467.戦士の帰省
○戦士.Lv61になりました。装備セット機能がプラス1されます。
○戦士.Lv62になりました。スキルセット機能がプラス1されます。
○戦士.Lv63になりました。以下から倉庫指輪を選択出来ます。
★剣倉庫の指輪 ★槍倉庫の指輪 ★斧倉庫の指輪
★盾倉庫の指輪 ★棒倉庫の指輪 ★鎚倉庫の指輪
★弓倉庫の指輪 ★杖倉庫の指輪 ★針倉庫の指輪
★転剣倉庫の指輪 ★拳鍔倉庫の指輪
:
:
○戦士.Lv64になりました。サブ職業がプラス1されます。
朝、“吸血皇の城”の俺の部屋、ノーザンが裸で眠るベッドに腰掛けながら、自分のLvを確認していた。
「ん……♡」
隣で、寝息を立てている牛獣人の女の子。
「昨夜は、ノーザンに甘えすぎたな」
こういうストレスの発散の仕方、我ながらかっこ悪い。
相手が心を通わせた相手だから、なんとか虚しくならずに済んでいた。
「俺は、迷う必要も無く“剣倉庫の指輪”だな」
トゥスカが“転剣倉庫の指輪”を使用していたため、用途は解っている。
「……さて」
久し振りに、皆に会いに行くか。
★
「これが、コセの魔法の家か。良いところだな」
「雰囲気も良いじゃん」
リューナとマリナが、各々の感想を漏らす。
「なんだか懐かしいですね、ノーザン」
「はい。数年ぶりに帰郷したような気分です」
三十六ステージに跳ばされていたトゥスカ、ノーザンの二人は感慨深そうだ。
二十八ステージより先で出会った仲間達に、離れ離れとなっていたトゥスカ達を加えた十人で戻ってきたわけだけれど……俺も、酷く懐かしい気分になってきた。
「ガウガウ!」
「なんだ?」
「大丈夫だ」
警戒心を顕わにしたエルザを宥めた次の瞬間、家の扉を勢いよく開けてバニラが飛び出してくる。
「ハハ! ただいま、バニラ」
「キャウ~♪」
正面から飛び掛かるように抱き付いてきたのは、人の言葉を喋ることが出来ない、希有な育ち方をした赤髪の少女。
前髪を払い、頭を撫でてやる。
「俺のこと、憶えててくれてたんだな」
動物は、暫く会っていないと飼い主のことを忘れることがあるらしく、さして共に過ごした時間が長くないバニラは、俺のことを忘れているかもしれないと、ちょっと心配だった。
「まるで動物みたいに……」
チトセが、困惑と憐れみの目を。
「この子、バニラのことも含めて、仲間達について色々教えるよ」
そうこうしているうちに、“神秘の館”から次々と人が出て来る。
「お帰り、マスター」
「ただいま、メルシュ……みんな」
半月ぶりに俺は、我が家へと帰還した。
★
一通りの自己紹介を終えたあと、皆は個人個人の交流を図っていた。
「チトセさんて、お人形みたいで可愛いですね~」
「本当に……年上とは思えない愛らしさ」
いつもモモカでキャッキャウフフしているテイマーの隠れNPCであるサキと、金髪のハーフ美少女であるジュリーがチトセを囲んでいる。
「チトセさんて、どことなくサトミ様に似ていますね」
「確かに、髪型とか似ているかもしれないわね……」
兎獣人のリンピョンと魔性の大和撫子サトミが、少し離れた場所からチトセを窺っていた。
サトミなら、自分からちゃん付けで声を掛けそうな物だけれど。
やっぱり、アヤの死が尾を引いているのか。
「ジュリーさんから聞いていたけれど……強そう」
「私達とはどこか違う佇まいですね、ユイ先生」
リューナと対面しているのは、ヒビキという上のステージから戻されてきた女性とユイ……ユイ先生ってなんだ? 明らかにユイの方が年下だろうに。
「合気道と実践的なシステマを修めている。手合わせしてみるか?」
「「是非!」」
「なら、鍛錬場に案内するっすよ」
サンヤという山猫獣人を先頭に、四人が食堂から出て行く。
「これが使用人NPCかー……可愛すぎない?」
「このような精巧な人間を、自分の手でデザイン出来るとは……エルフもビックリの美しさだ」
ナターシャを囲んでいるのは、胸の主張が強いお下げ髪眼鏡のユリカと、エルフの騎士団長だったというレリーフェさん。
レリーフェさんとは、一度話をしないとな。
「フ……なかなかやるじゃない」
「何を上から目線で評価しているんだか」
ナターシャを品定めしていたらしいバトルパペットの紫ゴスロリ黒髪人形のローゼに、同じくバトルパペットの白ドレス金髪人形のマリアがツッコんでいた。
「マリナ、これあげる」
メルシュが、水色の衣服をマリナに差し出した?
