声を掛ける。


「そこかしこにあの鮫の砂煙が見えたよ。しかも、どんどん増えている感じだった」


「増えてる?」

「それで、本命の変異種は?」


 私の疑問は拾われる事なく、ザッカルさんが話を進めてしまう。


「それっぽいのは見てないよ。砂煙の感じも全部一緒だったし」

「このままだと、根こそぎ倒していくという方法しか思い付きませんね」


 その方法で上手くいく可能性も高いとは言えないし……厄介極まりない状況。


「普段、いかにメルシュさん達の情報に救われているのか解りますね」


 エレジーの言葉には同意だった。


「うーん」

「どうしたの、コトリ?」

「やっぱさ、どんどん増えている気がするんだよね……周りの砂煙」


「それは……確かに」

「それがどうかしたのですか?」


 エレジーが尋ねた。


「一斉に現れたでもなく、この第四層に満遍なく増えていってる感じで……只の無限湧きなのかなって」

「変異種が他に居るって気付いたのはお前だ。俺はお前の考えに従ってやるよ」


 ザッカルさんからの意外な言葉に、コトリへの嫉妬心が込み上げてしまう!


 確かにコトリは、脳筋のようで頭が切れるタイプ。


 マリナとは違うタイプの聡さを持っている。


「増えるのに一定の法則がある……もしかして、コイツの生態?」


 おもむろにチョイスプレートを展開し、ライブラリを参照していくコトリ。


「皆さん、デッドリーシャーク三体が近付いてきます」


 アルーシャさんの警告が飛ぶ!


「今忙しいから、四人でなんとかして」


 ライブラリと睨めっこしながら、とんでもない事をのたまうコトリ!?


「……またか」


 コトリは、たまに突拍子もない行動を取ることがあるけれど……そういう所がちょっとギルマスに似ていて狡いって思ってしまう。


「とっとと迎撃するぞ!」


 ザッカルさんの言葉を合図に、コトリ以外の全員が戦意を漲らせる。


「私の命は任せた、ケルフェ」

「……本当に!」


 そういう所で、私の負の感情を霧散させてしまうから狡い!


挿絵(By みてみん)



●●●



「ふむふむ」


 ライブラリ機能で、デッドリーシャークについて調べていた。


「デッドリーシャークは、変異した“デザートハンマシャーク”から大量発生している猛毒鮫……か」


 つまり、私達が倒すべき変異種ってのは、あの巨大な“デザートハンマシャーク”が変化した個体。


「だとすると、砂煙を上げて暴れ回っている鮫の中に、変異種は居ない」


 しかも、変異種がデッドリーシャークを産み出している以上、実質無限湧きかも。


「天馬!」


 翼を羽ばたかせて、キャロルさんの愛馬に上昇して貰う。


 第三層の裏面に取り付けられた反射板近くまで行きながら、さっきよりも第四層を広く俯瞰。


「……あそこか」


 デッドリーシャークがある地点、滝の周りから周囲へと広がっていくのに気付く。


「あの地下に変異種が居るとすれば、辻褄が合う」


 他に、似たような出現の仕方をしている場所は無い。


「これ、空を行ける私じゃなきゃ近付けなくね?」


 幸いと言うべきか、ケルフェ達に向かってデッドリーシャークがどんどん集まってる。


「今がチャーンス!」


 天馬を駆り、デッドリーシャークが発生している中心部、滝の傍の砂地を目指す!!


「取り敢えず、あの場所に一発デカいのを――」


 目指していた砂地に到着するという直前、砂地が盛り上がって――――濃紫の巨鮫が、顎を開きながら飛び出してきた!!


