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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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445.実験都市

「……随分不気味というか……気味の悪い所だな」


 ボス戦を終えたリューナ達は、祭壇上から見える目の前の景色に絶句していた。


「実験都市って言うから、天空遺跡の内部みたいな近未来っぽい場所を想像していましたけれど……なんですか、これ?」


 チトセさんが引いている。


「さあ」


 近未来っぽい部分はあるけれど、都市のほとんどが黒っぽい青や紫、翠のブヨブヨに覆われていて……今までで一番不気味というか、得体のしれない場所だ。


「ここの隠れNPCがミュータントな理由が、なんとなく解った」


「そのミュータントって、仲間には出来ないんだよね?」


 マリナの質問。


「吸血皇の城のルートで、ゲリュオーンを倒した場合に、本来は契約のためのアイテムが手に入るはずだったらしいからな」


 この前の大規模突発クエストの報酬により、今後、隠れNPCと契約できる可能性はかなり低くなった。


 メルシュ達も、二十一から三十までの隠れNPCのほとんどが契約されてしまっているため、チケットを使うのを渋っている状況だしな。


 俺とリューナが落とされた二十八ステージの隠れNPC、チェスのクイーンは強力らしいけれど、既に契約されていたらしい。


「さすがにもう暗いな。麓に下りたら、今日は“吸血皇の城”に帰ろうか」


「だな。まだこのステージの情報も無いし」


 エルザの提案に従い、俺達は今日の冒険を終えた。



●●●



「どうだ、モモカ! 私のシルバーストームは格好いいだろう!」

「格好いい!!」


挿絵(By みてみん)


 早朝の出発直前、昨日手に入れたバイクを見せびらかしているルイーサ。


 私達が購入したバイクは、オプション装備が二つ取り付けられる上に固定のオプションが付いているぶん大型で、車体がレールバイクの二倍くらいはある。


「モモカ、私のゴルドライトニングの方が良くないかな?」


挿絵(By みてみん)


「色はこっちの方が好き!」


 よし!


 まあ、色はお金を払えば変えられるんだけれど。


 メルシュ達が購入した車とキャンピングトレーラーも、コセのイメージカラーであるブラウンを基調にゴールドの二色で塗ってあるし。


 トレーラーの方は、結局六人乗りを購入したらしい。


「バニラは、向こうの方が気になっているみたいだな」


挿絵(By みてみん)


 フェルナンダの指し示した先、ヒビキが持っていた真紅のバイク、フレイムマグナムをジーッと見ているバニラ。


 凜とした大和撫子という感じの彼女がSランクの高額バイクを持っていたのは、なんだか意外だった。


 メグミは深緑色のディフェンドガードを、タマは群青色のスカイジェットを購入。専用機にしている。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 私とルイーサがオプションで“ウェポンエフェクター”を選んだのに対し、メグミは“ウィングサイドカー”、タマは“クラッシュアタック”にしたようだ。


