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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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435.素直な我が儘を

 貴族服のように変わったエルザの紅の外套に身を預け、気を失ってしまった様子のチトセさん。


「チトセさん……二重人格者だったのか」


 まあ、そんな大袈裟な程じゃないだろうけど、銃を持つとはっちゃけるタイプだったらしい。



○吸血皇を真の意味で討伐しましたので、”ヴラド・キャリバー”を差し上げます。



 そんな表示がチトセさんの前に現れて消えたのち――城が揺れ出す!


「まずい、脱出しないと」


 この激しい揺れと刻まれる罅割れ、今にも倒壊しそうだ!


「皆様、外まで案内いたしますので、私の近くへ」


 いつの間にか部屋の入り口側に立っていたのは……城のエントランス前にいた老人執事。


 迷っている暇は無いか。


「みんな、急いで集まれ!」


 ナターシャが気を失っているマリナを、エルザがチトセさんを抱っこして執事の周りへ。


「信じて良いんだな?」


 エルザが尋ねる。


「もちろんです、お嬢様。では、参りますよ」


 ――気付いたときには、城の門扉の前に居る俺達。


 空はまだ暗い。


 さっきまでいた場所が明るかったからすっかり忘れていたけれど、まだ日を跨いだかどうかか。


「これで、この街の人々の脅威は去ったか」


 おもむろに語り出すエルザ。


「いいえ、我が主はいずれ蘇るでしょう。人々が悪意を抱き、その断罪を望むという負の連鎖が断ち切られない限り……何度でも」


 それだけ言い残し、突然消える老人。


「終わったんだよな?」


 くたびれていそうなリューナが、確認してくる。


「どうなんだ、エルザ?」


「ああ、終わった。これで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 つまり、エルザが居なくなったら、再び吸血皇とこのイベントは始まると。


「取り敢えず宿に戻ろう。早く、マスターとマリナを休ませて差し上げないと」


 以前よりも、雰囲気が落ち着いたような気がするエルザ。


「ああ、私も早く休みたい」

「私もです」


 リューナだけでなく、クオリアもクタクタらしい。


「私が運ぼう。コセ、マスターを頼む」


 エルザに、チトセさんを押し付けられてお姫様抱っこすることに!?


「おい、なにを……」


「――“咒血竜化”」


 エルザの姿が、白い装甲を纏う紅のドラゴンに!?


挿絵(By みてみん)


 全長、十メートルくらいはありそうだ。


『乗れ。すぐに、麓の宿まで届けてやる』


「パワーアップしたさいに手に入れた、新しい能力か」


 今のエルザは、エルザを取り込んだときの吸血皇と同等の能力を有しているのかもしれない。



            ★



 戸惑いつつもエルザの背に乗った俺達は、宿の前に五分ほどで到着。


「おお、アンタら! ありがとう、ありがとう!」


 宿に入ると、区長とやらが駆け寄って来た。


「吸血皇を倒したアンタには、これをやろう」


 まだ気を失ったままのチトセさんに、チョイスプレートが表示される。



○区長より、吸血皇を完全に滅ぼした報酬として“ヴァンパイアキラー”を受け取りました。



「いや、倒しに行く前にコレを渡せよ!」


 名前からして、絶対ヴァンパイアに有効な武器だろ! 順番がおかしすぎる!



○区長より、吸血皇を滅ぼした特別な報酬として、依頼を受けた者全員に”オールランクアップジュエル”×3が与えられます。



 ヴァンピールであるエルザが居なければ、報酬はこっちのみだったんだろうな。


「それと、これはほんの気持ちだ」



○吸血皇と戦った者全員に、50000(五万)Gが支払われます。



「……少なくね? まあ、貴重なランクアップジュエルも貰ったけれど」


「おお……アンタら、供物にされた娘達の遺骨を……ありがとう。全て、こちらで引き取らせて貰うよ!」


 リューナのパーティーメンバーに対して言っているようだ。



○“生贄の遺骨”、一つにつき100000(十万)Gを得ました。



 リューナ達のルートで回収できたアイテムか。



○これにて、特殊クエスト・吸血皇を滅ぼせはクリアとなります。



「宿に帰るまでがクエストってか」


「……お母さん」


 俺の腕の中で眠っていたチトセさんが、目を覚ましたようだ。


挿絵(By みてみん)


「…………なんでコセさんが」


「立てそうですか?」

「――キャーーー!!」


 いきなり……ビンタされたんだけれど。



●●●

            


「…………もう」


 ベッドのなか、布団を被った状態で一人静かに悶々としていた。


 身体は疲れてるのに、お姫様抱っこされてた事とか、私を守ってくれたときの背中とか、エルザと契約する直前にした時の会話とか、これまでのコセ君とのやり取りを、ローテーションで何十周も思い出してしまって……眠れない。


「……いま」


 誰かが部屋から出ていった?



●●●



 深夜二時頃、汗を流してから軽く果物を摘まんでいた。


 同じ部屋のリューナはよっぽど疲れていたらしく、シャワーを浴びたのち早々に眠りについている。


 マリナは、あれから一度も目を覚ましてはいない。


 俺と同種の力を使用したのなら、朝になっても目覚めないかもしれないな。


「俺も、そろそろ寝るか」

「ちょっと良いですか?」


 いつの間にか、背後にクオリアが!?


「どうやって……そう言えば」


 この部屋は元々俺のパーティー、マリナ、ナターシャ、クオリアで取っているため、彼女が鍵を持っているのは当然だった。


 ただ、俺とマリナ、リューナはそういう関係だから、自然とそれ以外のメンバーは別の部屋で寝泊まりする雰囲気が出来上がっていたのだ。


 ナターシャですら、チトセさん達の部屋に泊まって貰っている。


「ど、どうしてここに?」

「もっと……素直になれと言われましたので」


 ゲリュオーンを倒したときの話しか。


「素直って……」


 クオリアが、黄金の三つ目柄の黒バンダナを目から外し、綺麗な顔を顕わに!


挿絵(By みてみん)


「……綺麗だ」

「なら……」


 深いスリット入りの黒ドレス、”鳥人の魔性ドレス”を脱いで、パサリと床に置く……。


「どういうつもりなんだ?」

「搔き回されるのは、もうたくさんなのです」


 二人が奥で寝ている場所で、迫ってくるクオリア。



「私を心から愛せるって――身体で教えて」



 まるで、挑発するような声音。


 おのれを卑下しているはずのクオリアのこの行動は……自分の身体には、それなりの自信があるって事か。


 たぶんクオリアは、どれだけ言葉を積まれても、他人の愛情を信用できない。


「この先に進んだら、一生俺の所有物にするからな」

「ずっと、そうしても良いと言っていたはずですが?」


 左手で肩から首筋を撫で上げ、彼女の吐息が吐き終わるのを見計らって――唇を重ねた。


「……甘い」

「備え付けの果物を食べてたからかな」


 その果物のせいか、この宿は結構値段が高め。


「……もっと欲しい」


 クオリアの、初めての我が儘らしい我が儘。


 再び唇を重ねながら背中と太股を撫でていき、これまでにたびたび目撃していた下着を……ゆっくりと脱がせていく。


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