挿絵(By みてみん)



「――“大音響”!!」



 咄嗟に“大音響の指輪”を使用――音波を浴びせられた巨大鮫が苦しんだおかげで、勘一発、私の横を飛び去っていき……砂場へと落下していく。


「……あっぶなー」


 追撃しなきゃと思い直す頃には、デザートハンマシャークを超える巨大鮫は砂の中へと消えていた。


「デッドリーシャークが戻ってきてる」


 一旦、退いた方がいっか。


「情報は持ち帰れそうだし、合流を優先しよ」


 天馬に踵を返させながら、チョイスプレートでライブラリを確認。


「ブリードデッドリーシャーク……汚染物質によって変異。繁殖能力が異常発達しており、短命で凶悪……三分に三尾産む」


 事実上、一分に一尾じゃん。


「毒を撒き散らすから直接攻撃出来ないモンスター、それがとんでもないスピードで増え続けるのか」


 多分、繁殖数に上限は無い……。


「これ、全員で協力しないと無理かも」



●●●



「……フー、緊張する」


 “崖の中の隠れ家”の庭にて、俺はある決意を固めようとしていた。


「そんなにも危険な行為なのですか?」


 トゥスカが心配してくれる。


「ああ。最悪、半日気絶してしまうかもしれんない」


 と言いつつ、本当になにが起きるか分からないんだよな。


 ノーザン、チトセ、チトセの使用人NPC、カプア、ウララさんの五人が見守る中、俺はチョイスプレートを開く。


 俺が今挑もうとしているのは、文字化けした“シュバルツ・フェー”の実体化。


 破損状態となっていたため放置していたけれど、いつの間にか文字化けが変わっていたうえ、破損状態も改善されていた。


「やめておいた方が良いのでは?」

「そうです……貴方になにかあったら……私」


 とても不安げなカプアさんとウララさん。


「今は突発クエストのクールタイム期間。不測の事態が起きても、リスクを最小限に抑えられる」


 この文字化けのせいで、“シュバルツ・フェー”も“グレートグランドキャリバー”も使えなくなってしまっている。


 この現象が続いて、他の武器まで消えてしまうなんて事は避けなければならないため、破棄する事も考えないといけない。


 今は、そのための判断材料が欲しい。


「よし……行くぞ!!」


 メイン武器欄にセットし――実体化!!


「――な!!?」


 左腕の竜を模した、鎧の甲手部分が変質し――三十三ステージで戦った魔神・呪い竜が受肉したかのような頭に変わっていく!?


「「コセさん!?」」

「コセ様!!」

「大丈夫だ!」


 カプアとウララさん、ノーザンの三人を宥める。


「大丈夫……違和感はあるけれど、痛くはない」


 そして、文字化けしていた剣が、何故か変質した左腕の手の平の上で実体化していく。


 左右の設定はしていなかったとはいえ、他の剣を持っていない状態なら、いつもは利き手側に出るはずなのに。


「……これは……なんだ?」


 柄部分はあるけれど、それ以外が青白い光の粒子とポリゴンまみれ。


「左手に吸い付いているようで離れない……」


 ……俺が、“グレイトドラゴンキャリバー”を“偉大なる英雄竜の猛撃剣”に変えたように出来れば。


「――――!!」


 神代文字を刻むつもりで、この手の柄だけの剣に強い想いを送る!


 ただ、猛撃剣や天竜王鎧を生み出した時のような……この剣に望む物を、ハッキリと思い浮かべる事が出来ない。


「――――っぁぁあああああああッッッ!!!」


 剣からなにか()()()()()()()()()――()()()()()()()()()()ッッ!!


「――ご主人様!!」


 トゥスカの慌てる声に持っていかれそうな意識を繋ぎ止め――俺を襲う暴虐を、捻じ伏せる意志へと変えていくッッッ!!!


「……ハアハア、ハアハア」


 痛みと共に受肉の竜の頭も消え、呼吸する余裕が戻って来る。


「ご主人様……」

「大丈夫……なんとかなった」


 俺の左手の中に握られていたのは、青味を帯びた黒鉄で出来たような……質素な直刀?


挿絵(By みてみん)


 それに、左腕の異物感は前より強くなっている。


 ただし、以前のような不安定性はなく……むしろ、ようやく安定したという感じ。


「トゥスカ……」

「はい」

「あと……よろしく」


 落ち着いてきた所で、全身が脂汗まみれで疲労困憊である事に気付き……俺は、身体の声に従って意識を手放すことにした。



○“名も無き英霊の(つるぎ)”を手に入れました。



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