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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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453.大地番の豊穣神

「三人とも、手を出すなよ」


「あれがレアモンスター……て、ユウダイ! まさか、一人で戦うつもりなの!?」


「これを使うからな」


 チョイスプレートを操作し、“無名のスキルカード”を使用。


 “無名のスキルカード”を使用した状態でモンスターを倒せば、そのモンスターがスキルカードを落とすタイプの場合、百パーセントの確率でカードが手に入る。


 しかもこのモンスターは、遭遇率が低いためか確実にスキルカードをドロップするタイプ。


 つまり、ドロップするスキルカードと“無名のスキルカード”で二枚手に入ることになる。


「……気を付けなさいよ」

「ああ」


 マリナの心配そうな声に、振り返らずに返事をした。


「“飛剣術”――パワーラッシュラッシャー!!」


 黄光を発している土の女神に、まずは小手調べと剣を六回振り――斬撃を六つ放つ!


「……そういう事も出来るのか」


 自身の身体から土の盾を作り出し、壊されながらも全て相殺して見せた女神。


 更に身体から、土の杭を連続で放ってきた!


「“神代の鎧”」


 “偉大なる英雄の天竜王鎧”に六文字刻み、発動した青白い半透明の甲冑で防ぎきる。


「“空衝”」


 更に空中を踏んでから鎧の効果を発動――空高くへと跳び上がった。



「――“神代の天竜”!!」



 青白い硝子のような光を翼竜状に全身に纏い――そのまま突っ込む!!


『ァアアアアア!!』


 激突と同時に、“鎮魂歌”を使う時のナターシャみたいな声で苦痛の悲鳴を上げる土の女神。


「“古代竜技”――エンシェントドラゴンブレス!!」


 至近距離から、神代の力を込めた古代竜の息吹を浴びせ、迫ってきた左腕ごと左半身を大きく吹き飛ばす。


『ォオアアアアアーー!!』


「“神代の剣”」


 “サムシンググレートソード”にも六文字刻み――青白き刃を六メートルもの長さへ!



「“竜剣術”――ドラゴンスラッシュ!!」



 上段からの振り下ろしにより、為す術なく斬り伏せられる土の女神。


『――ォォオオオオオオオオオオオ!!!』


 大きな絶叫と共に土の身体は崩れ去り、光へと変わっていった。


「……ちょっと疲れた」



○“無名のスキルカード”が“大地(つがい)の豊穣神スキルカード”に変化しました。

○“大地番の豊穣神のスキルカード”を手に入れました。




●●●



「“吹雪魔法”――ブリザードダウンバースト!!」


 頭上から凍圧を叩き付け、青白い山刀の化身、タシロカムイにダメージを与える!


「リューナ!!」


 チトセが、“倍増薬液ランチャー”を撃った!?


「ちょ!!」


 汚い赤黒い液体が、私の右腕に付着したぁ!?


 しかも、タシロカムイがもがき苦しむように荒れ狂い――溶けていくだとッ!!?


「おい、チトセ!! 私にも掛かったぞ!」

「大丈夫です。その液体は、神聖な物にしか効き目がありませんから」


 それだと、まるで私が穢い女みたいじゃないか!


