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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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429.神殿の番犬

「ようやく終点か」


 天空廻廊を抜けた先は崖の上で、その上に建っていたのは……白灰色の石のみで出来た神殿?


「嫌な気配がするな」


 エルザがなにか言っているが、私は特に気配などは感じない……厨二病か?


「たくさん出て来たなぁ……出て来ましたね」


 “妖魔悪鬼への憤慨”は既に装備から外しているのに、口調がオラオラ系だったチトセ……やっぱりあっちが本性なんじゃないのか、コイツ。


「さてと」


 現れたクレインハンド、吸血バット、ゾンビ、スケルトン、トレントが一斉に襲い掛かってくる。


「装備セット2」


 チトセが武装を変え、瓶を二つ取り付けられる“ダブルバレル薬液銃”を装備。


「”分離”」


 二つの砲身がくっついた薬液銃を二丁拳銃にし、右の銃でゾンビやスケルトンを、左の銃でトレントを攻撃して枯らしていく。


 第三十ステージ、調合師の墓場で私が拾ったAランク武器。


「右が”聖水”で、左が“除草液”みたいですのね」


 ネレイスの言うとおりなら、最初から使う機会が少ない薬液をセットしていたってことになる。


 のほほんとしているようで、結構抜け目ないよな、チトセは。


「アンデッドと植物系以外はお願い!」

「任せろ! “吹雪魔法”――ブリザードトルネード!!」


 数は多いが、出て来たのは雑魚ばかり。


「マスター、コイツらきりが無いみたいですの!」


「まさか、無限湧きって奴か!」


 雑魚ばかりなら、ネレイスの言う通りの可能性が高い!


「あの遺跡に逃げ込もう! 先に進めば、途中から追ってこなくなるはずだ!」


 エルザが真っ先に駆け出す。


「チトセ、エルザに続け! 後ろは私とサカナで対処する!」


 天空廻廊ではチトセに頼ったからな。ここは私が受け持つ番だ!


「分かりました!」


 四人で敵を蹴散らしながら進んでいると、遺跡前まで辿り着いたエルザの前に――三頭と二頭の黒い巨犬が立ち塞がった!


「オルトロスとケルベロスか――武器交換、“雷鳴の天罰槍”!」


 エルザが黒のジャベリンを、黄雷が凝縮されたような大型の投槍に換えた。



「――“天罰の雷”!!」



 強大な雷を纏わせながら、ジャンプと同時に右腕で投げ放ち――二頭タイプの犬を消失させるエルザ。


 しかも、三頭の方も余波でダメージを受けたらしい。


「“空遊滑脱”、“空衝”!」


 三つの口からエルザに火を吐こうとした巨犬へ、空から距離を詰める!



「――“業王脚”!!」



 急落下からの一撃で背中を鯖折りにし、仕留めきった!!


「“吹雪魔法”――ブリザードダウンバースト!!」


 その後、サカナ達の後ろから迫っていた雑魚モンスター共を凍気の圧力により圧砕! 無事に四人で遺跡へと逃げ込める!


「ハアハア。ここまで、安全エリア無しか」


 遺跡内部は暗く、取り敢えずは敵が居る気配は無い。


 遺跡の外の奴等は読み通り追ってこず、姿を消していった。


「エルザ、少し休みましょう。二人の体力が、そろそろ限界ですの」

「……チ、仕方ないな」


 サカナの言葉に、渋々従ってくれる。


 父親を殺すのを目的としているという設定のせいか、いつものような冷静さが欠けているエルザ……暴走気味だし、どうなる事やら。


「悪いな、エルザ」


 TPもMPもそれなりに消耗したが、それ以上に体力と集中力が削られている。


 三十三ステージを超えたあと、ろくに休めなかったのが響いているらしい。


「現在、21:13。時間はまだまだあるけれど、後どれくらい続くのか」


 タフなチトセも、結構参っているようだ。


「だな」


 制限時間十時間という設定を考えると、まだ半分も辿り着けていない可能性すらあるからな。



○“怪物の牛の番犬の指輪”を手に入れました。

○”地獄の番犬の指輪”を手に入れました。




●●●



「……長い」


 一時間以上かけて下水道を抜けた先に広がっていたのは、広大な迷路。


 その迷路を進むこと既に一時間以上……行き止まりに当たっては、何度も引き返していた。


 いつ終わるのかが分からないって言うのは、精神的に厄介だな。


 たまに普通の宝箱や鳥の死骸を見付けるも、大した物は手に入っていないし。


「こっちも行き止まり……なんだ?」


 角を曲がった直後に見えた行き止まりの壁の下に……剣が突き刺さった騎士風の骸骨が。


「スケルトンナイトです。近付けば襲ってきますが、動き出すまではダメージを与えられないので気を付けてください」


 ナターシャが教えてくれる。


「あの突き刺さっている剣は分かるか?」


「“ロイヤルロードキャリバー”、Sランク。大した効果はありませんが、“不壊”と聖剣系統であることが特徴でしょうか。ロイヤルロード系は、Sランクの中では使用しやすいですし」


「ナターシャの予備武器に、ちょうど良いかもな」


 聖剣なら、ルイーサに渡しても良い。


「“神代の光剣”」


 “偉大なる英雄の光剣”に三文字刻み、柄から青白い刀身を形成。


 通路は狭く、複数人で戦うのに向かないうえ、長物を振り回す余裕も無い。


 この狭さのお陰か、迷路でモンスターに遭遇することはここまでなかったけれど。


「とっとと仕留めてくる。突破された時は頼んだ」

「畏まりました」


 角の先に向かうと、カタカタカタという音を響かせ――骸骨騎士が立ち上がり、腹に刺さっていた白銀の剣を抜いた!


『グルワァァァ!!』

「そう来るか!」


 この場所じゃ大剣を振り回せないためか、突きを連続で放って来るスケルトンナイト!


 後退すれば、ナターシャ達を巻き込むことに!


 ――胸の中心への一番鋭い突きを、逆手にした光剣の腹を二の腕の盾パーツで支えた状態で当て――受け去なしながら距離を詰める!


「“剛力竜衝”!!」


 左手の平をスケルトンナイトの胸の前に翳し、強大な衝撃波を持って鎧ごと粉々に砕く!


「……フー」


 新しい鎧、やっぱり使いやすいな。


「この二の腕のパーツに、こんな使い方があったとは」


 ”神代の光剣”の腹に直接触れるのはまずいし、咄嗟だったとはいえ役に立ってくれた。


 ぶっちゃけ、ちょっとした攻撃くらいしか防げない、大して意味の無いパーツだと思ってた。


「ご無事ですか、ユウダイ様?」

「ああ、問題ない。それより」


 今手に入れたばかりの“ロイヤルロードキャリバー”を、ナターシャに送る。


「ユウダイ様がお使いにならないのですか?」

「俺には、充分すぎるほど剣があるからな」


 “シュバルツ・フェー”が使用不可状態とはいえ、“ヴェノムキャリバー”だってあるし。


「ご主人様のお恵みに感謝を」


 恭しく剣を受け取り、装備するナターシャ。


 俺に対して全肯定と言っても良い、従順な家臣……か。


 メイドが欲しいって感覚は前からあったけれど、なんか違うな。


 どこか、つまらないと感じている自分が居る。


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