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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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460.漢の死闘

「ハアッ!!」

「フンッ!!」


 試合開始の合図と共に、互いの武器を正面からぶつけ合う俺とヴァルカ!!


 一瞬の競り合いののち、互いに大振りの連撃を見舞う!


 向こうの方が体格が良いのもあって、押されているか。


「“獣化”」


 黒い巨犬の人獣となり――膂力と瞬発力で圧倒されてしまう!


『とっとと本気を出すが良い。貴様が我が妹の言うような男ならば、この程度ではなかろう』

「……そうだな」


 “振り抜き”、“軸足”などの“大戦士”に含まれた補助スキルを総動員しても、“獣化”したヴァルカには打ち負けている。


「狡いとか言うなよ――装備セット1」


 “サムシンググレートソード”と、“偉大なる英雄竜の猛撃剣”の二刀流となり――神代文字を九つずつ刻む。


『二刀流か、これは想定外。肉を切らせて骨を断ってやるつもりだった――のだがな!!』


 頭上からの振り下ろしを、左手の猛撃剣で打ち払う!


『ク!』

「ハイパワープリック」


 右手の剣で突き込んだ瞬間――身体を前に押し出して、自ら深々と刺された!?


「ガッ!!」

『このまま、ガフッ!! 首を折ってくれる!!』


 “サムシンググレートソード”を手放し――鎧の右腕の装甲に三文字を刻んで、俺の首を絞めている指の骨を折るッ!


『グゥッッ!!』


「“空衝”!!」


 奴の胸の上で空を跳ぶスキルを足裏から発動――衝撃で、その巨体を押し飛ばす!


 その代わりに、“サムシンググレートソード”が奴に突き刺さったまま離れていってしまった。


『スティール……ダメか』


 剣から光が弾け……ヴァルカのスティールを、グレートソードが無効化した?


 突き刺さっていた剣を抜き、捨て去るヴァルカ。


『まあ良い。そろそろ本気を出そうか」


 人の姿に戻った?


「どうした? さっさと剣を装備し直せばいいだろう」


「その剣は、もうこの試合では使わない」

「なに?」


 猛撃剣を右に持ち替え、新たに“グレートグランドキャリバー”を装備する。


「その剣はお前に奪われた。だから、俺には使えない」


「……クク――フハハハハハハハ!! くだらぬ事を!!」


 高らかに笑われた!?


「意地かなにかは知らんが、面白い事をほざく小僧だ――気に入った」


 ヴァルカの圧力が増す!!


「だが、我が妹の伴侶に相応しいとは――まだ認められんなぁぁ!! “ニタイカムイ”!!」


 緑のオーラを纏った!


「“ホロケウカムイ”!!」


「な、カムイを同時に!?」


 青と緑の濃密なオーラが、ヴァルカの身体を覆っている。


「なんだ? トゥスカから、俺のユニークについて聞いていなかったのか?」

「俺が、聞くのを断ったんだ」


「は? なんのために?」


「アンタは、俺の戦闘スタイルを知らない。なのに、俺だけ一方的に決闘相手の能力を知っているのは不公平だ」


「――ハハハハハハハハハハハハ!! まさか、お前のような異世界人がいるとはな! 俺の妹の目は、節穴ではなかったらしい!」


 手にしている黒斧に、九文字刻んだ!?


「まさか、神代文字まで使えたとは」

「俺を、妹に負けたときの俺と思うな。今回ばかりは――一切の容赦はせん!!」


 突っ込んできたヴァルカに対し、俺は剣と鎧に十二文字を刻み――“グレートグランドキャリバー”に文字の力を流し込む!


「おおおおおッッ!!!」

「ぅらあああああッッ!!!」


 文字では勝っているのに、僅かに押されている!!


 二つのカムイと体格の差により、文字の差を覆されているのか!


 なにより、文字を刻めない“グレートグランドキャリバー”の違和感が、“サムシンググレートソード”による二刀流の時よりも動きを悪くしている!!


「“逢魔斧術”」


 ――コイツ、九文字から十二文字に!!



「――オミナスブレイズッ!!」



「“不撓の恵み”!!」


 “グレートグランドキャリバー”の効果により、黄光に包まれている三秒間のみは、全ての攻撃を無効にする!


 日に、三度までしか使えない能力。


「“飛王剣”!!」


 刀身を直接斬り付けるつもりで振るい、後退しようとしたヴァルカに斬光の追撃を掛ける!!


「“荒野に落ちる影”」


 斧で切った空間が影に染まり、俺の斬撃を阻んだ!?


「もっとだ、コセ!!」

「望むところだ!!」


 再びの武具の応酬。


「“偉大なる黄金の翼”!!」


 黄金のパーツを背に二つ出現させ、そこからブラウン光の翼を顕現――黄金光振り撒く“飛翔”を、推力に極振りする!!


「なにッ!?」


 駆け引きもなにも無い武具のぶつかり合いに――“グレートグランドキャリバー”は折れ、“偉大なる英雄竜の猛撃剣”は、ヴァルカの斧同様に弾け飛んだ!


「――おおおおおおおおおおッッ!!」

「“殴打撃”!!」


 右腕の神代文字を活性化させ、ヴァルカの拳と殴り合う!!


「「ぐぅうッッ!!」」


「“大地讃頌”!!」


 ――跳躍されて、ほとんど当たる前に逃れられた!


 しかも、アイツの鎧にも文字が!!


「ハイパワースマッシュ!!」

「“剛力竜衝”!!」


 上空からの踵落としに対し、神代の力を流し込んだ左掌を翳し――弾き飛ばす!!


「おおああ!!」


 反動冷めやらぬ間に、尻尾を叩き付けられた!!


 “神代の鎧”――は、無粋だよなぁ!!


 それからはスキルも武具効果も使わず、神代の力を纏わせた拳と脚のみによる肉弾戦へッ!!


 互いに攻撃とガードの瞬間に文字の力を炸裂させて、攻撃力と防御力を高めている!!


 向こうは九文字、俺は十二文字。


 けれど、またしてもカムイと体格の差で押され気味に!!


 皮膚が裂け、骨が軋み、裂傷の熱が痛みと共に込み上げ、蓄積していく鈍痛が肉体の代弁者となり、打ち合うほどに声が大きくなっていく。


挿絵(By みてみん)


 なのに――今この時だけは、少しばかり心地良い!!


「お前に――トゥスカは渡さんッッ!!」



「――――ざけんな、クソ義兄ぇぇッッッ!!!」



 向こうの拳を、“軸足”からの回転で躱しながら懐に入り込み――全力の拳をその腹に叩き込んだ。


「ハアハア、ハアハア」

「……グ――」


 ヴァルカが倒れていき、俺の拳が抜けた場所から……血を派手に撒き散らし、舞台を真っ赤に染め……ヴァルカの身体は、噴き出した血溜まりと共に光へと変わっていった。


「……第六試合勝者、《龍意のケンシ》――コセ!!」


「ハアハア、ハアハア」


 勝った……のか。


「す、スゲー」

「まさしく、男同士の死闘」

「……格好いい」


 人々の声が、微かに……クリアに耳に届いてくる。


「これにて、此度の決闘はお開――」



『今から十分後、“突発クエスト・莫大な財宝と栄光を手に入れよ”を開始する!!』



「な……に?」


 まるで、静かな心地のいい熱気が冷め始めた所に……冷や水を浴びせられたような気分だ。



おまけ

挿絵(By みてみん)

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