「……薬液一発であっという間に。いったいなにを撃ったんだ、チトセ?」


「“不浄液”です。“聖水”の対置的な存在ですね」


「なんで、それがこのモンスターに効くんだ?」

「カムイという言葉は、アイヌ語で神を意味しますから。ひょっとしてと思ったんです」


 神と名の付く物に対して有効と。


「さすがアイヌの末裔。アイヌ語が分かるのか」

「ほんの少しだけですよ。それに、アイヌ語と言っても複数種類ありますから。その辺、私どころか両親すらほとんど分かっていないと思います」

「そうなのか」


 言語……か。統一した方が意思疎通は図りやすいけれど、文化が失われるというのも寂しい物だ。


 支配された国は支配した側の言語を教わる物だが……なんだかな。


「そう言えば、日本語って難しいのにアイヌ語なんかもあるんだな」


 アフリカとかなら部族ごとに言語が違うらしいから、複数の言語を知っているのが当たり前なんて地域もあるみたいだけれど。


 漢字とカタカナ、ひらがな、ローマ字、それに英語も分からないと、日本で生きていくのは不便。


 こんなに、複数の言語が当たり前のように混在した状態なのも珍しい。それも地続きの、大陸ではない島国なのに。


「やっぱり、日本て変な国だな」


 世界中の様々な文化を全て知っているわけじゃないが、知れば知るほど異質というか……異端だ。


「言語という文化を持ち込んだのは……宇宙人」

「なんの話ですか、リューナさん?」

「そういう都市伝説があるんだよ。まあ、どこまでが事実か分からないけれどな」


 でも日本で、漢字以前に使われていた文字が不自然に使われなくなったという痕跡はある。


 しかも、その辺りに関する記録は存在せず、日本最古の記録は最初から天皇を崇める内容となっている古事記。


 それ以前に日本に存在したとされる卑弥呼の記録があるのは、なぜか中国だけ。


「……歴史なんて、なんのあてにもならないな」


 真面目に勉強するだけアホらしい。


「二人とも、安全エリアが見えましたの」


 サカナに言われて橋の奥を見据えると、微かに終わりが見えた。



●●●



「“タシロカムイ”」


 “半ベルセルク”により獣人化した状態で、獣人専用のサブ職業を使用!


「“神代の霊剣”!!」


 青白き光炎を纏わせた“キヤイウメアイ”を振るい、無数の斬撃を飛ばし――硝子の欠片で出来た人間の上半身みたいなのに食らわせ続ける!


『キュァァーーー!!』

「“跳躍”! “飛行魔法”、フライ!!」


 硝子欠片で構成された腕を叩き付けてズタズタにしようとしてくる女だけれど、斜めに跳び上がって回避!


 そのまま飛行しながら、左手の“果物栽培のグローブ”の効果で――種から果物へと急成長させる!


「コイツも食らえ――“果物爆弾”!!」


 西瓜(スイカ)を投げ付け、顔に接触と同時に爆発――無数の硝子欠片を散らせた。


「ドドメよ――“光線収束”、“光線魔法”――アトミックレイ!!」


 “秘鏡に映りし鑑み”の効果で範囲を絞った分、威力を増強して放つ!


『キュァァァァーーー!!!


「……うそ」


 身体の中で乱反射させて、身体中の硝子から光を拡散してばら撒いた!?


 お陰で、奴の周りが広範囲に爆ぜ、派手に土煙が舞う!!


「光線系は効かないってわけ。だったら――オールセット2」


 “キヤイウメアイ”と“日食狼の山刀”の二刀流に切り替えた!


「“氷河魔法”――グレイシャ-バイパー!!」


 氷水の大蛇を生み出し、強襲させる!!

 

 アイツが氷水の蛇に気を取られているうちに、“キヤイウメアイ”から“日食狼の山刀”へと神代の力を流し込んでいく。



「“二刀流剣術”――クロススラッシャー!!」



 Lv55となったことで最大スキル所持数が増えたため、さっきカードで覚えさせたばかりのスキルの一つを使用!!


「くたばれ!!」


 硝子の化け物の身体を――四つに切り裂いた。


「ハアハア、や、やった」



○“無名のスキルカード”が“硝子画の偽神像のスキルカード”に変化しました。

○“硝子画の偽神像のスキルカード”を手に入れました。



「“無名のスキルカード”、無駄にせずに済んだわね」


 ユウダイの真似をして、私も一人で戦ってやった。


 ちょっと焦ったかな……タイマンで戦ったモンスターの中で、間違いなく一番強かったから。


「お疲れ様です、マリナ様」

「やったな」


 クオリアとユウダイが労ってくれる。


「おうよ」


「どうやら、このエリアも終わりのようですね」


 ナターシャの言葉に視線を向けると、すぐ先で草むらが消えていて、黄土色の岩場が続いており、その先に安全エリアとなっている一角も見えた。


「もう少しでボス戦だな」


 期待が滲み出たユウダイの声に……嫉妬心が、少なからず込み上げてきちゃったし。


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