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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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448.倍増薬液ランチャー

「“時空魔法”――デリート!!」


 マリナが生み出した灰白色の消滅球により、ゴリラのような大型バイオモンスターが消滅する。


「お疲れ」

「おう」


 手を叩き合う俺達。


「ここって、本当にバイオモンスターしか出ないのね」

「半ばまで行けば、そうでもなくなるはずだけれど」


 天空遺跡に出たバイオモンスターよりも、明らかに耐久力が高い個体が多い。


 俺達は対処法が頭に入っているから問題なく進めているけれど、人数が少なかったり、単一の属性に特化している人間は手こずるだろうな。


「匂いがだいぶ薄れてきていますので、そろそろかと」


 近くにやって来たクオリアの言葉。


「なら、そろそろリューナを休められそうだな」


 段々と地形の起伏が激しくなってきたのもあり、リューナの疲れは人一倍。


「わ、私は全然問題ないぞ」

「俺達よりは消耗してるだろう?」


 強がって無理しがちなのは知ってるし。


 チトセさんは重い荷物を背負っているけれど、リューナみたいに前に出て積極的に戦っているわけじゃないしな。


 そのチトセさんは、“死活液”を使ってどんどん宝箱ならぬアタッシュケースを回収していた。


「向こうに広い場所がありました」


 先行していたネレイスが、空を泳ぎながら戻って来る。


「その先は粘液が少なそうだったし、そろそろバイオモンスターともお別れのようですの」


「早く、この悪臭から逃れたいです」


 視力以外の五感が鋭いクオリアには、このくらいの臭いでもキツいらしい。


 まあ、俺もだけれど。


「下水道程じゃないから、クリアエアを使うほどじゃないんだけれどね。MPが勿体ないし」


 マリナもキツかったらしい。


「地味にイライラしてくるな、このなにかが腐ったような悪臭は。とっととこのエリアを抜けてしまおう」


 チトセさんのアタッシュケースの回収も終わったようだし、リューナの提案通りに先へと進むことに。


 五分も歩かないうちに、ネレイスが言っていたであろう広い場所に出る。


 円形闘技場のように粘液による囲いが出来ていて、ちょうど反対側にしか出口が無いようだ。


「ユウダイ様、退路を断たれました」

「みたいだな」


 ナターシャの言うとおり、俺達の通ってきた道が粘液で防がれる。


 それは、向こう側にある出口も同じらしい。


「上から来るぞ!」


 この広場の中心に落ちてきたのは、毒々しい色の巨大スライム。


「魔の海域で戦った奴に似ているな」


 形を変え、人型の巨人となるスライムのようなバイオモンスター。


「核を潰さないといけないタイプか」


 バイオモンスターの耐性を上げる特殊能力と組み合わさると、かなり面倒な敵かもしれない。


 こうなったら、神代文字を全快まで刻んで短期決戦に持ち込むか。


「“咒血魔法”――カースブラッドダウン!!」


 エルザの魔法が発動し、赤黒い重圧が降り注いでバイオモンスターを押さえ付ける!


「どいてください、皆さん!」


 チトセさんが構えているのは、数時間前に手に入れた“倍増薬液ランチャー”!?


「ここで試し撃ちをするつもりなのか?」


 失敗したときのために、すぐ動けるようにしておこう。


「当たれ!!」


 ポン! という音と共に放たれた薬液弾が、押さえ付けられていたバイオスライムに直撃――広範囲に飛び散った“死活液”を浴びて……見る見る小さくなっていく。


「お任せを!」


 毒々しい粘液が綺麗に消えていく中、最後に残った黒紫の核を――ナターシャの“ロイヤルロードランス”が貫いた。


「……なんか、いっぱい出て来た」


 アタッシュケースが、ナターシャの周りにいきなり六つも現れて落下。



○“死活液素材セット”×9を手に入れました。

○”豪奢な剣”を手に入れました。

○“光学銃のスキルカード”を手に入れました。

○“生命白銀狼の指輪”を手に入れました。

○“振動切断剣のスキルカード”を手に入れました。

○“薬液王の指輪”を手に入れました。



 薬液王ってなんだよ。



●●●



『ジュリー、前から来るあれはなんだ?』


 ルイーサからの問い。


「あれはモンスターじゃない……プレーヤーだ」


 紫のタイヤ付き大型三輪バイクに乗った男ががに股座りしながら、ストリームバイクやレールバイク数台と共に正面から突っ込んで来る!


 少なくとも、私はあんなバイクは知らない。


 そもそもこのダンジョン・ザ・チョイスに、タイヤ付きの指輪バイクなんて無かったはずなのに!


『良いバイクを持ってるな、嬢ちゃん達』


 バイクの向きを変えて前を塞いだのち、通信機から声を掛けてくる男達。


 こっちの周波数を知ってたって事は、私達の通信機越しの会話は全て聞かれていた可能性がある。


『この先のパーキングエリアで、ちょっとお茶しないかい? 一緒に、バイクについて語り明かそうぜ!』

「私達、別にバイク好きってわけじゃないので」


『へ!?』


 今の驚いたような声、ヒビキ?


『つまり、俺達全員に喧嘩を売るって事で良いんだよな?』


 完全に脅しに来てる。


『ジュリー、戦うならパーキングエリアの方が有利なんじゃないか?』


 ルイーサの指摘は一理ある。


 私達は、おそらく彼等よりも走行しながらの戦闘に慣れていないだろうから――けれど。


「そっちで仲間が待ち伏せしている可能性もある。ここで始末した方が安全な可能性が高い」


『なかなか頭が回るようだな。だが、お前らが油断ならないってのは分かってるんだよ』


『みんな、後ろから新手だ!』


 メグミの言葉にサイドミラーを確認すると――ゴルドライトニングとシルバーストームを駆る者を先頭に、複数のバイクを引き連れた集団が!


「……パーキングエリアにいた奴等か」


 昼食の時から目を付けられていたのかもしれない。


『どうする? 何人かは助かるかもしれないが、半数は確実に死ぬだろうな~』



「《龍意のケンシ》は――脅しには屈しない」



 卑怯者の言いなりになったら、一生隷属させられる。


 両親の死後、ダンジョン・ザ・チョイスに関する資料は全て司法機関の人間に持っていかれた。


 自分ではどうにもならない、権力という名の暴力。


「私は、誰の言いなりにもならない!!」


『私も同感だな』

『私もだ』

『ジュリー様の選択に従います』

『脅してきた以上、殺されても文句は言えないでしょう』


 ルイーサ、メグミ、タマ、ヒビキが私の考えに乗ってくれる。


「ありがとう、みんな」


『野郎共、残念ながら交渉決裂だ!! 取っ捕まえた奴は好きにして良いぞ! ソイツが持っているアイテムもな!!』


『『『ヤェーーー!!!』』』


 やっぱり、最初からそういう狙いか。


『ただし、金髪は俺の物だからな!』


 下郎が。


「私を怒らせるとどうなるか――嫌というほど教えてやる」


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