「みんな、そろそろ乗り込んで。出発するよ」


「タマ、よろしくね」

「よ、よろしく頼む!」


 タマのスカイジェットには最初から両端に座席があり、その座席は折り畳まれた翼と一体になっている。


 その座席に乗り込むのは、スゥーシャとレリーフェさん……レリーフェさん、凄い緊張しているな。


「むー、私も自分で運転したいのにー! メグミちゃん、あとで代わってね!」

「お願いですから、こればっかりは諦めてください、サトミ様……本当にお願いします」


 “ウィングサイドカー”により同じ翼が取り付けられたメグミの“ディフェンドガード”には、サトミとリンピョンが乗り込むらしい。


 ……昨日のレールバイクでの練習、サトミは散々だったからな。


 リンピョンが何度轢き殺されそうになった事か。


 ヒビキのサイドカーには、サンヤとカナが乗り込む。


 昨日ルイーサ達が始末した男達の中にはバイク持ちがいたらしく、ユリカとヨシノ、ナノカとクマムの組み合わせでレールバイクに。


 ストリームバイクにはユイとシレイアが。


 車の運転はフェルナンダが担当し、その他は車の後部座席かキャンピングトレーラーへと乗り込んだ。


 私も、別売りだった未来っぽいスタイリッシュなヘルメットを装着し、バイクに跨がった。


 このヘルメットは、指輪でバイクを召喚した時に自動でセットされるようにもできる。


『それじゃあヒビキ、先頭をお願い』


 車の助手席に座るメルシュの声が、ゴルドライトニングのスピーカー、ハンドル真ん中の下部から聞こえてくる。


 それぞれの乗り物には通信機があり、周波数を合わせることで会話する事が可能。


『了解。最初は慣れるためにも、時速40キロ前後で走行します』


 全員に対して、そう告げるヒビキ。


 ヒビキのフレイムマグナムを先頭に、私達は高速道路のようなストリートブリッジへと、青空のもと繰り出した。



●●●



「さてと」


 “実験都市”に辿り着いてから一晩、朝食後に全員で外へと繰り出す俺達。


『ギュへへ』

『ギュバーー』


 さっそく、天空遺跡で戦ったようなバイオモンスターが出て来る。


「本当に、当たり前のようにモンスターが出て来るんだ」


 マリナが“アイスコフィン”を、ナターシャが“ロイヤルロードキャリバー”を構えて、あっという間に二体のバイオモンスターを片付けてしまう。


「出て来るのは外だけで、建物の中にまでは入ってこないらしい」


 それにしても、バイオモンスターから身を守るためなのか、建物と建物の間を、人が通れそうな程巨大なパイプのような物が繋いでいて、入り口がまったく見当たらない。


「コセ、向こうに入り口らしき物があったぞ」


 リューナとネレイスが、空から戻ってくる。


「こっちにもありました」


 別方向を見に行っていた、チトセさんとエルザも戻って来た。


「入り口が二つか。どちらかがバイオモンスターの巣窟で、どちらかがNPCの居住区のはず」


 ぶっちゃけ、バイオモンスターの巣窟には興味が無い。


 隠れNPC、ミュータントを手に入れられる場所という以外では、大した旨味が無いらしいから。


 それに、次のステージに向かう道中で、バイオモンスターとは大量に戦うことになるみたいだし。


 メルシュから、もう少しちゃんと聞いておけば良かったな。


 朝早く出発すると聞いて、無意識に手短にすませようとしてしまっていたかも。


「おそらく、私達が見付けた方がバイオモンスターの巣だろう。中からそれっぽい気配がしたし、このヘドロみたいな物も一際酷かった」


 エルザからの情報なら、信憑性が高いか。


「なら、私とサカナ……ネレイスはバイオモンスターの方に行こう」


「マスター。今の、ちゃんと聞いてましたわよ?」


挿絵(By みてみん)


「……すまん」


 ネレイス……心底、サカナって名前が嫌なんだな。


「わざわざ行く必要は無いぞ?」


 疲労されて、ダンジョンの攻略が遅れる方が俺としては困るし。


「ノゾミからの情報でな。もしかしたら、ユニークスキルが手に入るかもしれないんだ」


「ユニークか」


 本当に手に入るなら、労力を割く価値はあるか。


 ただ、居住区の方でするべき事を知っているのは、俺とナターシャとネレイスだけ。


「ナターシャ、リューナと一緒に行って来れ」

「へ!?」


 なんでそんなに驚いているんだ?


「チトセはコセと行け。エルザは借りていくぞ」


 どうやら、リューナも俺の意図を察したらしい。


 疲れ知らずなNPCにリューナのサポートをさせて、この後の攻略の妨げになりづらいようにという意図を。


「それじゃあ、気を付けてな」

「そっちこそ。あとで、この場所で合流しよう」


 こうして、俺達は二手に別れた。


おまけ “ガードアーム”装着バージョン

挿絵(By みてみん)


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