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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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452.三体の化神

『グルルルル!!』


 バイオモンスターが出なくなったと思ったら、山岳地帯に進んだ途端に現れるようになったのは、ワーウルフやワータイガーなどの二足歩行型獣モンスター。


「数が多いな!」


 ここからはパーティーごとのため、以前と同様、俺はマリナ、クオリア、ナターシャの四人で攻略に挑んでいた。


「“二重魔法”、“瘴気魔法”――ミアズマダウンバースト!!」


 クオリアの黒き瘴気が、頭上から巨大な圧力となって墜ち――二、三十体のモンスターを蹴散らす。


「これ、ちょっとまずくない!?」


 岩が積み上げられたような坂だったのもあり、岩が弾け飛び――転げ落ちてくる!!


「飛べ!! “偉大なる黄金の翼”!! ――“飛翔”!!」


 ナターシャを回収し、翼を羽ばたかせるのに手こずっていたクオリアの手を掴んで飛び上がる!


「ユウダイ……なんで私は助けないのよ」

「分かってるくせに、我が儘言うんじゃありません」


 目が見えないクオリアは咄嗟に動けないし、ナターシャはそもそも飛行手段を持っていないのだから、優先順位は自然とマリナが下になってしまう。


「すみません、私のせいで」


 この事態を引き起こしたクオリアが、落ち込んでいる。


「結果オーライだ。敵を全滅させられたしな」


 獣型モンスターは飛行できないため、頭上からの攻撃に加え、足場が広範囲に渡って崩れたことで逃れられず、全て倒されていた。


 そのまま岩場の上部まで飛行し、二人を降ろす。


「クオリア」


 敵が居ないのを確認したのち、クオリアを正面から優しく抱きしめる。


「嫌いになったり……してない?」

「これくらいで、嫌いになんてなるもんか」


 目の見えないクオリアは気配に敏感だけれど、視覚的情報はほとんど無い。


 むしろ、配慮が足りなかったのは俺の方だ。


 もっとちゃんと、自分と他人の違いを理解して歩み寄らなくちゃな。


 クオリアから歩み寄るのは、難しいわけだし。


「……ありがとう、コセ様」

「おう」


 様付けは変わらないか。


「……良いな」


 そんな言葉が聞こえてきたからマリナかと思えば、声のした方に居たのは……ナターシャ?

「うん?」


 今の、ナターシャが言ったのか?


「ほら、さっさと行くわよ」


 盛り上がっていた木の幹から、小槌でアイテムを回収して戻ってくるマリナ。


「な、なによ……」

「別に」


 無言でマリナの頭を撫でたら、可愛い反応を返してくれた。


「別れ道です」


 少し進むと安全エリアがあり、そこでチョイスプレートが表示された。



○上:神の威を宿せし物の領域

 下:背後から佇む者達の住み家



 下へと向かう坂道と、上へと続く石の橋。


「で、どっちに向かうの?」

「俺達は下だ」


 昨日の夜の時点で、俺とリューナで決めていた。



●●●



 上の橋の方を選んで暫くすると、不穏な気配が近付いてくる。


「空が……」


 実験都市を覆っていた、粘液のような色に変わっていく!


「カパッチリカムイだ」


 エルザが教えてくれたのは、紫の風で構成された鷲のような大鳥。


「いきなりレアなのが来たか」


 運が良い。


「ニタイカムイとミケカムイも出て来ましたの」


 橋の前から、植物で出来た緑と、雷光で出来た黄色い四足獣がやって来る。


「上は私が受け持つ――“空遊滑脱”!」


 空中を蹴って、紫の大鷲の前へ。


「早い!」


 前を塞ぐなりこちらに狙いを定め、機敏な動きで私の周りをうろちょろするカパッチリカムイ。


 ――風の鉤爪で掴みかかって来たため、六文字刻んだ“終わらぬ苦悩を噛み締めて”で切り払う!


「“瞬足”――“業王脚”!!」


 その首に横蹴りを見舞い、石橋の上に叩き落とした!


「“飛剣・靈光”!!」


 青白い斬撃を飛ばし、追撃を掛ける!


「氷結の刀剣」


 指輪武器を、左腕側に顕現!



「”吹雪剣術”――ブリザードブレイク!!」



 動きだそうとしたカパッチリカムイに、文字で強化した吹雪の大刀を振り下ろし――トドメを刺した。



○○○



 大自然から切り取られたような獣二体が、車が数台すれ違えそうなほど広い橋の上を駆け、こっちに突っ込んでくる。


「まさか、三体同時に出て来るパターンを引き当てるとわとは」

「コイツら、一体でも厄介なのに」

「二人とも、下がって!」


 エルザとネレイスさんが私の前から居なくなった瞬間、オールセット2で装備したバックパックから伸びる左右のガトリング――“業魔悪鬼共を弾劾し尽くせ”に、九文字刻んで雪崩撃つ!!


「――オララララララララララララララララララララララ!!!」


 植物と雷撃による反撃ごと捻じ伏せ――その名のごとく殲滅し尽くしてやったぜ!!


「ヒャーハーー!!」


 気んもちぃいいいーーッ!!!


 毒々しく変貌していた空が、元の青空に戻っていく。


「コセに受け止めて貰ったからか、色々素直になれるようになったみたいだな、チトセ」


 傍に降りてきたエリューナさんに、図星を突かれる!!?


「へと……バレてました?」

「私みたいに隠す必要も無いんだ。別になんの問題も無いだろう」

「それは……そうですけれど……嫉妬とかしないんですか?」

「不思議とな。まあ、私は気が多い(たち)だし」


 そう言えばエリューナさんて、同性も行ける人だった。


「チトセさえよければ、コセが他の女の相手で忙しいときに私が相手をしてやっても良いぞ?」

「え、遠慮しておきます」


 私に、同性愛の毛は無い……ちょっとは興味あるけれど。


「フフ……そうだ、チトセも、これからは私の事をリューナと呼べ」


「愛称で呼んで良いんですか?」


「ああ、もう同じ男の女だしな」


 同じ人を好きになって、結ばれた者同士……なのに、不思議と心地良い。


「それじゃあリューナさん、末永くお願いしますね」


「なんだか、私達が結婚したみたいだな」


 ちょっとだけ、そんな感じもするかも。



○“カパッチリカムイ”を手に入れました。

○“ニタイカムイ”を手に入れました。

○”ミケカムイ”を手に入れました。




●●●



「“飛剣・靈光”!!」


 最後の狼モンスターを倒してくれるマリナ。


「お疲れ」

「なんか、岩場よりも楽な気がするんだけれど……気のせいじゃないわよね?」

「そりゃな」


 ワーウルフなどの人獣タイプが出て来ないうえ、一度に出て来る数も少ないのだから当然だ。


「ただ、こっちのルートは強力なモンスターが最低一回は出現するようになっている。どのタイプが何回出現するかは、完全に運らしいけれど」


「その言い方だと、まるで出現して欲しいかのように聞こえるんだけれど?」

「まあな」


 そりゃ、強力なスキルが手に入るって知ってるわけだし。


 しかも、Lv58で解禁されたスキル変換機能の対象になるらしいから、同じタイプに遭遇しても無駄にならない。


「皆様、地面からなにかが生えてきます!」


 クオリアの警戒する先、傾斜の草原の一角から土が盛り上がり――あっという間に、巨大な女性の上半身のような姿へと変わった!!


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