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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第13章 偽善に隠した悪意

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482.突発クエスト・変異種を討伐せよ


『これより突発クエスト――変異種を討伐せよを始める!』



 肩に“変幻蟲の巨剣斧”を担ぎながら、辺りを警戒する。


『モンスターを全て始末したタイミングを狙ったのか?』


 少しでも体力が削られた状態を狙ってたとしたら、今回の奴も相当意地汚い野郎らしい。


『五分後、第四層に変異種モンスターを登場させる。そのモンスターを倒せばクエストは終了。ただし、時間制限は今から半日! 説明終了だ!!』


「……へ、今ので終わり?」


 バロンの隠れNPC、ミレオが虚空に疑問を投げ掛ける。


「随分短い説明だったな。どうする、キクル?」


 グダラに尋ねられた。


『この広い空間のどこに現れるのか判らない以上、無闇に探し回らない方が良いだろう。取り敢えず、レイナ達と合流しよう』


 暑さで体力も奪われている。モンスター一体倒せば良いなどと、楽観視できるような状態じゃない。


『……フ』


 独りでの旅なら、死がチラつく感覚も楽しめたんだけれどな。


「なによ?」


 グダラの顔を覗ったら、変な目を向けられてしまった。


『いや、別に』


 ……どうして俺は、古城遺跡でグダラを誘ってしまったのだろうか。


「キクルさん、気配が近付いてくる!」


 髪を纏めて適当に結わえた美女、ラフォルが警戒の声を上げた。


『アレか』


 砂煙を上げながら、砂漠の中を猛スピードで泳いでいるなにか。


 デザートハンマシャークが起こす砂塵に似ている気もするが、アレよりは小さい。


「私が対処いたしましょう」


 怜悧とも取れる淑やかな声で前に出ようとしたのは、ホーンという種族に設定した有角の使用人NPC、ディア。


『俺がやる。援護に入れるように後方で散れ』


 俺が前に出る頃には、全員が素早く配置に着く。


『“重力魔法”――ヘビープレッシャー!!』


 砂塵に対し、上から重力圧を叩き付ける!!


『なんだ、コイツは?』


 毒々しい紫色に染まった大型サンドシャークに、手脚が生えたかのような気味の悪い姿が現に。


『ミレオ』

「デッドリーシャーク。毒を撒き散らす厄介なモンスターだよ。皮膚に触れるだけで毒を食らいかねない」


『見た目通りの能力というわけか』


 オリジナルのファンである俺が、まったく憶えのないモンスター。


 じゃなきゃ、変異種という設定がおかしいことになるか。


『随分弱いが……』


 この変異種モンスター、俺の重圧に耐えてはいるが、まったく動けないらしい。


『このまま始末しても良いのか?』


「ソイツの体液は猛毒だから、武器で攻撃すると広範囲に毒を撒き散らすことになる」


『なるほどな』


 弱いとは思ったが、それは面倒な能力を持たせたためだったのか。


『頼む、グダラ』


「良いわ! “緑雷魔法”――グリーンスプランター!!」


 俺の魔法を解除した直後、グダラの雷が“デッドリーシャーク”を黒焦げにして息絶えさせる。


「本当に呆気なかった……これって、本当に突発クエスト?」

「確かに、私が二十ステージで遭遇したクエストに比べると物足りない気がします」


 疑問に思うグダラに、ラフォルも意見を述べる。


『……おかしい』


 滝の色が変わらない。


『突発クエストの終了宣言もされない……』


 まだ終わりじゃないって言うのか。



●●●



「“ニタイカムイ”!!」


 ハヌマーの“紫雲猿の棍棒”が横っ腹に直撃――デッドリーシャークが大きく吹き飛んでいく!


「“鏡面魔法”――ミラーレーザー!!」


 鉄と光属性の魔法により造り出した鏡より光線を放ち、毒々しい身体を蒸発させる。


「これで三体目。あと何体倒せば良いんだか」


 ハヌマーが戻って来た。


「戦い方さえ気を付ければ大した事ないみたいだし、かなりの数が居るんじゃないかしら?」


 赤い鱗を持つ人魚、マリンの推論。


「クエストの説明は変異種を討伐せよだったから、てっきり一匹始末すれば良いと思ってたんだけど」

「逆に複数居るとも言ってなかったから、嘘を付いたとは言えないけれど……性根が腐ってるのは確かでしょうね」


 二人が文句をたれている。


「……」

「どうしたん、レイナ?」


 ハヌマーが尋ねてきた。


「クエストの説明だけれど、変異種を全て倒せとは言ってなかったなって……」


 あの言い方だと、ハヌマーみたいに一体だけと勘違いしてもおかしくない。


「……なんだか、罠に嵌められている気がする」


 このクエストの勝利条件……正確に見極めなければ、私達はいつまでもデッドリーシャークと戦い続けなければならないのかも。


「サザンカ」

「は!」


 恭しく膝を付き、こうべをたれる私の二代目隠れNPC。


「このダンジョン・ザ・チョイスというゲームにおいて、変異種という位置付けはなんですか?」

「……既存のモンスターが変異した個体を指します」

「では、デッドリーシャークは()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「……デッドリーシャークは、変異モンスターにはカテゴライズされていません」


「「……え?」」


 つまり、デッドリーシャークを幾ら倒しても変異種を倒したことにはならない。


「討伐対象は……他に居る」


 頭の良いキクルさんなら気付いているかもしれないけれど、この事を他のメンバーにも伝えた方が良い。


「仲間と合流を図りつつ、変異種モンスターを捜します!」


 デッドリーシャークよりも厄介であろう変異種モンスター……いったい、どんなモンスターなんだろう。


 常に不安そうにしているミドリさんと共に、五人で別の戦闘場所へと向かって歩き出す。



◇◇◇



『勘の良い女だな、レイナとかいうガキ』


 だが、気付いた所でどうしようもないはず。


『コセやアテルを突くのは怖いし、ワイズマンに搦め手は読まれてしまう』


 ならばと、一番弱い奴等を狙わせて貰った!


『頼むよ、お前ら。俺は――殺されるなんてごめんなんだ!』


 なにかしら成果を挙げないと、本当にオッペンハイマー様に殺されかねない!


 冗談という体で言っていたが、俺のような社会的立場が知られていないような輩は、始末されても足は付かないんだ。


 警察も司法も大富豪も、世界中のトップ連中のほとんどが俺達DSの味方なんだからな!


『頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む!!』


 俺は、お前ら金づる愚民のように惨たらしく殺されるのはゴメンなんだよ!!



『――俺の代わりに、お前ら全員死んでくれよ!!』



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