「なにこれ?」
「“硝子の綺羅ドレス”、Aランク。今マリナが着ている“氷光の魔道服”の上位版になるよ」
いつの間にか皆の装備が色々変わっていたようだったけれど、あの服って、今サトミやジュリーが着ている服の色違いかな? 似ている気がする。
「マスターにはこれを上げる」
メルシュが投げて寄越してきたのは、どこか“大地の盾の指輪”に似た色合いの重厚な……これ、ユリカの“煉獄王の指輪”に意匠が似ているような。
「“大地王の指輪”だよ」
「Sランクか……そうだ! 俺も、あれから色々手に入れてたんだった」
俺が皆と離れてから手に入れた、“エターナルマラカイトリング”を始めとした高ランクアイテムなどを、チョイスプレートを使ってメルシュに送る。
★
「コセ殿、少し宜しいでしょうか?」
メルシュ達がアイテムを検分、分配している最中に声を掛けてきたのは、レリーフェさん。
「なんですか?」
「場所を変えましょう」
彼女に連れられ、廊下の方へ移動する。
「私からお願いしたことで恐縮なのですが……レギオン、《高潔騎士団》との同盟を破棄して欲しいのです」
意外な提案に、思考が一瞬……暗雲を彷徨うような気分に。
「……理由は?」
「これから合流する予定のキクルという漢の一団には、私の元部下が居るのですが……彼女を、騎士団に接触させないようにしたいのです」
接触させないだけなら、現状のままでもどうにかできそうな物。
「他にも、理由があるはずですよね?」
「……その……私自身が、彼等を見捨てたいのです」
本当に、意外すぎる発言。
「見捨てたい?」
「……私は、なんだかんだで同族を贔屓していました。色眼鏡で見てしまっていたと言って良い……だから気付いたのです。《高潔騎士団》の存在は、コセ殿達に大きな不利益をもたらし兼ねないと」
なんとなくに過ぎないけれど、レリーフェさんの言葉には同意見だった。
レリーフェさん以外のエルフ達は、俺達と精神性が違いすぎる。
俺達には彼等の考えはある程度理解できるが
けれど、彼等はきっと……俺達を理解できない。
神代文字を刻める数で態度をコロコロと変えられるのが、その証拠と言っても良いだろう。
「ルフィルはきっと、私よりも先に気付いていたのでしょう。エルフ族の欺瞞と傲慢さが、救いようのないレベルなのだと」
ルフィル……リューナとパーティーを組んでいたエルフだったか。
「……同盟を一方的に切る場合、それなりに遺恨を残すことになると思う。それについては?」
「――私を矢面に。全ての怒りと怨みが、私に向くように」
この人の覚悟の決め方は、痛々しく思えるほどにストイックで……美しい。
「場合によっては、私の首で納得させます」
「そんなことになるくらいなら、同盟関係を続けたままやんわりと見捨てた方がマシだ」
こちらから連絡を取らず、一切の攻略情報を渡さなければ、彼等が俺達の攻略スピードに追い付くことは不可能。
「もしくは、話が拗れた際に徹底的に潰すとかかな」
「それは……」
根底の部分では見捨てられていないのだろう。
だからこそ、俺はレリーフェさんを人として信用できる。
「皆で話し合って決めよう。俺達はレギオン、《龍意のケンシ》なんだから」
「……はい! ……ありがとう、コセ殿」
肩の荷が下りたのか、その時のレリーフェさんの笑顔は……とても愛らしく見えた。
これから書き溜めていく予定です。次話は少し間が開くと思いますのでご了承ください。




