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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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431.吸血皇の間

 休憩を終えて遺跡内部を進んでいると、身のこなしの良い短剣二刀流のスケルトンが集団で襲って来た!


「オールセット2」


 黒のシャシュカと青のシャシュカを振るい、なんとか隙を作って――骨の腕を切り裂く!


「“業王脚”!!」


 アサシンスケルトンを蹴り飛ばし、複数体にぶつけて仕留める!


「“風車魔法”――ウィンドミルトルネード!!」

「邪魔なんだよ!!」


 鉄刃入りの竜巻と大出力で撃ち出した光線銃により、最後のアサシンスケルトンを消し去るサカナとエルザ。


「一体一体が強い上に、数もそれなりに多かったのですの」


「だが、ようやくあの男の元に!」


 エルザの暴走、ますます酷くなっているな。


「チトセ、怪我は?」


 さっきのスケルトンの奇襲により、チトセは肩を負傷していた。


「もう治しました。問題ありません」


「さっさと行くぞ!」


 エルザが、マスターであるチトセを気遣う様子がない。この特殊クエストのせいなんだろうが……本当に厄介だな。


「全員消耗している。少し休むぞ、エルザ!」

「そんな暇は無い! 一刻も早く、あのクソ男を殺さなければ!!」


 勝手に紅い入り口に入ってしまうエルザ!?


 これじゃ、本当に暴走しているのと同じじゃないか!


「行きましょう、エリューナさん」

「仕方ない!」


 全員が潜った先に広がっていたのは――豪奢にして異質なほど静謐な空間!


 バカみたいに巨大な扉とどこまでも続く通路があり、扉の前にはコセ達が既に到着していた。


「先に来ていたか」

「そっちは……かなりボロボロみたいだな」

「まあな」


 色々なアイテムが手に入った分、こちらの方が難易度が高かったのかもしれない。


「すぐに治療する! エリアヒール!」


 “最上級回復魔法”により、この場の全員を癒してくれるマリナ。


「こっちはチトセの消耗が激しい。MPがほとんど残っていないんだ。そっちは?」

「ユウダイ様が大抵の敵を引き受けましたので、クオリアさんがMPを半分ほど消耗しているくらいかと」


 “世間師”のサブ職業のお陰でコセのTP・MPは激増しているはずだから、自分から率先して戦ってたってわけか。


「体力は?」


「強敵はクオリアがあっという間に片付けてくれたから、問題ない」


 人数は同じだったのに、偉い違いだな。


「ねー、エルザがドアを開けてしまったわよ?」


「なに!?」


 サカナの言うとおり、勝手にドアを開けて中へと進んでいってしまうエルザ!


「どうしちゃったの、エルザ?」

「どうやら暴走しているらしい!」


 まだ日も跨いでいないって言うのに、ろくに休憩させてくれないとは。


「仕方ない。チトセさんとリューナ、クオリアは取り敢えず様子見だ。俺とマリナが前に出る。ナターシャはリューナ達の護衛を」

「畏まりました」


 数時間ぶりに合流したってだけなのに、コセと居ると安心する。


「来たぞ、クソ吸血鬼!!」


 エルザが、玉座の前で叫ぶ。


「ほーう? よく来たな、我が娘よ」


 玉座から立ち上がり、黒い貴族服を着た長い白髪の初老が……階段を下りてくる。


「あれが吸血皇か」


「今宵の客人は八人か。ちと少ないが、誰も脱落することなく辿り着いたのは重畳。愛しの娘も居ることだし、いつもよりも賑やかなパーティーと行こうか」


 吸血皇が指を鳴らした途端、部屋の壁に並んでいた幾つものステンドグラスが割れ――そこから七体のモンスターが入ってきた!!


「ワイルドワーウルフ、スケルトンハイウォリア、パラディンリザードマン、グレートオーガ、デュラハン、黒鬼、マンティコアです!」


 スケルトンハイウォリアと思われる巨漢の武装骸骨と狼男が、近場の私に狙いを定めてきた!!


「クソ!」


 骸骨の鉄球の一撃と、敏捷性の高い狼男のコンビネーションにより、防戦で手一杯に!!


 コセは黒と灰色の鬼二体と、マリナは白鎧のリザードマンと鉄の馬を駆る首無し騎士と、ナターシャは蠍の尻尾を持つ茶褐色の獅子と対峙していた。


 そしてエルザは……父親という設定の吸血皇と死闘を始めてしまう。



●●●



「相変わらず硬いな、コイツ!」


 始まりの村で戦った黒鬼の身体に“サムシンググレートソード”で斬り付けるも、掠り傷程度で出血すらさせられない。


 武術スキルで攻撃しようにも、グレートオーガによる大剣のアシストによって、チャンスを潰されている。


 どこか“グレートソード”に似た剣を使っているし、あの時のことを……たった一人で攻略していた頃を思い出すな。


『ガオオオオ!!』


 右腕に装備した、盾の両端に円柱状のパーツが付いた妙な武器を振るい――地面に爆発を発生させてくる黒鬼!


 当時強敵だったとはいえこの強さ……序盤で戦った頃よりも明らかに強化されているな。


 ――神代文字を六文字刻み、まずはグレートオーガを斬りに行く!!


『グルオオオ!!』


 ブラウンの剣から黄土色の光が生じ、グレートオーガの身体を覆って――俺の剣を弾いた!?


「コイツら」


 攻撃を防ぐ剣に、只でさえ硬い黒鬼は盾……俺を倒すよりも、二体が倒されないように設定されたかのようだ。



●●●



「“神代の霊剣”」


 “キヤイウメアイ”に青の炎を纏わせ、鈍色の首無し騎兵に焰の斬撃を連続で放つ!


「くそ!」


 高速で駆けて避けられるうえ、白い鎧のリザードマンが私の攻撃の隙を突こうとしてくる!


 しかも、リザードマンの対応をしていると、今度はデュラハンがランスで仕掛けてくるし!


「ああ、ウザったい!」


 乱戦に持ち込まれてしまった以上、チトセさん達の援護は期待できない。


 コイツらが、私からつかず離れずで攻撃してくるのも厄介。


 ユウダイは、私以上に厄介そうな奴の相手をしているし。


「自分でどうにかするしかないか」


 アイツ、私が助けて欲しいときほど助けてくれない!



◇◇◇



『ヴァンピールと契約したのが運の尽きです、《龍意のケンシ》。いや、コセくん』


 本来は登場しない強力なモンスターは、ヴァンピールを連れて来た場合の高難易度モード。


 道中も、ヴァンピール連れのパーティーの難易度は地味に高めになっていた。


『装備武器の方は私が選ばせて貰った。どれもSかAをね』


 ここを乗り切られたら大幅なパワーアップをさせかねないが、誰か一人でも殺せれば、簡易アセンションさせてしまったバカのように罰せられる事はないはず!


『頼むぞ、モンスター共。これは賭けなんだ!』


 厄介なスターシードを始末できるか、逆に力を与えてしまうのかのな!


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